【脚本】『暗殺者の抱擁』～2017初演ver～(壱)

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毎日脚本シリーズも今日で30日。
ついに最後の作品です。
（色々な事情で出せないものもあるので・・・笑）
小分けにしながらではありますが、それでも1ヵ月で底を尽きてしまうとは・・・まだまだですね。

さて、最後はCheeky☆Queensの次回作『暗殺者の抱擁』の初演版脚本です。
改訂版は今筆を進めております。
新たな『暗殺者の抱擁』として発表できる日を楽しみにしつつ。

【登場人物】
小琳(シャオリン)
香港マフィア「黒龍(ヘイロン)」の女暗殺者。アンソニーに出会い、恋をする。
アンソニー
ペアダンス界の未来を嘱望される若きスター。香港マフィアの大派閥「泰山(タイシェン)」の総帥の息子。
マギー
アンソニーとペアを組む女性ダンサー。香港銀行副頭取の娘でアンソニーの婚約者。
李龍賢(リ・ロンシェン)
巨大複合企業、新亜細亜有限公司の創業家・李家の当主。表向きは巨大財閥だが、もうひとつの顔は「泰山」の総帥。アンソニーとリリアンの父。
リリアン
龍賢の娘、アンソニーの姉。龍賢の秘書をしている。本妻の娘。
王(ウォン)
マフィアの「黒龍」の龍頭(ボス)。
ヴィッキー
「黒龍」の女殺し屋。小琳とは姉妹のような関係。それ故に小琳とぶつかる。
ビビアン
「黒龍」の女殺し屋。小琳とは姉妹のような関係。
ラオ
小琳やヴィッキー・ビビアンを育てた暗殺の師。今は引退してバーテンダー。
楊(ヤン)
アンソニーとマギーを指導する元世界的なダンサー。怪我で引退。
ミシェル
マギーの友人。駆け出しのカメラマン。
真奈美
日本人女子大生。アンソニーのファン。元コギャル。
陽子
日本人女子大生。元柔道選手。シドニーオリンピックを目指すも怪我で断念。
陳(チン)
王の側近。よく喋る。
呉(ウー)
王の部下。寡黙。
ショーン
リリアンの夫。アンソニーの義兄。新亜細亜有限公司の幹部。
デュエン
ベトナム人。リリアンとショーンの家のハウスキーパー。
毛(モウ)
香港市警の警官。金のためなら何でもやるタイプ。泰山とも繋がりがある。
馬(マ)
香港市警の警官。毛の同僚。
クリス
カフェテラスのボーイ

＃０

オープニング
１９９７年７月１日午前零時。香港返還式典。

直立する人々。
流れる中国国歌。(歌詞なし、オーケストラ)　
上る中国国旗（イメージ）赤い傘。
万雷の拍手。
その音がいつしか降りしきる雨音になる。
傘を差し行き交う人々。

音楽。「A Evaristo Carriego」

バーテンダー・ラオが一人浮かび上がる。
ラオが喋っている間にも風景は移り変わる。

ラオ 「東洋の真珠、香港。香港島と九龍(クーロン)半島、新界及び２３５余りの島々からなるこの一帯を、人々はそう呼ぶ。百万ドルの夜景、大規模なショッピングモール、映画産業。華々しく美しいこの町は、歴史を紐解けば数奇な運命を歩んできた。１８４２年南京条約、そして１８６０年北京条約を経て１８９８年の展拓香港界址専条(てんたくホンコンかいしせんじょう)で大英帝国による香港の９９年間の租借が完成する。以来、太平洋戦争の間は日本に占領され、そしてまたイギリスの支配下に。大きな力が料理の奪い合いを続ける中で、俺たち香港人は円卓に載せられた器のようにくるりくるりとダンスを続けるしかなかった。美しいものとおぞましいもの、欲と思惑がない交ぜになったこの町で、たった一粒の輝ける真珠を見つけた者を、俺は心から羨ましく思う・・・」

人の波をかき分け、息を切らして走ってくる男・アンソニー。
ずぶ濡れだが、気にする様子もない。小琳の名を何度も呼びながら。
大通りに出て辺りを見回すが、探している人影は見失ったようだ。
車のクラクション。呆然と立ち尽くすアンソニー。
行き交う人々の波に埋もれて・・・（ここまででＭ約１分２０秒）

曲調が変わり、ダンス。
マギーとアンソニー、そして小琳とアンソニーのダンスを軸に、人々の関係性をちら見せするようなステージング。
曲が終わる。（一曲まるまる使用しなくてもいいかと）

ラオ 「１９９７年６月。イギリスから中国への返還を間近に控えた頃だった」