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気功生活 Vol.135

2023.3.11 発行

慈しむ
大切な誰か、
掛け替えのない私。

自立と平和 天野泰司
気功暦できました!
3.11から12年 〜「身体」レポート
講座ノート 慈悲は自立から
春の養生
The Book of Life 2/233/1
つれづれ湯遊記 最終回 あや
如月弥生 吉田純子
「からだの春」第1回より
講座案内


自立と平和


                          天野泰司

 梅が香り、春の気配が立ち込めてきました。生まれ変わるかのような心身の変化を期待できる、気功のベストシーズンに入りました。教室へ足を運ぶのも、ご自宅で配信講座「からだの春」を受講されるのもおすすめです。

祝15刷
 この春、『からだの自然が目を覚ます 気功入門』(春秋社)が増刷になりました。2004年の初版から15刷、通算16000部を越えました。本当にありがとうございます。
 初めて出版したこの一冊には、私たちが広く伝え育てたい、その核心が平易な文章でまとめられています。特徴的なのは「自立」というテーマが本全体に流れていることです。第二章に、「社会全体の自然の回復は、ひとりひとりの自立によって実現していきます。自主性や思いやりの心は本来誰にでもあり、自立が進むにつれ自然に開花していくものなのです。」と書きましたが、執筆から約20年の活動を経て、その自然な世界の広がりを身近に感じられるようになりました。
 「気功の学校」「禅密の学校」などの教室で、休憩時間や放課後の様子を見ていると、それぞれが自分を大切にして、自分のリズムやペースで過ごしていることがはっきり見てとれます。無理に人に合わせることも、過剰な自己主張をすることもなく、打ち解けて楽しく語らったり、ゆっくり休んだり、思い思いに好きなことをしている姿が、なんだか自然の森のように見えてくるのです。
 有料無料の配信講座も、自他共に大切にする自立した人を育てているでしょうし、「心がおちつく やさしい気功」の動画を見て実践している方々もまた同様です。

自立と通信教育
 京都芸術大学の通信教育過程で「身体」という科目を10年間担当してきました。『気功入門』を読み、最低14日「心がおちつく やさしい気功」を実習し、自分の言葉で「身体感覚の変化と深まりについて」「からだの自然とは何か」の二点を、体験に基づいてまとめる、レポート式の授業です。
 学生は10代から80代まで、住んでいる所や職業も様々です。テキストを読み、動画を視聴し、誰かの助けも借りず、自分の力だけで、様々な心身の変化を体験していきます。私はただレポートが届くのを待つだけです。
 おそらく2000人以上のレポートを読んできましたが、変化を感じないのは稀で、ほとんどの方が眠りやすくなり、笑顔が増えたり、落ち着きが出てきたりと、心身の変化を感じていて、ずっと悩んできた症状が改善したり、人生が変わるような体験をされる方も度々見てきました。教室で実際にお会する方が変わっていくのはずっと見てきましたが、一度もお会いしていない方が次々と自分で変わっていく様子を目の当たりにして、私自身も驚き、気功の原点を見直すよい学びになりました。

 気功の特徴はそのやさしさにある。自分で簡単にできるからこそ一歩一歩自立が進み、どこまでも深まりがあるから、変化成長が尽きることがありません。

平和への道のり
 ここで言う「自立」は、単に自分で生活の維持ができるというレベルの話ではありません。「べしべからずの観念を全て手放し、外側の価値基準によらず、また自らの中の偏見にも偏らず」、「感覚を繊細に働かせ、今ここで起こっているリアルな状況に応じて、自由自在に、自身の持っている全ての力を発揮できること」です。
 この自立の方向へ進んでいけば、争いや対立は減り、自他を深く思いやり、お互いを適切に支えあって、笑顔が増え、本当の意味の平和が実現していくでしょう。
 これは難しくて長い年月が必要なことでしょうか。私はそうは思いません。大部分の方が1日15分、わずか2週間の実習を行うことで、自立へと進んでいくのですから、1ヶ月後には世界が変わっている可能性は十分にあると確信できます。感染症への恐怖で、世界中の人々の生活が一変しましたが、こうした負の変化もあれば、対照的に、自立へと向かう心地よい流れが瞬時に拡散することもあると思うのです。
 
震災から12年
 東日本大震災と福島の原発事故から12年、干支がちょうど一回りして卯年になりました。「心がおちつく やさしい気功」は、その震災直後に編集した気功協会オリジナルの気功です。
 原発事故と感染症は、類似点と相違点があります。似ているのは、目に見えないものへの恐怖と不安です。見えないからこそ対策が難しく、必要以上に不安も煽られ、そのために心身を害したり、生活に不自由を強いられることが多くなります。そうした不安を手放して自由な心身を取り戻す処方箋として設計したのが「心がおちつく やさしい気功」です。
 そして最大の相違点は、原発や核兵器は人間が意図的に作り出し、もてあましているのに対して、感染症は、ずっと暮らしと共にあった自然なものだということです。だから、原発や核兵器をなくすのは可能だけれども、感染症をなくすのは不可能です。その不可能に無理に立ち向かい、可能なことを実行しないのは、どう考えても不自然です。
 専門的なことはその道の研究者に尋ねる必要があります。けれども、根本的なことは、冷静な目で自分で確かめ、自ら考え、行動する必要があります。ところが、その自分で感じて判断していく土台がない。どこかに正解があって、誰かがそれを教えて導いてくれるに違いないと信じ、他に頼っている。常に依存しているのに、その依存に気づかない。だからこそ、自立のプロセスとしての「やさしい気功」が大変重要な意味を持って、この時代に生まれてきたのでしょう。
 心を澄ませて、手と手が触れ合えば、そこから自分との対話がすぐに始まります。やわらかに顔をなでていくと、心の緊張がほどけてやさしい心持ちになり、感情の波が静まっていきます。ゆっくりよしよしと頭をなでていると、観念や思考をいつのまにか手放し、ポカンとした子どものような心へ還っていきます。
 こうしてひとつずつ、やさしくて心地よい動作を繰り返しては、自由で自在な心身へと簡単に至ってしまいます。意識的な努力ではとうていたどり着くことができない、けれども、努力とは違う心地よさの流れの中に入っていくと、生命の火がぱっと灯って、すらすらと変わっていきます。

新しい試み
 大学での「身体」の授業は今年度で一旦終了になりました。来年度は、気功協会オリジナルの「やさしくできて自立へと進んでいく通信制のプログラム」が誕生します。どうぞご期待ください。


https://npo-kikou.com


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