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#雑記

沈みつつ、朝

沈みつつ、朝

ソファに沈んだまま二人は朝を迎えた。
アサが先に起きて、キッチンまで行き水を一杯飲んだ。
タナカはその様子を沈んだまま、視界は霞んだまま眺めていた。

「明けましておめでとうございます」

アサにそう言われ携帯を確認する。
5:03と仰々しい文字の下に、1/1 sat。

「うん、明けましておめでとう」

タナカも立ち上がりキッチンで水道水を一杯飲む。
本能的に体の内に閉じ込めていた熱が、水の冷た

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淡くどうでも良い

淡くどうでも良い

淡く過ごしやすい夜になっていた
私をおいて万物と移っていった夏の背を追いかけた
逃げ水のように辿り着かなかった

人も建物も空気もすべて影を残し揶揄していた
毛量が多くうねった黒髪に反して、肌は白い
「気持ちの悪い」に制約されて過ごした

緩く吐き気を誘う風はいつの間にか、
次へと移っていった万物たちの跡に風が吹き込む
ノスタルジーと橙な麗らか

閉め切った窓が開き、

どこかの庭で犬が強く吠える

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雨は遅く、僕が連れていく

急な雨に降られた。私は小学校のグラウンドにいた。ナイターで照らされていて、その光がはみ出して周りの家々も明るかった。
奈落に浮かぶ島のよう。

光の先から急に雨が現れているようで、反射して落ちる雨は均等に遅く見てた。光の帳の中がそれでいっぱいになって流れていく。
土が徐々に濡れて色が濃くなって固まっていった。雨は強くなる一方だったので校舎の軒先へと移動した。

「これ止みますかね〜」

「雨雲レー

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