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韓国経済:2022年GDP統計発表

国連は2023年2.0%、2024年2.5%成長と予想


韓国の2022年の実質GDP成長率は2.6%だった

 1月26日、韓国銀行が、2022年のGDP統計を発表した。2022年の韓国の実質GDP成長率は、2.6%となっている。前年2021年の成長率は4.1%であったので、減速感が目立っている。
 国際商品市況の上昇によって、輸入が増大したが、輸出が不振で伸び悩んだため、過去最大の貿易赤字となる472億ドルを記録している。韓国は、貿易依存度が68%(2021年)と高いため、影響度が大きくなりがちである。
 2022年の輸出は、前年比2.9%増にとどまり、前年の伸び率10.8%増から見ると、大幅に鈍化している。やはり、中国の「ゼロコロナ政策」の影響は大きく、化学や機械といった産業でダメージが生じたとされている。
 内需を見ると、個人消費は、前年比4.4%増と堅調に推移した。これは、コロナによる行動制限等がなくなった影響が大きいものと見られる。
 一方、設備投資や建設投資の不振が目立つ。巨額の設備投資をすることが多い半導体産業で、やや抑制的な動きがあったことと、不動産市況が低迷しているために建設投資が減退したことが原因と考えられる。

2023年の見通し

 以前のレポートにも掲載したが、2022年12月初旬に、韓国の2023年の成長率に関して、主要金融機関の予想値がまとめられたものがあったので、再度掲載する。
表の通り、主要金融機関による2023年韓国実質GDP成長率は、全般的に低い数値となっている。平均値で見ても、年率1.1%成長に減速するという見方になっている。
 世界経済の減速の影響が大きいと見られている模様である。とりわけ中国経済の不振が続くと予想されることが影響しているのであろう。中国は、ゼロコロナ政策を全面的に転換し、逆に野放し状態ともいえるような状況であるが、経済活動が元通りになるには、それなりに時間を要するものと考えられる。韓国と中国は、経済的に密接な関係性があり、中国経済の景気後退の影響は、非常に大きくなるものと予想される。
 2023年の世界経済見通し全般が良好とは言えない。中国だけでなく、ヨーロッパやアメリカも景気後退が予想されている。
 ヨーロッパでは、ウクライナ戦争の終わりが見えず、むしろ泥沼化しつつある。EU諸国による軍事支援も積極化されているが、ロシアはそう簡単に撤退しないものと見られる。むしろ、今後戦闘が激化し、さらに拡大していくようなリスクもないとは言えない。
 万一、他国にも戦争が広がってしまうと、最悪の場合、第三次世界大戦となりかねないという見方もある。現時点で、そのようなリスクは、小さいものと考えられるが、全くないわけではないので、しっかりと見極めておく必要はあろう。
 戦争が拡大しなくても、ロシアとの間に経済制裁の応酬があることは、ヨーロッパ経済にとっては重石となるのも間違いない。エネルギー資源等、ロシアからの輸入が制限されることは、世界全体のエネルギー資源の需給にも影響する。天然ガスが典型的だが、ロシア産から他の地域産に切り替えを進めるとしても、世界全体の需給に影響することは避けられない。たまたま、今冬については、ヨーロッパは全般的に暖冬であったため、深刻なエネルギー不足に陥ることはなかったが、今後の天候次第ではいつそうなってもおかしくはない。
 そうしたリスクを抱えることや、ウクライナへの支援等の負担もあって、ヨーロッパ経済の先行きには不透明感も存在している。
 アメリカについては、景気過熱を抑えるための金融引き締めが進んでおり、2023年中には、程度の差こそあれ、景気後退は避けられないものと考えられる。ソフトランディングできるのか、それともハードランディングになってしまうのかは、現時点では判然としない。ハードランディングしてしまうと、世界経済に対する影響は、かなり大きなものとなる可能性がある。アメリカ経済次第では、世界同時不況の可能性も否定できない。
 韓国経済を取り巻く外部環境は、総じて厳しいというのが、現時点の見方である。

国連の世界経済予想

 国連の経済社会局による世界経済予想が、発表されているが、比較的強気の見方といった印象である。2023年の世界経済の成長率を1.9%、2024年の成長率を2.7%としている。前回、2022年5月発表の予想値から見れば、それぞれ下方修正ではあるが、もう一段引き下げる方が現実的だと思った。
比較的強気だと感じた一つの理由は、中国経済に対する見方が、順調に回復するという数値になっている点である。中国の経済成長率については、2023年を4.8%、2024年を4.5%としている。コロナ前の水準に比べて、多少低くはなっているが、現在の中国経済の状況を考慮すれば、強気であると判断される。
現在は春節の期間であり、その影響はまだはっきりとはしていないが、医療面での混乱があってもおかしくはない。また、中国にサプライチェーンを依存することのリスクは、広く認識されており、今後、長期的な影響が広がるものと予想される。中国のかつての成長シナリオは、崩壊したと考えるべきであろう。
そうした点を考慮すれば、4%台後半の成長率を維持することは、現実的には困難だと考えられる。もっとも、中国の公式統計では、高い成長率を出してくるかもしれない。もともと、中国の統計データの信頼性は低いため、そうなったとしても驚きはないが、正確な状況を把握することは、困難だとも言える。

国連による韓国経済の成長率予想も強気

 韓国経済の成長率についても、国連は、2023年を2.0%、2024年を2.5%と予想している。中国の成長に伴う回復を見込んでいるため、比較的高い予想になっている。これは、現実的には達成困難な予想値かもしれない。2023年の成長率は、世界の主な金融機関の予想値の平均値が1.1%であることを考えると、1%台前半にとどまる可能性が指摘される。

韓国は経済的に破綻するような状況ではない

 韓国経済は、当面、力強く成長する状況には戻らないであろう。しかしながら、経済破綻に至るような状況でもないと見られる。1997年のIMF危機の再現を唱える向きも一部にはあるようだが、現実的には、そこまでの状況ではないと、私は判断している。
 冷静に数字を見れば、韓国経済は、好不況の波はあるにしても、破綻に至るような、恐慌状態では全くない。民間企業の状況を見ても、1997年当時からは、財務体質が大幅に改善されており、大手の財閥が危機的状況に陥るような可能性は、ほとんどないと見られる。
 韓国経済については、やや感情的な評価が目立つが、冷静に状況を見極めるべきであろう。


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