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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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【渋谷の歴史 vol.8 「渋谷にあったアメリカ:ワシントン・ハイツの中のレコードショップ」

戦前の音楽史やレコードに関しての書籍や資料はたくさんあるが、日本のレコード屋の歴史を研究した書籍はほとんどないと思う。特にレコード誕生から戦前の中古盤屋の歴史を調査した本は見たこと無いし、調べている研究家も聞いたことがない。 長い間「はて、日本で一番最初の中古盤屋や輸入盤屋はどこなんだろう?」とずっと思っていた。しかしネットには情報が非常に少ないし書籍も少ない。 「自分の生業の歴史」も知らないのは悔しいので、仕方なく時間のある時に少しづつ調べている。 たまたまYOUTUB

上田知華 提供曲

上田知華は1978年8月、上田知華+KARYOBINとしてデビュー。 1984年からはソロアーティストとして活動を開始しています。 2021年にお亡くなりになるまで、多くのアーティストに楽曲提供をする作曲家としても活躍をしてきました。 その数、350曲を超えるのですが、特に今井美樹に提供した「PIECE OF MY WISH」はミリオンセラーを記録する大ヒットになったので皆さんもご存じの1曲だと思います。 お亡くなりになった翌年の2022年4月に発売された『PIECE OF

最強のラテン音楽を求めて|立つんだジョー・アロヨ編|Liner-note

今日はコロンビアの二人の偉人、フルーコとジョー・アロヨをネタにした記事を書きたい。コロンビアサルサを語るなら避けては通れない道だ。…なんだけど御大すぎて、実はあまりなじみがないんだ。だからサクッと紹介しよう。 フルーコ(1951年生まれ)は通り名で、本名は…長いのでやめておこう。キューバに血筋を持ち、若い頃からティンバレス奏者としてキューバ音楽を演奏していた。ファニアに影響を受け、1969年にフルーコ・イ・スス・テソスを結成する。テソは「傑出した」という意味から派生していて

レゲエを通して見える、人々の生活、感情

「夏だレゲエだ」という世間一般が抱く概念はどこから来ているのか。きっとジャマイカが美しいカリブ海に浮かぶ常夏の島国だからなのでしょうが、あの世界的スーパーレジェンド、ボブ・マーリーですら、〜海辺でゆったりのんびり〜といった類の楽曲はほとんど歌っていません。 レゲエの真髄は、心の叫びを表したメッセージ性であると思っています。それはメントからスカが生まれ、ロックステディを経てレゲエとなり、ダブやダンスホールへと発展していった過程で常に重要視されてきた部分であり、社会体制への批評

日米ラップ・コンビネーション

「チーム友達」の特大ヒットで国際的な人気を得ている千葉雄喜が先月アメリカのラッパーMegan Thee Stallionのニューアルバム『MEGAN』収録の「Mamushi」という曲にフィーチャーされ、またしてもムーブメントを起こしている。 「Mamushi」はMegan Thee Stallionの日本語でのフックもトピックであるが、千葉雄喜のラップは中毒性が高く何度も聴きたくなる不思議な魅力があり、彼の特殊性に惹かれる人は世界規模で増えていっているようだ。 千葉雄喜はK

質問 1 - Fusion、Bebop、UK Jazz Dance。それぞれの違いはなんですか?英語圏ではどう区別されていますか?

UK JAZZ DANCEの日本名はビバップ。 今回、名古屋のビバップダンサー Kazumaくんのビバップクラスの生徒さん達から、熱い質問をいただきました。 ちょっと複雑なダンス。ビバップ。 じっくり解説させてもらいたいと思います。 その前に少し自己紹介を〜  失礼します- 初めまして! Masumiと申します。日本で出会ったビバップ( UK JAZZ DANCE )にハマり今年で14年目。2015年2年間ロンドンに滞在後、日英行き来していました。現在、このダンスを

瀬川昌久『ジャズで踊って 舶来音楽芸能史 完全版』

便乗商法、というとあまり良いイメージがありませんが、こうした便乗商法なら大歓迎。NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の放送にあやかって、戦前の日本のポップスの歩みを活写した名著が、新原稿を加えて「完全版」として文庫化されたのですから。 著者の瀬川昌久は1924年生まれ。富士銀行に勤務しながら、戦前のジャズの紹介を積極的に行った人物です。また、1950年代に渡米した際には、カーネギーホールでチャーリー・パーカーやビリー・ホリディの実演に接したこともあるという、まさに“ジャズの

BLANKEY JET CITY 魂の全曲レビュー

BLANKEY JET CITYの全曲レビュー  Red Guitar And The Truth(1991) ファースト・アルバム  伝説の音楽番組「イカ天」でイカ天キングを獲得し、東芝EMIとのメジャー契約を結び、満を辞してリリースされた記念すべき作品(自分が生まれる前の話なのでイカ天はリアルタイムで観たことない、観たかった…)  この後に「BANG!」「C.B.Jim」というブランキーを代表する作品が控えているのでどうしても影が薄くなりがちなアルバムだけど、初期衝動と

【渋谷の歴史 vol.1「レコード屋の街、宇田川町の歴史:刑務所と音楽の交差する歴史」】

【渋谷の歴史 vol.1「レコード屋の街、宇田川町の歴史:刑務所と音楽の交差する歴史」】 *写真は「渋谷の記憶 写真で見る今と昔」から レコード屋を始めて約30年、渋谷に毎日来るようになっても約30年経ちました。 とは言え考えてみると渋谷の地元の繋がりも今までは非常に希薄でした。渋谷という土地に今まで助けられてきたのに何も貢献できていなかったと反省しておりました。 そして渋谷の歴史もほとんど知らなかったので良い機会だと思い色々と調べて見ました。 【宇田川町には刑務所

interview Ambrose Akinmusire:自分自身のブルース、2020年代のブルース

2010年代後半に入ってから、アンブローズ・アキンムシーレの影響力を徐々に感じるようになっていた。数多くのインタビューを行う中で実際に名前を出されることも少なくなかったし、若手の作品を聴いたときにそのサウンドから感じることも何度もあった。日本のジャズミュージシャンと話していても彼の名前が出ることがあった。いつしか確信に変わった。 そもそもアンブローズがリリースする作品がいちいちすごかった。2011年の『When the Heart Emerges Glistening』以降

¥300

interview Kurt Rosenwinkel & Shun Ishiwaka 2016:カート・ローゼンウィンケルと石若駿の対話

00年代以降に書かれたジャズ史に関して言えば、21世紀の最重要人物の中にカート・ローゼンウィンケルの名前があるのは当たり前だろう。むしろその名前がなければ、そのジャズ史は疑わしいと思っていい。 ブラッド・メルドーやマーク・ターナー、ジョシュア・レッドマン、ブライアン・ブレイドらと90~00年代に彼らがもたらした革新の大きさは現在のシーンを見てみれば誰の目にも明らかだ。同世代のイーサン・アイヴァーソンや、その下の世代のロバート・グラスパーなど、スモールズやヴァンガードで彼らの

¥300

Charli xcx: クラブカルチャーの熱気と洗練されたメインストリームのポップミュージックが見事に融合した新作『BRAT』

文:Jun Fukunaga 現代のポップミュージックシーンに新風を吹き込む革新的な作品 これまでに幾度となくポップミュージックの境界線を押し広げ続けてきたCharli xcx(チャーリー・エックス・シー・エックス)。クラブカルチャーの熱気と洗練されたメインストリームのポップミュージックが見事に融合した本作『BRAT』は、現代のポップミュージックシーンに新風を吹き込む革新的な作品に仕上がっている。 Charli xcxの経歴 イギリス出身のCharli xcxは、10

鈴木惣一朗(ワールドスタンダード)が語る"音楽のことはじめ" 「モノ作りの一番面白いところは、センスに対しての光の当て方と落とし方」ーー音楽に目覚めた青春時代から、パイドパイパーハウスとの出会い、デビュー秘話まで

インタビュー・テキスト/山本勇樹(Quiet Corner) ワールドスタンダードが1982年から84年にかけてカセットテープのみで発表した、デビュー前の幻のデモテープ音源3作品が、この度、鈴木惣一朗さんの監修の元、初CD化を果たした。過去、ワールドスタンダードのリリースなど、折に触れて、惣一朗さんにインタビューを行ってきたが、実際、そのデビュー前後について、あまり訊いたことがなかった。一体、どんな青年時代を過ごしたのか。40年という長いキャリアは伊達じゃない。今まで、僕も

翁長裕監督インタビュー:ブランキー・ジェット・シティ『VANISHING POINT』を巡って

 『LAST DANCE』一回限りの配信、アナログ盤発売、サブスクリプションサービス解禁などでにわかに盛り上がるブランキー・ジェット・シティ。 これは解散ツアー(2000年)の模様を追ったドキュメンタリー映画『VANISHING POINT』(2013年公開)の翁長裕監督のインタビューである。映画の劇場用パンフレットなどに一部を使用したが、これはその完全版だ。当初映画の公式Facebookに掲載されたが、今回の一連の再発プロジェクトにあわせ、ここに再掲する。初号試写の