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植田日銀新総裁初の政策決定会合

金融緩和策維持と多角的レビュー実施を決定

植田日銀新総裁にとって初めての政策決定会合

 本日、2023年4月28日、日銀政策決定会合の結果が明らかになった。発表時間がやや遅めだったことで、私も含めて市場関係者の間には緊張感が高まったが、結果的には、金融緩和策が現状維持となり、政策転換はなかった。
 その結果を受けて、市場では、株高、円安、債券高(金利低下)という反応が見られた。通常12時前後に発表されることが多いわけだが、今回は午後1時頃の発表となり、その間、市場では不安心理の高まりから、株価が抑制され、為替レートは乱高下していた。

多角的レビュー実施へ

 結果的には、現状維持となったことで、安心感が広がったが、今回、新たなトピックとして、金融政策の運営に関する多角的レビューを実施することが決まった。1年から1年半の期間をかけてレビューが実施されることになる。
 この多角的レビューだが、植田総裁の会見でも明言された通り、長期的な金融政策に資することを目指したものであり、短期的な政策変更等に影響をもたらす可能性は低い。だからこそ、1年から1年半という長期に渡るレビュー期間が設定されているわけである。その期間内に政策変更の必要性があれば、通常の政策決定会合の意思決定プロセスによって、実施されることになる。つまり、1年から1年半の期間、金融政策が変更できないわけではない。
当たり前だが、そんな縛りを付けたら、迅速な政策決定が不可能になってしまうし、本末転倒であろう。

「経済・物価情勢の展望」について

 日銀は、今回の政策決定会合において、「経済・物価情勢の展望」を改訂した。物価情勢については、コアCPI(生鮮食料品を除く消費者物価指数)の2022年実績が前年比3.0%上昇だったが、2023年は1.8%、2024年は2.0%とされており、前回1月時点の予想よりも、それぞれ0.2%上方修正された。なお、今回初めて示された2025年の上昇率については、1.6%となっている。
 植田総裁によれば、2023年は上振れの可能性があるものの、2025年については下振れリスクが大きいという。現時点の判断としては、数か月後にはCPIの上昇率が目に見えて鈍化していくものと見られるという。

債券市場の反応

 金融緩和維持を受けて、債券市場では、10年物国債を買い戻す動きが出たようだ。一部のヘッジファンドが繰り返し日本国債、とりわけ10年物国債を空売りしているようだが、今回も彼らの見通しは外れ、慌てて買い戻した模様である。10年物国債の利回りは、0.47%近い水準から0.41%台まで低下している。
 基本的には、日銀が金融政策を変更する状況には至っていないため、外れて当然であろう。投資は自己責任であり、どのようなポジションを取るのも自由だが、あまりにも見通しの甘い投機的ポジションだとの見方もある。私も基本的には、この状況下で、日本国債を大規模に空売りするのは、得策ではないと見ていたので、やはりそうなったかというのが正直な感想である。
 グラフのように、イールドカーブは、以前よりもきれいな順イールドを描いており、金利構造に歪みは生じていない。日銀のイールドカーブコントロールは、現時点で、機能していると評価される。

株式市場の反応

 株式市場では、政策決定会合の結果発表が1時間程度遅れたために、疑心暗鬼となる投資家が多かったようで、日経平均で見ると、一時、前場終値から100円近く下落した。
 しかしながら、金融緩和維持決定が伝わると、勢いよく上昇を始め、終値では、前日比400円近い上昇となり、前場終値から見ても200円程度の上昇となった。
 基本的には、金融緩和策の維持が好感されている。また、為替レートが、ドル円で135円台半ばまで、急速に円安方向に進んだことも、総じて企業業績にプラスとの見方から買い材料となった模様である。

市場の関心は5月3日のFOMCへ


 植田新総裁初の政策決定会合を無事に通過したことで、市場の関心は、アメリカのFOMCにおいて、コンセンサス通りに0.25%の利上げが実施されるのかという点にシフトした。現時点においては、0.25%の利上げが85%程度織り込まれているが、今後の状況如何によっては、据え置きの可能性も残されている。市場の不安心理が高まるようなニュースが出た場合は、価格変動率(ボラティリティ)が急上昇することもあり得るので、警戒は怠らないようにしたい。
 明日、4月29日から日本はゴールデンウィークだが、世界の政治経済は常に動いているので、目配りは続けていきたい。


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