【エッセイ】道ゆく人々を眺める
まだまだ夏の空気が残り、
「秋」とは名ばかりの頃。
駅の外階段に座り、街の雑多な風景とともに、
私はただ、道ゆく人たちを眺めていた。
人工物で作られた街並み。
そこから春夏秋冬を感じられるのは、
人々の服装から判断するしかない。
ターミナル駅では人々が右往左往している。
ある人は西から東へ
またある人は東から西へ。
「歩いている人達を見て、何をしているのか妄想をするのが好き」とA子は言った。
私は首を縦に振り”わかるわかる”
という同意の仕草をした。
しかし、私は実際にそれを行ってみると、
なにも面白味の無いことがわかった。
人々の外見と言う名の
「表情」「服装」「歩き方」
それは多種多様であり、
さまざまな妄想が可能である。
白Tシャツ+ベージュチノパンの男性
黒セーター+花柄ロングスカートの女性
彼らや彼女らは今何をしているのか、
そして一体どんな人生を過ごしているのだろう。
それらをなんとか妄想しようとしたが、
てんでダメだった。
理由は分からないが、私が他人にそれほど興味を持てないせいなのかもしれない。
そのように、冷たくなったコンクリートに座り、
道行く人達を1時間ほど眺めていた。
そこでは私の頭は空っぽで、
目が開いているだけ。
「人間観察」には向いていない。
首を横に振り、目を伏せる。
立ち上がると同じ姿勢をしていたせいか、
首と肩が張り痛くなってしまった。
「物思いに耽る」という行為も、
なかなか大変なのだ。
何も考えていないけれど妙に疲れた頭。
そして張ってしまった首と肩をさすりながら、
私は人工物で彩られた雑踏へと紛れ込んでいく。
つづく。
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