新年の抱負(eスポーツに関するこれまでの活動を振り返って

0 はじめに

 昨年は、本当にお世話になりました。

令和4年(2022年)は、大々的にSNS上で公表した案件も含め、いくつかの相談を受けました。

 チーム側からは疎まれるような存在だったと思いますが、それでも、自分なりに、業界に関わることができたかなと思います。

 さて、本投稿では、これまでの経緯を振り返り、活動に一つの節目をつけるとともに、新たな目標を掲げて進めていけたらと思います。

1 eスポーツに興味を持つようになった経緯

 学生時代からゲームや漫画は好きでしたが、今の「eスポーツ」ブームを知るようになったのは数年前くらいだと思います。当時は、仕事や諸々のことが嫌になり、家で引きこもっていることが多かったです。そんな時に励みになったのが、実況者さんやプロゲーマーさんたちのゲームの配信・動画でした。

 特に、フォートナイトはワールドカップも開催され、高校生くらいの子たちが、世界を相手に奮闘している姿をリアルタイムで見ていました。賞金もかなり高額で、海外ではチームと選手間で契約トラブルに発展しているようなニュースもありましたので(※日本でも某シージチームで大きな契約トラブルがあったことは記憶に新しいです)、これはもう、子どもたちの遊びの範疇を超えた大きなビジネスになりつつあるな、と感じました。

自分は、これまで勉強ばかりしていたようなタイプなので、「こういう生き方もあるんだな」と感心しましたが、同時に、「しっかりと選手たちの待遇を守れるようにしよう」、「こうしてゲームだけで生活できるようになれる子はごくわずかだから、そこまで至らなかった子たちもしっかり助けられるような環境も整備していこう」と思うようになり、徐々に弁護士の仕事としてもeスポーツに関わろうと思うようになりました。

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2 活動の始まり

 ただのファンからのスタートでしたので、特にコネや人脈はありませんでした。それでも、私の考えや活動に興味を示してくれた名古屋市内のいくつかのeスポーツ関係者さんと仲良くさせて頂きました。イベントのスポンサーから始まり、時には法律に関する相談を受けるなどして、地道に活動の場を広げるようになりました。

 特に、名古屋eスポーツさんには、法律相談の問い合わせフォームを用意してもらいましたが、ここからの問合せは今も多いなと思います。

 私を含め、多くの弁護士は、営業活動に苦手な人が多いのですが、ネットのおかげで、皆さんに少しずつ認知されるようになったと思います。

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3 活動の実態と転機

 しばらくは、地道に、小さなクラン内やクラン間の揉め事(誹謗中傷などを含む)、配信や大会運営にあたっての悩みごと等の相談に答えていました。お金にもならない相談ばかり対応をしていましたが、みなさんの生の声を聞くことができる、貴重で大切な機会でした。

 私の知る限り、選手やクリエイターさんたちが実際に直面するような、小さい紛争を扱っている選手側寄りの弁護士さんは、私以外にはいないのではないかなと思っています。

 eスポーツに携わる多くの弁護士は、特定のチーム側であったり、あるいは、何らかのeスポーツ事業団体の側に就いていたりする先生が多いです。また、eスポーツと法律を題材に扱う書籍は当時からいくつか出版されていましたが、主に、参加費徴収型の賞金付大会の実施が賭博罪や景品表示法、風営法との関係で問題になるかという文脈で議論されることが多かったと思います。
 実際にeスポーツで活躍する子たちが求める需要に対して、供給されている法的サービスが一致・均衡していないように思われ、そこに自分の存在意義があると思っていました。先行投資のつもりで、活動を続けていました。

 そんな中、私の記憶に大きく残っている案件の一つである、レインボーシックスシージで活躍するNorioさん(のりおさん)のトラブルに接しました。相談を受ける前から名前は知っている方でしたし、所属するチームさんも、当然に知っている有名なところでした。

 解決の経緯は省きますが、この方は本当に丁寧で、人柄も良かったです。詳細は、SNS上で、かなり大々的に公表し、ファンや関係者の方々を大きく巻き込み、お力添えを頂きましたが、のりおさんに対する否定的な意見は、ほとんどありませんでした。

一般論として、公表文の表現や内容は、本当に気をつけなければなりません。これを出せば、読み手の人はどう思われるか、誤解を生んでしまわないか、そして何より、名誉毀損として逆に訴えられるリスクはないか(リスクはどの程度か、そのリスクを負ってでも公表すべき状況といえるか)など、様々なことを考えていく必要がありますし、そこにこそ、弁護士に相談する意義があると思います。

のりおさんの件も同様に、綿密な打ち合わせをした上で公表をしましたが、概ね、みなさんから好意的に受け止めてもらうことができたのは、ひとえに、彼の人柄や人格によるものだと思います。本当に、受けて良かったなと思える案件の一つでした。この件をきっかけにたくさんの方々(特にシージコミュニティーの方々)に知ってもらうことが出来ましたし、相談も増えるようなりました。間違いなく私の活動にとって転機の一つです。

※なお、私の弁護方針のスタンスとして、依頼を受けた案件を、例外なく大々的に公表することを前提に依頼を受けているわけではないことは、ここでお伝えさせて下さい。
のりおさんの件は、ご本人の意向があったのがまず大前提ですが、それに加え、本人が引退する覚悟で、このトラブルを解決したかったこと、他のプレイヤーが同じようなトラブルに遭わないよう注意喚起をしたかったこと、そして何より、私の目線から本人の日頃の言動やツイートを精査しても炎上のリスクは見られなかったこと(いわゆる告発をした側の過去の言動が掘られて炎上して返り討ちに遭うようなリスクがなかったこと)、その他、諸般の事情を考慮して、これは例外的な事案だということで、公表に至った案件です。

(裏を返せば、eスポーツに関わるみなさんは、普段から、暴言や利用規約違反、その他品位を欠くような行動はされないようご注意頂きたいと思っています。「助けたい」と思っても「助けられない」と思い、お断りをした事案は、過去に存在します)

4 この業界に対して感じたこと

 さて、新年からも引き続き活動を続けていきたいところではありますが、これまでの活動を通して、感じたことがいくつかあります。(※私の主観的な意見を大いに含むところであり、特定のチームを想定しているわけでは決してありません)

 一つ目は、(この業界がまだまだ未熟なことに起因するでしょうが、)選手たちの地位が、あまりにも低いことです。野球やサッカーのように代理人がチームと契約をする制度や慣習はeスポーツにはありません。本人が自分の意思でチームと契約せざるを得ませんが、多くの選手は、チームから提供された不利な契約書に言われるとおりにサインをしているのが実態です。この不利な内容で契約をするか、嫌なら契約をしないか、という二択になっているように思います。

 もちろん、契約をするか、しないかは、本人の自由です。修正を求めなかったのは本人の責任というのは当然なところはありますが、それでも、まだまだ10代、20代の若い子達に対して、不当な契約を交わさせて、契約後も、何か炎上をしたら、トカゲの尻尾切りのように、契約解除(給料の大幅カット)、後は知りません、というような対応が未だにチラホラ見られます。

 まだまだ、選手寄りの、パターナリスティック(後見的)なサポートは必要だと思います。余計なお世話と思われるかも知れませんが、私としては、若い子たちが後から困ることがないよう活動をしたいと思っています。


 二つ目は、eスポーツのトラブルは、現状、司法解決に必ずしもなじむとは言いがたい点です。それは、専門的にはいわゆる部分社会の法理(「法律上の争訟」)などにより、チーム内、業界・大会内のトラブルは裁判所が判断しないという制約もあるでしょうが、そのような制約がなかったとしても、業界の横の繋がりを踏まえて訴訟トラブルにはしづらい点を意味しています。

 私に相談する子たちの中にも、「裁判はやめてほしい」、「弁護士の名前を出すことはやめてほしいから、その都度、連絡のやりとりの際に相談したい」、という要望を受けることがよくあります。それは、下手にトラブルを大事にしてしまうと、別のチームに移籍する際に、支障が生じてしまう恐れからくるものです。業界全体がまだ小規模だからこそでしょうが、各チームの上層部は、どこも(良くも悪くも)つながっていることが多いからだろうな、と思います。

 チームは、選手たちに秘密保持を課しておきながら、自分たちはわりと緩やかに情報共有をしているのが真実だとしたら、それはあまりにも不公平と言わざるを得ません。(※現に、秘密保持の条項を懸念して、弁護士にさえも相談していいかどうかをためらっていた子が、過去にはいました。そういう子は、チームから「誰にも言わないように。言ったら契約違反だから」と、それがあたかも何の例外もないかのように強く言われていたようで、一人で何日も悩まれていました。弁護士は当然ながら守秘義務を負っています。相談したからといって契約違反になることはありませんので、そこで悩む必要は決してありません)。

 別の視点から言えば、他の人にも相談させず、かといってしっかりとした紛争解決の話し合いの機会を設けないなどの、必要以上の縛りを設けてしまったことにより、選手達が、なかば自暴自棄のように、いわゆる晒し・告発のツイートをしてしまうことがあるのではないかと危惧しているところです。


 もっとも、これは現実論ですが、今、直面している選手たちのトラブルを解決していかなければならないところがあります。そして、業界関係者と円満に話し合いができるような解決手段を設けることが、「現状の」最善策ではないかなと思います。

 通常のスポーツにもスポーツ仲裁という手続きはありますが、eスポーツにも、非公開の手続で、業界関係者や選手代表から選出された中立公平な機関をを設けた上で、その主導の下、トラブルを話し合うことができるような制度を作ることはできないかな、と最近は思っているところです。これには、選手達はもちろん、各チームの協力、同意を求めなければならないところで、すぐに作ることはできませんが。


三つ目は、これは私個人の話でもありますが、選手側の弁護活動は、はっきり言って、全く利益になりません。

10代、20代の若い子達から高額の弁護報酬を頂くことは、現実的にも、また気持ち的にもできません。だからこそ、他の弁護士はこういう活動をしていないという結論に落ち着きますが、それで私が活動を止めれば、前述の各問題点は、一向に解決することはないだろうと思います。
eスポーツは、芸能界に似たところがあって、かっこ良く、キラキラした、明るい部分ばかりが取り上げられますが(そうしたプロモーション的な意味合いの記事ばかりがネットには溢れています)、その裏にあるトラブルにしっかり向き合わなければ、「健全な」発展にはつながらないと思います。

私としては、自分の生活を維持しながら、活動を維持できるようなスキーム作りが出来ないかな、と模索しているところです。

5 今後の抱負

 以上を踏まえ、やりたいことを箇条書きにしています。もし、共感して頂ける方がいらっしゃいましたら、是非ともお声かけ、お力添えのほど、何卒よろしくお願い致します。

1 業界内で選手の地位を上げるための活動の一貫として、選手(労働)組合や何らかの選手の意見表明団体を作りたい(関与したい)
 もう少し自分が有名になって、元選手や現役選手で業界に強い影響力がある方のお力添えがあれば、そういった動きも出来るかなと思います。

2 司法手続とは別の、紛争解決の話し合いの場を設けたい
 前述の、スポーツ仲裁のような仕組み作りです。

3 チーム側の活動にも関与したい(その分利益相反も当然に出てくるため、自分のような活動をしてくれる弁護士を増やしたい)
 宣伝を兼ねてお知らせしますが、大変ありがたいことに、私の活動に共感頂けるチームも中にはいらっしゃり、そのうち、アマチュアチームながらも、顧問として活動させて頂くことになりました。業界の「健全」な発展を求める上では、チーム側の内部事情も知ってこそだと思うので、そうした活動も今後は広げて行けたらと思います。他方、利益相反が生じやすくなる可能性は出てきますので、私以外の弁護士も選手側で積極的に動いてもらえたら嬉しいな、と願っています。

4 eスポーツ以外の通常の法律相談、依頼を受けていきたい
 これは本業に立ち戻るところですが、前述の通り、私が今後の活動を維持していくためにも、しっかりと自分自身の収入を上げていかなければなりません。現に、eスポーツがきっかけで全く別のトラブルの相談・受任に至った案件もあります。eスポーツ以外のところで、しっかりとした弁護士業務を進められたらと思いますので、よろしければ、ご相談、ご依頼下さいませ。※ある意味、これが一番お伝えしたいメッセージになります…!

 5 その他
 後は軽いものとして、、
気になるクリエイターさんにお声かけなどしてアイコンを有償依頼したい
スポンサーなどの協賛活動、宣伝広告活動をしばらくやっていなかったですがまた協賛したい(特にシージコミュニティーには恩返しの意味でやりたい)
などなど。。


以上、新年に向けて、年末から考えていたことを綴ってみました。
今後とも、何卒よろしくお願い致します。


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