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2021年に観て印象深かった映画を振り返る映画⑩ 七月編 コロナ禍中のディズニー・ピクサー作品感想


 七月は、「マンダロリアン」シーズン2終了とともに解約していた「ディズニー+」を再契約した時期。その影響で、観た映画も「ディズニー+」の登録作品ばかりに偏っていたらしい。今回はその中でも、コロナ禍の煽りを受けてしまった二作品を振り返っていきたい。


「ラーヤと龍の王国」(2020年)



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  その昔。ある王国は聖なる龍たちに守られ、人々は平和に暮らしていた。邪悪な魔物に襲われた時、龍たちは自らを犠牲にして王国を守ったが、残された人々は信じる心を失っていった…。500年もの時が流れ、信じる心を失った王国は、再び魔物に襲われてしまう。
 聖なる龍の力が宿るという<龍の石>──その守護者の一族の娘、ラーヤの旅が始まる。遠い昔に姿を消した “最後の龍”の力を蘇らせ、再び王国に平和を取り戻すために…。

ディズニー公式サイトより引用。一部改変。



 本作は(恐らく)初めて東南アジア風の世界を舞台にしたディズニー長編アニメである。コロナ禍の影響で小規模公開になってしまったのが非常に気の毒な程に面白かった。なお、主演は「スター・ウォーズ EP8・9」の不遇キャラ:ローズ・ティコを演じた、ある意味スターウォーズ新三部作最大の被害者:ケリー・マリー・トラン氏。ラーヤは明らかに「スター・ウォーズ」新三部作の主人公:レイを意識した造型※のキャラクターなので、ケリー氏に対するディズニーの罪滅ぼし的な側面があったのかもしれない。




 人物の仕草・食文化・建築物といった世界観は完全に東南アジアのそれ。世界規模の超大作映画ではあまり見られない世界観なので(同じアジア的ファンタジー世界でも、インド映画「バーフバリ」等とは全く異なる文化圏)、その独自性を楽しむだけでも本作を観る価値がある。単に東南アジア諸国を一緒くたにした訳ではなく、登場する五つの王国それぞれに別のモデルが見られるのも面白い。




 “かつて失ってしまった信じる心を取り戻す”というテーマの物語も素晴らしかった。主人公が人間不信に陥った原因の事件と、クライマックスで主人公が自分の命を賭す行為(命を委ねる相手)がリンクしている作りも上手い。一方、エンディングテーマで「人を信じよう〜」的な歌詞を連呼させるのは“テーマの押し売り”のようで品が悪い。本編が非常に素晴らしいだけに、この〆め方は勿体無かった。



※服装(インナー)の形状、荒涼とした大地を駆ける絵面、コロコロ回転して動くお供がいるなど。


「2分の1の魔法」(2020年)


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 はるか昔、世界は魔法に満ちていたが、時の流れと共に魔法は忘れられていった。“魔法が消えかけた”世界に暮らす少年イアンは、自分に自信が持てず、何をやっても上手くいかないことばかり。そんな彼の叶わぬ願いは、生まれる前に亡くなった父に会う事。

 16歳の誕生日プレゼントに、父が母に託した魔法の杖を贈られたイアンだったが、魔法に失敗して“半分”だけの姿で父を復活させてしまう!魔法オタクで陽気な兄バーリーの助けを借りて、イアンは父を完全に蘇らせる魔法を探す旅に出るが、彼らに残された時間は、あと24時間しかなかった…。

ディズニー公式サイトより引用。



 「ラーヤと龍の王国」同様、ご時世柄公開規模が小さかった悲運のピクサー映画。兄弟が禁術で親を生き返らせようとして失敗する話と要約すると、とある漫画を思い出す…。
 流石はピクサー。相変わらず小道具の使い方・伏線の張り方がわざとらしくなくて上手い。そして丁寧すぎる部分をネタバレして解説するのも野暮なので、何も言えることがない。よって手堅い良作、とだけ言わせてほしい。
 特にラストの“引き演出”は感動必至。俺は初代「ロッキー」の“ミッキーとの和解シーン”を連想したものの、監督曰く「ロスト・イン・トランスレーション」(2003)のラストシーンのオマージュのようで。




 過去のピクサー作品群と比較すると、今ひとつ終盤の盛り上がりに欠けたのが残念。悪役ヴィラン不在の物語なので仕方ない?
 またファンタジー世界が近代化を遂げている舞台設定は悪くないが、そっくりそのまま文明がファンタジー風→現代文明風に塗り替わるのは少々無理がある。例えばもし「ドラゴンクエスト」の世界で産業革命が起きたとして、いきなり人々が魔法を捨てて電気を使い、自動車を乗り回す世界が訪れるだろうか…?最終戦争で文明がリセットでもされない限り、ファンタジー世界の延長線上で文明の発展が起こるんじゃなかろうか。そういった世界観の作品だと「ファイナルファンタジー8」が理想的。




 ※本来は「あの夏のルカ」(2021)についても触れる予定でしたが、書き終わった後に“苦言しか書いてねぇな…”と感じたので丸々削りました。端的に述べると、“社会問題(ルッキズム・人種差別)をテーマとしている割に描き方・向き合い方が雑”といった旨の文章でした。




●2021年に観て印象深かった映画を振り返る  11 に続きます!
なお、画像は全てディズニー公式サイトより引用しました。

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