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アメリカで金融不安再燃か?


First Republic Bankの決算発表はネガティブサプライズ

大規模な預金流出判明で株価暴落

 アメリカで中堅地銀First Republic Bankの決算発表があったが、預金残高の急減が判明し、市場心理を悪化させる結果となった。表のように、前四半期末比約720億ドルの減少となっているが、大手行からの支援預金を除くと実質的には1000億ドル程度の減少だったと見られる。結果的には預金残高化1,044憶ドルとなり、1000億ドルの大台は維持できたものの、先行き不安を生じさせることとなった。
 実際、元々の資産規模からすれば、正に急減と言って良い水準の預金減であり、同行に対する預金者の不安心理が反映された数値となっている。事前予想では、1350億ドル程度の残高を維持できるとの見方もあったため、市場の受け止め方は、深刻なものとなった。同行の株価は、50%近い下落となり、文字通り暴落している。
 預金急減に伴い、FRBなどからの借入金が急増している。短期借入金が803億ドル、長期借入金が263億ドルとなり、合計1,000億ドルを超える増加となった。一般預金者からの預金減とほぼ見合う金額となっている。預金減に伴う流動性補完と、利ザヤ確保のための低コスト資金を導入したためであろう。

 しかしながら、実際には、純金利マージンは、大幅に縮小している。前年同期には、2.68%を確保していたが、今回の決算では、1.77%まで縮小した。これは、本業における収益性に大きな影響をもたらすため、今後の利益についても、圧迫要因として意識されよう。やはり、低コストの預金が急減したことの影響は、損益面でも大きかった。
 なお、同行は、決算発表時に今後のリストラ見通しについても触れている。開示資料によれば、今四半期(4-6月期)中に、20%から30%の人員削減に踏み切る予定だとのことである。加えて、資本増強の必要性についてもコメントしている。それを受けて、大幅な希薄化を懸念する声が、市場では聞かれた模様である。

決算内容を受けた市場の反応

 First Republic Bankの決算内容が想定以上に悪化していたことを受けて、市場の反応は、厳しいものとなった。同行の株価は、ほぼ半値に近い水準まで急落した。しかも、その影響は同行のみならず、金融セクター全体に波及し、株価指数も押し下げている。
 First Republic Bankの問題は、同行だけの問題ではなく、金融システムに対する不安感を再び高めていると解釈される。同行が破綻処理を免れることができても、大規模なリストラの必要性はあると認識されている。その過程において、資本増強のための増資や、既存株主の利益を損なう形の減資の可能性も指摘されており、投資家の不安心理を高めている。

金融システム不安はしばらく続く

 First Republic Bankの決算を受けて、不安心理が市場で広がったのは、たまたまタイミングが悪かったという面もある。昨日発表されたカンファレンスボードの消費者信頼感指数は、事前予想を明確に下回り、ネガティブサプライズとなっていた。そのタイミングで、金融システムに不安感を募らせるような決算を発表することになったのが、やや不運であったとも言える。
 金融システム自体が大きく揺らぐような、金融危機に至る可能性は、依然として非常に限定的であり、全体としての状況に大きな変化はないと見られる。そうした意味では、昨日のアメリカ市場の反応は、やや過剰であったとも言えよう。
 しかしながら、次回のFOMCの結果が出る5月3日までは、不安定な相場環境が続くものと判断している。一つの経済指標や決算発表で、右往左往することになると懸念される。やはり、一旦広がった不安心理は、そう簡単に払拭されるものではない。
 ただ、株式投資家にとって、長期視点では、そういったショックが走った際の下落は、ある意味チャンスでもある。ハイテク中心に次の投資機会を狙っていくべきタイミングが近いとも考えられる。勝負は一回限りではなく、最低でも数回のチャンスを残すように、一回当たりの投資額を抑制することは、引き続き心がけたい。

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