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成長するスタートアップの広報に必要な「世の中ゴト化」

 nks start-up tableでは、スタートアップがメディアやその先の社会と、またはスタートアップ同士との、良い関係づくりを創っていく対話の場となるように、イベントを不定期で開催しています。今回は、その中でお伝えしている、成長するスタートアップの広報にとって大事な「世の中ゴト化」について、簡単にご紹介します。

成長するスタートアップの広報

 スタートアップにとって、広報は重要です。知名度やリソースが少ないスタートアップでも、大きな効果が得られる可能性がありますし、何よりまずは存在を知ってもらうこと、さまざまな相手と関係を紡いでいくことが必要ですから。

 スタートアップの広報の特徴的なところは、成長ステージによって広報の目的や内容が異なることです。それも、成長著しいスタートアップにおいては特に、短期間の内にどんどんと変容していきます。そのため、次のフェーズが訪れる前から、先々のことを念頭に置いた戦略を練って準備していくことが大事です。

(図1)図1

 その変化の度合いが特に大きいのは、PMF後の成長期のタイミングです。それは、関係を築いていくべき相手が変化することも、大きく影響しています。

 初期ユーザー層は、サービスやビジネス自体の新規性に魅力を感じ、新しいものの受容にも寛容な人々ですが、ボリュームゾーンであるマジョリティ層は、自らの関心事や社会性に即しているか、明確なベネフィットや安心を感じられるかを重視します。

(図2)図2

 ビジネスを大きく成長させ、市場を拡張させていく中で、このキャズム(溝)は必ず越える必要があります。成長するスタートアップに必要なことは、キャズムを越えるために視座を上げること。そのためには「世の中ゴト化」が必要です。

世の中ゴト化とは

 広く”世の中”に向けて情報を発信していくタイミングでは、自らが伝えたいコトやモノだけを、スタートアップ自身の都合で発信していても届きません。響きません。自社のビジネスやミッションを世の中の関心事とすり合わせ、「世の中に与える影響、世の中を変えるきっかけとなりそうな新たな価値」を以て伝えることが大事です。

(図3)
図3

 これから何かを広く伝える時には、この視点が抜けていないかどうかを、いま一度見直してみてはいかがでしょうか。もし自分たちだけでは難しいのなら、第三者の意見を伺うことも良いことです。

 nks start-up tableのイベントでは、この「世の中ゴト化」に至るステップを体験してもらうための簡単なワークショップを行っています。グループで相談し合って「伝わるポイント」を導き出し、実際に記者の方にも評価してもらいながら、その理解を深めてもらうものです。(※ワークショップの内容については、今後の記事で改めてご紹介する予定です。)

 特に、メディアに向けたパブリシティ活動では「世の中ゴト化」の考え方は不可欠です。皆さんの中にも、プレスリリースを書いてメディアプロモートしても、なかなか記事にならない。なかなか響かない、と感じている方は少なくないでしょう。

 私たちも、日経新聞で記事を取り上げてもらいたいのだという相談をよく受けます。しかし、新聞記事で採り上げる情報とは、「世の中にとって有益な情報」です。特に日経新聞では、企業の動きがどこまで今日のマクロ事象や社会的なテーマと結びついているか、といった今日性や社会性を重視します。結局、新聞の読者(=世の中)が関心を持つものは、特定のプロダクトのスペックや機能ではなく、それによって世の中にどのような変化をもたらすものか、どのような価値が提供されるものか、ですから。この場合は、新聞(とその先の読者)が知りたいことと、企業が伝えたいこととがマッチするポイントを見出すことが大事ですね。

 そのため、「世の中ゴト化」には、それぞれの「メディア」「記者」「社会トレンド」を、まずは知る必要があります。nks start-up tableでは、さまざまなメディアや記者を知るためのイベントも準備中です。もしよければ、一度遊びに来ていただけると幸いです。

「世の中ゴト化」を起点に、拡がるさまざまなコミュニケーション

 もちろん、スタートアップが行うべきことは、パブリシティ活動だけではありませんし、「世の中ゴト化」も、社会との関係を構築していくための必要条件であって十分条件ではありません。 いま、誰に何を伝えたいのか、を見極めながら、さまざまな手法や伝え方を組み合わせて進めていくことが大事です。

(図4)図4

 イベントや営業支援などを通して、さまざまな関係者とのリレーションを築くことも大事ですし、SNSやオウンドメディアへの投稿も、継続的な関係構築には有効です。また、既存顧客とのつながり強化も、広告を用いた新規顧客へのアピールも、同様に必要な活動の一つです。

 スタートアップは、事業も組織もさまざまです。コミュニケーションの手法も、どの企業にも当てはまるような共通の正解などありません。広報・マーケターの方は、こうした正解の無い課題に取り組み、時には孤独な立場と感じることもあるかもしれません。多彩な選択肢の中で、何から始めるべきなのか、何ができるのか、悩み考えることも少なくないでしょう。そうした広報・マーケターの方々と一緒に、伴走しながらサポートしていける存在でありたい。私たちは、そう思うのです。

 この記事から、広報・マーケティングについて考えるヒントが得られ、皆さんの中で会話が生まれるきっかけになれば幸いです。


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