【英語インタビュー】夢はこの手で引き寄せる!セレニさんが日本で働く理由と、将来の展望
日本に来て働いている外国人の方が、どうして来日することになったのか気になったことはありませんか。
セレニさんは、2018年にスリランカから日本にやって来ました。
母国では、測量局に勤務する国家公務員でしたが、現在は日本の測量会社に勤務し、ヘリコプターや飛行機で計測した、地形データの解析などに従事しています。
スリランカで安定した職に就いていたはずのセレニさんが、全く日本語がわからないなか、日本に来たきっかけはなんだったのか。そして、これからどうなっていきたいのか。
心の内に秘める熱い想いについて聞きました。
一度は諦めた器械体操も再開!好きなことをめいっぱい楽しむ、日本での生活
——まず初めに、日本に来たときに感じた第一印象を教えてください。
街がきれいで、とてもよく整備されているなと思いました。それに、みなさん親切で礼儀正しく、謙虚なところもとても素敵だなと感じました。
来日して3年が経ちましたが、そのとき受けた印象は今も変わっていません。
——食文化についてはどうですか?「日本食が口に合わない」という外国の方の意見をよく聞くのですが……。
そうですね、私は辛いものが好きなのですが、日本食は少し甘いと感じてしまって、最初は合わないと思うこともありました。なので、基本的には毎日スリランカのスパイスを使って自炊をしています。
とはいえ、いろいろ試すことは好きなので、日本食に少量から挑戦して、気に入ったら少しずつ量を増やして楽しんでいるうちに、舌も少しずつ日本の味に慣れてきました。
——なにか気に入った日本食はありますか?
たくさん試した中で、一番美味しいと思ったのはカツ丼ですね。サクサクした食感がとても気に入っています。
——逆に、嫌いな食べ物はありますか?
生の魚が苦手です。マグロは少しなら食べられるのですが……。日本の魚は、スリランカのものと比べると味も違いますし、少し生臭く感じてしまいます。
——セレニさんのインスタグラムを見たのですが、日本全国いろいろなところを訪れていますよね。どこか印象に残った場所はありますか?
なんと言っても富士山ですね! 頂上で見た雲海とご来光は、まるで天国のようでした。
富士山は一人旅でしたが、会社の人と一緒に、岐阜県の金華山や飛騨山脈の乗鞍岳、木曽山脈の駒ヶ岳にも登りました。登山が好きなので、よく週末に山へ行く計画を立てています。
——いろいろなスポーツに挑戦している写真も見ました。
地域の卓球部や会社の野球部にも所属していますし、たまにトランポリンなどができる施設にも通っています。この前は、空中ブランコにも挑戦しました。
最初は怖かったのですが、昔から器械体操をやっていたこともあり、その経験を活かして楽しむことができました。
——器械体操を始めたのは、いつですか?
7歳のときです。
プロの体操選手に簡単な技を教えてもらえるという小学校のイベントに参加したことがきっかけでした。その人は、当時スリランカでもトップクラスの選手で、まるで鳥のように軽やかに演技をする姿にとても感動したんです。
数日間のイベントだけでは飽き足らず、その後、個人的に彼のレッスンを受け始め、そのまま10年ほど師事しました。放課後はほぼ毎日通っていましたね。
その成果もあってか、12歳から体操をやめるまでの5年間、州の大会で毎回優勝していました。
——すごいですね! なぜやめてしまったのでしょうか?
勉強が忙しくなり、体操の練習にあてる時間が取れなくなってしまったんです。それに他の州に引っ越したため、距離的にレッスンに通うことが難しくなったことも原因のひとつです。
この点は、自分でも長年心残りでした。
なので、日本で器械体操をまた始められたことはとても嬉しいです。ブランクはありましたが、まだ体が覚えているようです。
——なるほど。そういう意味でも、日本での生活はいい機会となっているのでしょうか?
そうですね。キャリアを積む意味でも、プライベートでも、日本に来たことは私にとって人生のターニングポイントとなりました。すごく楽しいですし、日増しに充実度が高まっています。
もっと技術を学びたい!日本に来たきっかけ
——スリランカでは、どのようなお仕事をされていたのでしょうか。
スリランカ測量局で、公務員として働いていました。私が所属していたのは、飛行機などを使って空から測量をする、航空測量という技術を扱う部署でした。
——セレニさんが航空測量を学び始めたきっかけはなんですか? もともと航空分野に興味があったのでしょうか?
小さい頃から、宇宙や人工衛星などについての資料を読むことが好きだったので、いずれ航空関係の仕事に就きたいと思っていました。
パイロットになりたいと思ったりもしましたが、背の高さが規定を満たしていなかったので諦めました。ですが、幸運にも高校卒業後に測量局で学ぶ機会を得たので、入局後、航空測量の勉強を始めたんです。
——測量局で「学ぶ」というのがピンと来ないのですが、大学のようなものですか?
そうですね、測量局の附属大学みたいなものでしょうか。まずは試験を受け、合格したら測量局に入り、測量学校で学びます。入局後なので、在学期間中も給料が支払われます。
——それは、スリランカでは普通のシステムなのでしょうか?
いいえ、測量局独自の制度です。
測量学校で2年間学んだ後は、1年間の研修があります。研修では、任されたプロジェクトを管理する経験を積みます。この期間は、直属の上司が作業進捗をチェックするなどの面倒をみてくれます。
——手厚いですね。研修後は何年くらい働いていたのですか?
2年間です。その前に1年の研修と、2年の測量学校在学期間を経ているので、計5年間、測量局に勤務していたことになりますね。
——安定した職に就かれていたのだと思いますが、来日して働くことになったきっかけはなんだったのでしょうか。
2015年から2016年にかけて実施されたJICAプロジェクトに、測量局側のコーディネーターとして関わったことがきっかけです。
飛行機にレーザ機器を搭載し、空から土地を計測してスリランカ全土の地形図を作成するという大きな仕事で、このとき技術提供のためにスリランカを訪れていたのが、今働いている日本の会社でした。
スリランカには、そもそもヘリや飛行機に搭載できるレーザ機器がありません。なので、この仕事は本当に刺激的で。毎日質問ばかりしていました。
そして、長期間一緒に仕事をするなかで、私が航空レーザ技術に興味津々なことを察知してくださったのか、「日本で働いてみる?」と今の会社の人に声をかけられたんです。
——全く日本語がわからないなか、迷いはなかったですか?
レーザ機器がある日本で航空測量のことを学びたいという気持ちが強かったので、「ぜひ!」と即答しました。その後、国の研修制度を使って測量局に在籍したまま日本に来て、今の会社にアルバイトとして入社することができました。
さらなる高みを目指して。世界に航空測量の技術を広めるために。
——日本では、どのような仕事を担当しているのですか?
飛行機やヘリで計測したレーザデータの解析業務などを行っています。さらに、スリランカでは英語を日常的に使っていたので、社内の技術資料や重要書類の翻訳もしています。
——英語といえば、2021年の夏から、セレニさんを中心に社内で語学教室が始まったと聞きました。
そうなんです。お昼休みなどの空き時間を使って、同僚に日本語を教えてもらい、逆に私は英語を教える、という相互学習をやっています。教科書を使いながら、普段の生活で使える簡単なフレーズを教えあって勉強しています。
——覚えた中で、印象に残った日本語はありますか?
「ありがとうございます」が好きですね。
それから、「すみません」も、謝罪するときにも使えるし、誰かに話しかけるときにも使えるという点が興味深いですね。同じ言葉でもシチュエーションによって意味合いが変わったりするので、おもしろいなと思います。
——先ほど、アルバイトとして入社されたと伺いましたが、現在は契約社員として働いているのですよね。
スリランカ測量局を辞め、2021年10月から今の会社の契約社員になりました。日本に腰を据えて滞在し、もっともっと本格的に航空測量を学ぶために、決断したんです。
——ポジションが変わったいま、「今後こんな仕事に挑戦したい!」など希望はありますか?
もっと新しい知識を知り、吸収したいという気持ちが強いです。
今は限られた解析業務しか任されていません。ですが、いずれは測量機器でデータを取得するところから、客先への納品成果を作る最終の段階まで、全体を通して仕事をしてみたいなと思います。
飛行機やヘリコプターの機内でレーザ測量機器を扱う部署の業務も間近で見てみたいですね。どうやって計測作業をしているのか、実際に知りたいんです。
——まだまだ意欲は尽きませんね!そうやってスキルアップした先に、どのような将来像を思い浮かべていますか?
世界で通用する航空レーザ測量のエキスパートになりたいです!
その第一歩として、日本で得た航空レーザ測量の知識を、英語の記事にしたりYouTube動画にしたりしているところです。
いずれ、私が得た知識を世界中の人に共有できるような、グローバルな人材になりたいと、強く思っています。
*編集後記*
「日本で航空レーザ測量をもっと勉強したい!」「測量の技術を世界に広めたい!」そんな大きな夢を語ってくれたセレニさん。物腰穏やかな口調とは裏腹に、学びへの意欲と強い意思を感じた取材となりました。
「やりたい!」と思ったことは即実行するセレニさんの姿勢に、夢を叶える秘訣があるのではと感じます。ぜひそのマインドを見習って、自分の心の声に耳を澄ませ、未来を見据えて進んでいきたいものです。
普段何気なく街で見かける外国の方々。日本で生まれた私たちとは違って、きっといろいろな想いや事情があって来日しているはずですよね。
この記事が、あなたの周りにいる外国の人をもっと知りたいと思えるような、そんなきっかけとなりますように!
この記事は、雑誌風に再編集し、セレニさんが働く職場で回覧いただきました。よろしければ以下もご覧ください!
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