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2021年に観て印象深かった映画を振り返る⑥ 四月編


 今年鑑賞した映画を振り返る定期シリーズ六弾目となる今回は、四月に鑑賞した映画三本を振り返りたい。三作品とも、良くも悪くも個性が際立つ作品だったように思える。


●「ラビリンス/魔王の迷宮」(1986年)


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 おとぎ話が大好きな少女サラは、ある夜、弟のトビーが泣き止まないことに腹を立て「ゴブリンの王よ、この子をどこかに連れ去って」と愛読書“ラビリンス”に出てくる呪文を言ってしまう。すると本当にトビーはさらわれてしまい、ゴブリンの王ジャレスが現れて、返してほしければ13時間以内に迷路を抜けて城に来るようサラに告げる。そして彼女は迷宮に入り…。

Amazonより引用。一部改変。


 本作は「スター・ウォーズ」シリーズでお馴染みジョージ・ルーカス氏の製作総指揮のもと、人形劇映画の名作「ダーククリスタル」の監督:ジム・ヘンソン氏が手掛けたファンタジー映画である。映画の体を成してはいるものの、実質的にデヴィッド・ボウイ氏とジェニファー・コネリー氏のPV的側面が強い。




 “迷宮”のオープンセットやマペット/着ぐるみによるクリーチャー描写は中々の見応え。文字通り沢山の人間の手が乱舞する“救いの手”描写は新鮮で驚かされた。また“喋るドアノッカー”等の特殊効果も素晴らしく、2021年を生きる自分の目から見ても全く古くささを感じない。「パンズ・ラビリンス」あたりのギレルモ・デル・トロ作品の造形美が好きな人に刺さりそうな作品と思われる。




 ただ、“見応え”は“面白さ”と必ずしも一致しないのが悲しいところ。子ども向けファンタジーとはいえリアリティラインの線引きが曖昧過ぎるし、唐突に捩じ込まれるデヴィッド・ボウイ氏のミュージカルパートは正直言って浮いている。お世辞にも美形とは言えないゴブリン族達の王を演じているのが、エルフの様なルックスのデヴィッド・ボウイ氏というのも絵面的に納得し辛い。
 本作はMCU開始以前の迷作マーベル映画「ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀」(製作総指揮:ジョージ・ルーカス)と同年公開だったそうだが、当時の世間からのルーカス評が気になる所である。



●「ドクター・スリープ」(2019年)


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 ダニー・トランスは、幼い頃オーバールックホテルで刻み付けられたトラウマに未だに苛まれていた。
 そんな彼の前に過去の亡霊が現れる。きっかけは、ある勇敢な十代の少女との出会いだった。ダニーに協力を求めてきた少女アブラ──彼女が秘めていたものこそ、“シャイニング"と呼ばれる特別な力だった。
 二人は謎多き連続事件を介して邪悪な力を持つ集団のもとへと導かれていく。
彼らが行きつく場所は呪われたホテル。時空をも超える、命を懸けた最終決戦が今、始まる。

Amazonより引用。誤字が多かったので大幅に改変。


 本作は「シャイニング」の原作者:スティーヴン・キング氏がその40年後を描いた作品の劇場版である。ジャンルはサスペンス/ホラーというよりも『週刊少年ジャンプ』的な“能力バトルもの”と言って差し支えない。そのため、かの名作ホラー映画の続編として観てしまうと頭にクエスチョンマークが浮かんでしまうが、娯楽作品としては上々の内容であった。




 本作はダメ中年の更生物語となる序盤・暗躍する敵集団と相対する中盤・本格的に「シャイニング」とリンクする終盤…というわかりやすい三幕で構成されていたが、どのパートも丁寧さが感じられず性急に感じられたのが惜しい点。




 一方、かのホテルにおいてシャイニング版「アベンジャーズ」とも言える展開が発生する最終盤では正直なところ心躍ってしまった。恐怖を通り越して思わず笑みが溢れてしまった程だ。この辺りが名作ホラーの続編としてどうなの?と感じた部分でもあり、本作における最大の見所かつ最高に楽しかったポイントでもある。
 俺が「シャイニング」初見時に恐怖で震え上がった“風呂場のアレ”の恐怖度は相当薄らいでいたの気がするが、それは緑色をしていなかったせいか、或いは遭遇するシチュエーションが異なるせいか。




 余談だが、ヒロインの部屋にアニメ「RWBY」のポスターが貼ってあるのが妙に目立つ。監督がファンなのだろうか。



●「JUNK HEAD」(2017/2021年※)


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 環境破壊が止まらず、もはや地上は住めないほど汚染された。人類は地下開発を目指し、その労働力として人工生命体マリガンを創造する。ところが、自我に目覚めたマリガンが人類に反乱、地下を乗っ取ってしまう。
 それから1600年──遺伝子操作により永遠と言える命を得た人類は、その代償として生殖能力を失った。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化していたマリガンの調査を開始。政府が募集した地下調査員に、生徒が激減したダンス講師の“主人公”が名乗りを上げる。
 地下へと潜入し、〈死〉と隣り合わせになることで命を実感した主人公は、マリガンたちと協力して人類再生の道を探る。今、広大な地下世界の迷宮で、クセ者ぞろいのマリガンとの奇想天外な冒険が始まる!

公式サイトより引用。

 ※制作年は2017年であるが、本格的な劇場公開は2021年…という事でこのような表記とした。



 本作は実物のミニチュアセットと人形をコマ撮り(約14万枚)して製作された、ストップモーションアニメ映画である。同一ジャンルの有名作品としては「ニャッキ!」「モルカー」「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」等が挙げられる。2021年の春は「モルカー」が大ブームとなっていたこともあり、日本のストップモーションアニメ界が賑わっていたのも懐かしい。




 本作の魅力はとにかく美術面に尽きる。不気味かつ愛嬌のあるキャラクター。絶妙にブラックユーモアが効いたコメディセンス。ハンドメイドなのに安っぽさを感じない、ミニチュアセットによる世界観・舞台造形(漫画家:弐瓶勉先生の影響が感じられる)。これらは確かに各所から大絶賛されるだけの事はある。
 七年の歳月をかけ、独学かつほぼ独力でこの作品世界を創り上げた堀貴秀監督には頭が下がる。以下に公式よりアップロードされた冒頭十分の動画を掲載するが、一体この十分だけでもどれ程の苦労・時間を費やしたのだろう…?




 とはいえ終盤まで目的地が行方不明過ぎる(物語的にも脚本的にも)、クリーチャーのルックスがどれも似過ぎて絵面のバリエーションに欠ける…といった不満要素も強く、残念ながら映画の出来そのものについては絶賛できない。後者についてはもっと強烈な異形感、もしくはカラーリングの違いで個体の差別化を図るべきだったように感じる。本作は三部作構想の第一作であるそうなので、続編での大幅なブラッシュアップを期待したい。





●「四月編 その2」もしくは「五月編」に続きます!
…が、そちらを掲載する前に下書き状態のスタローンネタ(以前の記事で草案を書いた、スタローン伝記漫画の紹介)を完成させ、近日中に投稿する予定です。



※「JUNK HEAD」の画像は公式サイトより引用しました。
それ以外の画像はAmazonより引用しております。

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