タトゥー

康太はタトゥーを入れた。
カッコいいからという理由もあるが、彼は消えないものを入れることで、覚悟を持とうとしたのだ。
タトゥーがあれば自由のきかないことが多い。
でも康太はそれに抗って、反骨精神を持とうとした。
例えタトゥーを理由に困難な場面があっても、乗り越えて見せると彼は息巻いた。
退路を断って後戻りができない状態に自分を追い込むことが必要だと思った。
それを潔くカッコいいことだと思った。
ある日、康太は美しい優子と出逢った。
彼女は友達の友達。
ひと目見た時から康太は優子を気に入った。
長身でスタイリッシュ、そして何よりも白い肌が美しかった。
康太と優子は出逢った日から意気投合した。
実に馬が合う。
二人が恋仲になるには時間はかからなかった。
ある日、二人は体を重ねることとなった。
康太は服を脱ぐ。
「へぇ〜、タトゥー入れてるんだ。カッコいいね。」
康太は彼女の言葉に満足した。
自分の信念で入れたタトゥーを褒められたからだ。
彼の自尊心は満たされた。
彼女も服を脱ぐ。
後ろ向きに妖艶に脱ぎ始めた。
あらわになる肌。
真っ白な肌が美しい。 
康太はこの先のことを想像すると胸が高鳴った。
しかし果たして、彼女の裸体にも同じくタトゥーが入っていた。
肩にワンポイントの。
美しい透き通る白い肌にワンポイントのバラのタトゥー。
「ふふふ。私も入れてるの、タトゥー。可愛いでしょ?」
しかし康太は素直に言葉を返せなかった。
違和感を覚えたからだ。
康太は思った。
あの透き通るような真っ白な美しいキャンバスになんてことを...
一点の曇りもない無垢なキャンバスにこそ美しさがあったのに...
自分にはタトゥーが入っているくせに、優子のタトゥーにはひどくやるせなさを覚えた。
彼女はそのタトゥーを可愛いから入れたという。
理由はただそれだけだった。
そこには何の信念もない。
康太は彼女の肌の美しさとは裏腹に、その浅はかさに残念を覚えた。
康太はその真っ白なキャンバスに、優子の純粋無垢な人間を勝手に見ていたのです。
そしてそこに穢れを見てしまったような気がして、とてもやるせない気持ちになったのでした。

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ごめんなさいね〜サポートなんかしていただいちゃって〜。恐縮だわぁ〜。