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Vol.10③ 法学徒の手探り 〜2016年初頭、本郷〜

Vol.10② 法学徒の手探り 〜2016年初頭、本郷〜

「7種読み」、そしてつま先でジグザグに歩く試験期間

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▲ 学期末試験で全力を出した後すぐにレコーディングスタジオに直行してアニメ「蒼穹のファフナー」のキャラソン「全力LOVE」を熱唱
蒼穹のファフナー EXODUS 8巻」特典CDに収録)

おかしいな、また話がそれてる気がします(笑)。

3年冬学期の試験のことでしたよね?(笑)
どんなお話でも大丈夫ですよ!(笑)


演習科目は試験がないので、この学期に受けた試験は、高齢者法、ロシア・旧ソ連法、それと2年生配当科目だった憲法第1部と政治学でした。

試験4科目なんて大変じゃないですか!

そうなんですよね。
計画的に科目を絞ったといっても、4科目は自分にとっては少なくないので。
でも、もうこれまでの学期みたいに試験から撤退はできないぞと覚悟しました。

どんな試験勉強をされました?

高齢者法は、レポートも出していたので、そのときに調べて頭に入ってたことも多くて、少し気楽に試験勉強ができました。

法学部の科目は、直近10年とか20年とか分の過去問が入手できるものがあるんですけど、高齢者法は近年開講されたものらしくて過去問がなかったんです。

現代ならではの科目、という感じですよね。

まさにそうですよね。

なので、どんな問題が出るかは想定しきれなかったんですけど、扱った範囲の中で何個かトピックを抽出して、それに対して説明なり見解なり、一定の分量を書けるようにしました。

トピックというのは、決まった論点みたいなものがあるということですか?

いえ、そういうわけじゃなくて、自分でなんとなく、このあたりに問題がありそうだとか、このあたりは人によって考えが分かれそうだとか、そう思う点をトピックだと思うことにしたんです。

なるほど。
それをまとめて書けるようにと?


それも、実際に書いてたわけじゃないんです。
その時間もなかったので。
頭の中で何を書くか大体決めて、本当にそれが文章として書けるかは、口で言ってみて確認しました。

書かれた原稿があれば、その意味をまったく理解してない文章でも読み上げることはできるんですよね。
読めない外国語とかでなければ。
別に声優とかでなくても、文字を読める人なら、意味を理解せずにただ声に出して読むことはできるんです。

でも、書かれたものがない場合、つまり、何かを見ながらしゃべるのではない場合は、自分で意味をわかってないことはしゃべれないんです。
少なくとも秩序立てては。

なので、あることについて何も見ずにイチから自分でしゃべれるということは、まあ理解してるとしていいのかなと思うんですよね。

ああ!
たしかにそうですね!


もちろん、丸暗記すれば理解してなくてもしゃべれたりしますけど、でも丸暗記はできる量に限りがありますからね。

意味を理解できていないとしゃべれない、というのは、言われてみて本当に納得します。
すごく役者さんならではの視点のような気がします!


他の科目もこういうやり方をされたのですか?

ロシア・旧ソ連法は、ご担当の先生の本を熟読しました。
※渋谷謙次郎著『法を通してみたロシア国家』ウエッジ、2015年

教科書ということですか?

いえ、教科書としての指定ではなかったんですけど、先生ご自身が書かれた本なので読まないわけにはいかないなと思って入手してました。
教科書指定でない以上、学生がその本を読んでいる前提にはされてないので、試験でそこから出題されるというわけでもないんですけどね。

先生のその本と、他にも、ロシアとソ連の法に関連する文献を集めて、読めるだけ読みました。

ロシア史とか大きな範囲になると、本を集めるといっても膨大になってしまいますけど、さしあたりは「法」という括りがあるので、講義で取り上げられた事象なり論点なりに関係すると思われるものを選んで集めました。

それだけでも分量が相当あるのでは?

そうですね。
そして、関連文献を全部チェックしようとすると、当たり前ですけどきりがないんですよね。
でも、用意できるものは用意しようとするタイプなので、本も雑誌も論文もできるだけ集めてました。

集めついでに、旧ソ連の裁判傍聴の本みたいな、試験と直接はあまり関係なさそうだけど興味をひかれた本も読みました。
※小森田秋夫著『ソビエト裁判紀行』ナウカ、1992年


集めた文献は全部読まれたんですか?
1科目だけでもものすごく時間がかかりそうです。


たいてい全部は読めなかったです。
単純に集めすぎなんです(笑)。
でも、時間が許す限りは読めるだけ読もうとはしてました。

量が多いので、結局「目が滑る」事態がよく起こって、頭に残らないことが多かったと思うんですけど、同じトピックを扱った別の文献をたくさん読むと、同じ範囲でわりと似たようなことが書かれてるので、似たようなことを繰り返し読むことになりますよね?

そうすると、ひとつ目を読んでほとんど頭に残らなかったとしても、同じ範囲の文献を次、次、って読んでいくと、実質同じことを繰り返し読むことになるので、いちおうある程度は頭に定着するんです。

「7回読み」を違う本でやるということですね?

ああ、そういうことですよね。
「7回読み」は自分にはあまり合わなかったみたいですけど、範囲を絞って別の文献を複数読むのは合ってたと思います。

「7種読み」ですね(笑)。
インタビューVol.6④ 参照

ひとつの教材に絞ってそれを完璧にやるっていうのが勉強法の王道だといろいろなところで言われていて、実際それができる人は強いなと思うんですけど、私はたぶん、性分的に落ち着きがないというか、キョロキョロわき見をするタイプなんでしょうね。

受験勉強とかであるあるの、参考書を買いまくって結局どれもまともにやらないで失敗するタイプに、自分は限りなく近いように思います(笑)。

いえいえ、それで実際に勉強されて成果もあげられているわけですから、佐々木さんにはそのやり方が合っていらっしゃるということなんですよ。

たしかに、今のところはそうですね。
他の科目でも基本的にそうしてました。
教科書も参考書も参考文献も、ひととおり集められるだけ集めて、それを部屋に広げて片っ端から読んでいく、みたいな。

「机の上に広げて」でなくて「部屋に広げて」とおっしゃるあたり、相当な量だと思われます(笑)。

ですね(笑)。

この方法のいいところは、ひとつの文献に歯が立たなくても、いろんな文献を読んでいくと、どれか比較的読みやすかったりわかりやすかったりするものに当たる可能性があることなんです。
まあ、可能性、ですけどね。

ひとつしか読まないと、それが自分の今の能力値とか言語感覚に合わなかったりすると、なす術がないというか。
そこでモチベとか実際の進捗が停滞してしまうと思うんですよね。

だから、わからなければ別の、また別の、みたいに、とにかくいろいろ読もうとしてました。

なんか尻軽な感じですね(笑)。

とはいえ、どうしても難しくて何読んでもダメ、っていうこともたくさんありましたけどね。

すごい……
勉強の極意を伺っている感じがします……。


この方法には悪いところもあって、それは、試験期間は部屋が文献だらけになって、つま先でジグザグに歩かないと部屋を横切れないというところです(笑)。


お読みいただいてありがとうございます。
次回に続きます!
Vol.10④ 法学徒の手探り 〜2016年初頭、本郷〜

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↑ 本noteの元記事

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