マガジンのカバー画像

#音楽 記事まとめ

3,574
楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
運営しているクリエイター

2024年1月の記事一覧

かっこいい音楽。

最近古い音源を割とよく聴いています。きっかけはWeldon Irvineの「Time Capsule」。いわゆるレア・グルーヴ系の名盤といわれるものですが、僕は聴いたことがありませんでした。しかしこの盤に出会って、それ以来1970〜1980年代を中心に、旧譜の中からかっこいいアルバムを聴いています。「かっこいい」って、音楽を聴く上での重要な動機付けの一つだと僕は思うのです。 Weldon Irvineのように最近初めて聴いたものもあれば、過去に聴いていたアルバムを思い出して

J Dilla聖地巡礼地図(2):ニューヨーク編

イントロ 『Dilla Time』でも繰り返し強調されている通り、Jディラが音楽活動を始めた1990年代初頭のヒップホップといえば完全にニューヨークあるいはロサンゼルスのものであり、まだまだ地域性が強い音楽だった。音楽面ではDJプレミアやピートロックといったニューヨークのビートメーカーの影響が色濃い初期Jディラ(ジェイ・ディー時代)が、活動を本格化するにつれて拠点を徐々にこの都市に移していくのは必然だった。  デトロイト育ちのJディラがニューヨークと縁を持つことになったき

柴田聡子インタビュー 飛躍のアルバム『ぼちぼち銀河』で本格導入したDTMの「雑感」を訊く

昨年リリースした6枚目のアルバム『ぼちぼち銀河』が反響を呼び続けている柴田聡子。すでにキャリア10年以上を数えるが、音源を重ねるごとに作風は変化を見せ、いよいよ彼女でしか表現し得ない唯一無二の音楽が生まれつつある。実はその変化の大きなポイントとなっているのが、数年前から取り入れ始めたといういわゆる「打ち込みサウンド」へのアプローチ。そもそもなぜ柴田聡子はDAWを導入したのか、どのように曲制作に活かしているのか、これまで明かされることのなかった制作の裏側をDTM視点で探ってみた

ロビー・ロバートソンが奏でた残響のアメリカーナ

ロバートソンはずっとそうだった  昨年、ロビー・ロバートソンが亡くなった。  2023年8月9日のことだから、もう半年がたつ。私がもっとも敬愛していたミュージシャンであったので、彼がすでに地上にいないという事実は、とてもさびしい。  おそらく多くの日本人がそうであったように、私も結局ロビー・ロバートソンが音楽を奏でる現場に立ち会うことはできなかった。そのことも、よけいに喪失の穴が埋まらない原因になっている気がする。  しかし、奇跡的な瞬間もあった。  2002年、「ラスト・

Best JAZZ Albums of 2023 with Reviews

大手のレコード屋を退職し、京都に移住してから早いもので二年が経ちそうです。相も変わらずレコード屋(兼ミュージックバー)でバイヤーをしてますので、ぜひ遊びにきてください。 2023年のジャズの年間ベストです。全部で51枚、作品の系統ごとに整理してディスクレビューをつけました。一万字ほどありますが、ある程度まとめて読んだり聴いたりすると面白さが伝わるのかなと思います。2023年のリリースは想像以上に面白い作品ばかりです。 (もし役にたったらぜひ投げ銭お願いします!!書くの疲れ

¥300

2020年代インターネットにおける背教的ヒップホップの系譜

2020年代のインターネットを跋扈する、ゴスっぽいヒップホップ(Surge/HexD・Sigilkore/Krush Club・Scenecore)についての私的なまとめです ホラーコアからPhonkへいわゆる悪魔崇拝的なラップのルーツは、米国南部で発展を遂げたホラーコアにある。ホラー映画とヒップホップを結びつけた同ジャンルはテキサス州ヒューストンのGeto Boysがリリースした「Assassin」(1988年)に端を発するといわれる。ホラーコアはテネシー州メンフィスにお

銀座の東劇では2/1まで映画館で上演中/オペラ『マルコムX』の見どころ

※東劇以外での上映は2024年1月25日(木)で終了しました。  アメリカ最高峰の歌劇場(オペラハウス)であるメトロポリタン歌劇場、通称MET。ここで上映されたばかりの話題作が、世界各地の映画館でライブビューイングとして上演されています。  現在ライブビューイングされているのが、伝説的な黒人解放運動家として歴史に名を残すマルコムX(1925〜1965)の少年時代から暗殺されるまでを2時間半かけて描くオペラです。オペラなんて観たことないからハードルが……と思われている方もご

ロックとヒップホップの蜜月の歴史は、サウンドパックでさらに加速する!?【サウンドパックとヒップホップ 第5回】

私が「サウンドパックとヒップホップ」と「極上ビートのレシピ」の連載を行っていたメディア「Soundmain Blog」のサービス終了に伴い、過去記事を転載します。こちらは2022年2月22日掲載の「サウンドパックとヒップホップ」の第5回です。 なお、この記事に登場する曲を中心にしたプレイリストも制作したので、あわせて是非。 ヒップホップ史におけるロックとの接近例をポスト・エモラップ時代のヒントに前回インタビューを行ったxngb2は、ロックバンドのTHE MAD CAPSU

¥100

いはないお約束/MV解説

melonadeです。今回は「いはないお約束」のMVについて書きます。 「いはないお約束」の映像はBlenderを中心に、Python、AfterEffects、p5.jsなどのツールを用いて制作しました。アイサイト・ラブ同様、プログラミングを用いた制作です。 映像全体を通して色のついた棒状のオブジェクト(以降柱オブジェクトと呼びます)が中央に存在するのが特徴で、ほとんど映像としての場面の切り替わりがありません。 当記事では、こちらの映像についてお話しします。 アイデ

JUZU aka MOOCHYインタビュー前編

KKV Neighborhood #205 Interview - 2024.1.10 インタビュー、構成 by 小野田雄 インドやパキスタンでレコーディングした様々な素材を軸に、国内の音楽家たちの助力を得て、昨年12月にJ.A.K.A.M.名義の新作アルバム『FRAGMENTS』を発表したDJ、プロデューサーのJUZU aka MOOCHY。世界各地の音楽家たちとセッションを重ねながら、唯一無二のダンストラックを生み出し続けてきた彼の音楽遍歴、キャリアは多岐に渡り、そして

小野瀬雅生の2023年ベストミュージック10選+α【前編】

2023年も色々な音楽に出逢った。ここ数年にはなかったくらい深く音楽とコンタクトした。音楽と一緒に旅をして彷徨って、思いもよらなかった場所に出た。音楽と夜通し語らって、朝を何度も迎えた。新しいものの中には懐かしい要素がたっぷり入っていて、懐かしいものには新しい発見が常にある。あまりのんびりしていると2024年もすぐ春とかになってしまいそうなので、急いで2023年に僕が深くコンタクトした音楽をご紹介する。2023年に発表されたものも、もっと昔のものも、いつ発表されたか判らないも

Love Korean Music

以前から「秋休み」や「Lucid Fall」、「空中泥棒(現Bird's Eye Batang)」や「Dringe Augh」などは聴く機会もあったし、ブログなどでポツポツ紹介もしてはいたのですが、韓国の音楽にどっぷりと浸かることはありませんでした。このところ韓国ドラマをずっと観ている影響もあって、最初に観たドラマ『愛の不時着』で印象的だった10cmを聴いてみたりしてはいたのですが、決定的だったのはLee Lanや、最近知ったJeon Jin HeeやMinhwi Leeです

「技量」で「技量」を得まくる1年に

ご無沙汰しています。leift、KOTARO SAITOこと、音楽家の齊藤耕太郎です。noteを書かずに過ごすこと4ヶ月余り、気がつけば年が明けてしまいました。明けまして、おめでとうございます。 この数ヶ月、僕はずっと動いていました。一切の立ち止まりもなく、ただひたすら思考→行動→検証→思考→行動の繰り返し。 2023年から2024年になったからといって、自分ごとが大きく変化したっていう印象はないです。まずは去年から今年にかけて僕が何をしていたかの報告も兼ねて、近況報告を

2023年のお気に入りアルバム10枚

今年も例年通り、新譜で特におすすめしたいアルバムをまとめました。 毎年書いてるので細かい挨拶など色々端折って特にお気に入りの10枚を短文とともに紹介していきます。そしてこれも毎年書いてますが、順位はクオリティを表すものではなく、「他の人にも聞いて欲しい度」みたいなものなので、順番や漏れた作品に関してあまり深い意味はないです。少なくともここにあげてる10枚は、本当は全部聞いてほしいくらいなので、気になったアルバムはサブスクやらなんやらで聞いてみてほしいです。 そして、さらに