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アラサー婚活コラム:CAになりたがる商社ウーマン

20代半ばのとある深夜、大手商社に勤める友人に白金高輪駅前にあるファミリーレストランに呼び出された。

開口一番、深刻な表情で彼女は言う。

「あのね、私会社を退職してCAになろうと思っているの。」



今となっては笑い話だが、当時お付き合いしていた同僚男性に、キャビンアテンダントの女性と二股され、周りを見渡せば社内の素敵な男性も結婚相手はほとんどがCAだ、と言うことらしい。

「結婚したい。子どもも欲しい。でも数少ない出会いの場である合コンだって大手商社勤務、というと引かれるの。誤魔化して事務職、と名乗ったりしてる。これからキャリアを積んでいく意味ってあるのかな。なんか、つらいよね。」

わたしは、今でもこのシーンが忘れられない。外資畑で純粋培養されていた自分は感じることがなかった「日本社会におけるガラスの天井」の存在を、突如目の前に叩きつけられた気がした。

もちろん、キャビンアテンダントだってやりがいのある仕事あるだろう。その職を夢見て活躍されている方もいるし、そもそも軽々しくなれるものでもない。

大体、それは彼女の本心だろうか?歪な社会構造がそうさせようとしてしまっているだけではなかろうか?

その夜は悶々とした気持ちを抱えたまま、友人としてただ聞き役に徹した。

顔立ちの整った彼女が、仕事ができて聡明であることが理由で自己肯定感を保てない社会への失望を覚えながら。


それから10年、時代は変わり始めた。

その後、彼女は駐在先でフランス人の旦那さんと出会い、欧州トップクラスのMBAを卒業。ヨーロッパで起業している。素敵なペントハウスで暮らす、画に描いたようなパワーカップルだ。

先日、久しぶりに帰国すると言うのでお茶に誘った。しばらくぶりに会う彼女はあの日とは違う晴々とした顔付きでこう言った。

「本当は、ずっと社会に出て活躍したかったんだと思う。」

フランスで旦那さんやお義母さんから言われた「キャリアを諦めないで」という言葉に、とても救われたそうだ。

これまで仕事では度々昇進の打診があったものの、私生活で、例えばお付き合いしている男性に、そんなことを言ってもらったことはなかった。

むしろそれをひた隠すように生きてきた彼女は、社会に適応するため、もっと言うと結婚するために、内なる情熱にいつしか蓋をしてしまっていたことに気付かされたと言う。

よきパートナーやそのご家族と出会うことによって、奥底に眠る無意識の願望がやっと肯定されたように思えた。

今や日本でも周囲のグローバルマインドを持っている男性たちは、パートナーにも自立を求める人がほとんど。

少しづつ変わり始めたこの風潮に、わたしは心から安堵している。社会で活躍したい女性たちの機会が、真の意味で平等になってきていると思えるから。

以前、とあるカンファレンスで日本は相対的に理系研究職の女性が少ないというお話を伺った。

これは決して女性が男性と比べて遺伝的な理系能力が劣っているということではない。むしろ小学生女子の理系科目の平均点は、同年代の男子より高いのだと言う。

女性が研究職になる、という選択肢を選べない、選ばない、選んでも続ける人が少ないのは、やはり構造的な問題があるのだろう。

ときに個人の意思は、社会的な同調圧力によって形作られてしまっていることがある。「みんな」や「誰か」が言っていることではなくて、自分の心の声に耳を傾けたい。

いまの20代女性たちは胸を張って、自らの所属組織を言えるようになっているだろうか?

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