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計算しない女

今夜も家事を終え、やっと一息つける…と腰をおろしたところ、夫のうなる声がする。
チラッと見てみると、パソコンにむかってうなっている。
とりあえず体調が悪くてうなっているわけではないとわかるので、放置。
さて、さっき来たメッセージへ返信しようかなとスマホを手に取ると、
一際大きい声で「うーん」と、またうなる。

そういえば、私も新卒で入った会社で
「のびつまさんは困るとパソコンの前で『うーん』っていうんだよね」
と上司・先輩・同僚・後輩、みんなに助けてもらった記憶がある。

これは
「ヘルプ!はなしかけてくれ!」
というサインなのだろうか。
奥にいるうさぎに“どっちがはなしかける?”と、目配せをしてみる。
素知らぬ顔をして、ふんふんポリポリと草をたべるうさぎ。
…私しかいないよね。

「どうしたの?」
「球の角度が難しくて」

? た ま の か く ど ? 

一体何のことかと思ったら、この前記事にあげた
なぞの球体について頭を悩ませているらしい。

「球をできるだけ丸く作りたいんだけど、
どの形をどう組みあわせたら、丸に近づくのかがむずかしい」

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ノビ夫がつくりたいのは、木を骨組みにしてそこに透ける紙を貼りつけ、中に電球をいれたもの。ぼんぼりやちょうちんの親戚のようなものだと思ってもらったらわかりやすいかも。 

ただ、それらは異なる円を骨組みにしていて、たためるかわりに自立しない。
ノビ夫はたためなくていいので自立し、さらに重くなく、頑丈なものを求めている。なので、三角をたくさん組み合わせて球にしようとしているらしい。
わかりづらいよね。まぁミラーボールの兄弟みたいなものだと想像してもらったら、なんとなく正解だとおもう。

自立する・重くない・丈夫という、理想のパートナーみたいな条件は簡単に見つかるものではないらしい。この角度にしたらバランスが崩れてしまうなーとか、こっちにしたら尖ってキツいものになってしまうとかで困っているようなのだ。
(なんだろう、なんか心に刺さる)

「ねー、のびつまー計算してよ」

無茶をいうな。
たのむ相手の間違いっぷりが、正気を疑われるレベルだぞ。

* * *

それがわかったのは、小学校の夏休みのこと。
それまではだましだましで算数と付き合ってきたのだが、ついに軽くあしらっていたのがバレてしまう。きっかけは単位換算。
時をもどそう。

「1リットルは何デシリットルでしょう?」

突然の問いかけに、固まる小学生の私。

何デシリットルでしょうって?
デシリットルとは?
一リットルは一リットル以外の何でもないだろう。
私ってまわりからどう見られてるのかなぁ?みたいな質問だ。
あなたはあなたでいいじゃない。

いくら考えても答えは出ない。
普段ちゃんと向かいあっていないのがバレてしまった。
母にまでその姿勢を怒られるしまつ。

さらりと片付けてこどもアニメ大会をみようと目論んでいたのに、とんだ修羅場だ。

後悔しても時は戻らない。
算数を適当にあしらった過去は消えないし、取り戻せない。
積み重ねですれちがったものは、時をかけて修復するしかないわけで、その場でどうにかできるものではない。

―――私は算数との関係修復をあきらめた。
こどもアニメ大会はどうにか観せてもらえたけど、観ながらたべる予定だったアイスはナシになった。
つらい。

こうして両者のあいだには、深い溝ができたのだ。

* * *

それ以来、数字をみると脳内がフリーズする。徹底して仲が悪い。
見つづけていると模様に見えてくる。
まさに、こうばのえんとつ、あかちゃんのおみみ。
たまに単純な足し算さえまちがえる。
なので、もう計算をするのをやめた。
"計算できない女"だとイメージがよろしくないけど、"計算しない女"だとなんか自分の意志でそうしてる感が出てかっこよくない?

計算や数字のこととなると、もっぱらノビ夫を頼る。
信頼できる、数字と仲良しの友人たちを頼る。
不思議なことだけど
「苦手だからお願いしてもいいかな?」
という謙虚な気持ちは意外としっかり伝わり、頼まれた相手も悪い気にはならないようだ。
人間関係をおたがい快適にしていくという面では、ちゃんと計算する女でいたいな。
もちろん、素直さと謙虚さをわすれずにね。

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