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訓練における言語の選択

臨床の中でセラピストはどのような言葉を選択しているのか。

まず、考えてほしいのは、相手が思う「言葉の捉える意味」と私の思う「言葉の捉える意味」の受け取り方は様々ということです。
※いわゆる『メタ認知』です。

これは、脳に損傷を受けなくても容易に起こりうることです。

そこを踏まえてセラピストは言葉を選び、脳卒中患者にどのような経験をリハビリの時間の中で与える事ができるのか、ここがコントロールできると臨床の技術は格段に上がると思います。

まずは、『言葉』について知りましょう。

言語による意思伝達

言語による意思伝達は
▸ 名詞
▸ 動詞
▸ 形容詞
▸ 修飾語(いつ/どこで/どのような/何を/どのように)
▸ 比喩

など、さまざまな単語の組み合わせにより成り立ち、機能する脳領域がそれぞれ異なっています。

名詞による考え方

名詞は視覚的にも触覚的にもそのものが何であるかを認識し、運動を再現させる為に必要であり、側頭葉がその主な責任領域であります。

対象物や身体部位が何であるかということが認識できなければ、運動性言語野(ブローカ野)でない言語によるネーミングができず、身体をどの様に動かすかという認識が困難になります。

したがって、セラピストは患者が適切に「肩」や「膝」といった身体部位の名前を認識できているかといったように、側頭連合野と運動性言語野の機能との評価を実施するべきです。

動詞による考え方

動詞は、肩が「開く」や膝が「伸びる」といった動きの認識に必要であり、運動のイメージを伴うことになります。

※運動イメージについては以下で。

【動詞の観察事項】
☑︎ 自己の身体運動をどのような動詞を用いて言語化しているのか。
☑︎ どのような動詞を用いた言語教示が患者の運動のシミュレーションを介助できるのか

つまり、運動の出現の仕方との関係性を把握することが必要です。

【例えば】
↪︎ セラピストが膝について「伸びていく」といった動詞を用いると、頭頂葉の視覚的な認識に関わる領域の活性化が必要であり、患者自身のが膝を「伸ばしている」といった自己の運動をシミュレーションしているような動詞を用いると、頭頂葉連合野と前頭連合野の双方の活性化が必要になる。

形容詞による考え方

【形容詞】

「遠い/近い」→ 空間的な距離

「硬い/柔らかい」→ 触覚的な情報
 
「重い/軽い」→ 力量的な情報
 
「速い/遅い」→ 時間的な情報

形容詞は、運動の中では空間的/接触的/時間的な制御に必要な言語です。

セラピストは「患者の運動制御に対する形容詞の認識について評価し、形容詞の変化に伴う運動制御の変化についても観察」する必要があります。

修飾語や比喩(メタファー)による考え方 

修飾語や比喩は、「そっと(物を)取る」や「棒のように足を伸ばして立つ」というように、『運動の速さや身体の知覚の変質などといった自己の身体の使い方を認識する』ために必要な言語です。

※頭頂葉下部の角回などで生成される
↪︎ 頭頂葉下部(39野/40野)は、体性感覚と視覚が統合され生成された身体図式と聴覚や記憶をさらに統合させる場所です。

セラピストは、患者の異常な運動パターンに対して、メタファー言語の教示による筋の力量調節などの変化を観察し、運動制御への新たな気づきが与えられるのか否かを観察しておくことが必要です。

まとめ

以上のように、セラピストは患者の運動の異常要素が、脳の情報処理過程のどの認知機能の異常が主な原因となって表出されているのかを仮説を立て、身体を介した認知問題によって認知過程に対して働きかけていくことが重要です。

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