神谷ハヤト

京都在住のレコ屋店員。モダンから現行のジャズと、その周辺を軸に音楽が好きです。ときおりディスクレビューを書いたりしてます。だいたいHachi Record Shop and Barにいます。

神谷ハヤト

京都在住のレコ屋店員。モダンから現行のジャズと、その周辺を軸に音楽が好きです。ときおりディスクレビューを書いたりしてます。だいたいHachi Record Shop and Barにいます。

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Best JAZZ Albums of 2023 with Reviews

大手のレコード屋を退職し、京都に移住してから早いもので二年が経ちそうです。相も変わらずレコード屋(兼ミュージックバー)でバイヤーをしてますので、ぜひ遊びにきてください。 2023年のジャズの年間ベストです。全部で51枚、作品の系統ごとに整理してディスクレビューをつけました。一万字ほどありますが、ある程度まとめて読んだり聴いたりすると面白さが伝わるのかなと思います。2023年のリリースは想像以上に面白い作品ばかりです。 (もし役にたったらぜひ投げ銭お願いします!!書くの疲れ

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    • Best 2023 Jazz Things for SHELTER, bar KUROCHAYA, KYOTO

      京都は伏見区にあるbar黒茶屋は住所非公開かつ営業日不定。当然Google Mapにも載ってない。都会の喧騒でなく、オーバーツーリズム問題が深刻な観光都市の喧騒と切っても切り離せない京都で、「消費されない・見つからない」ある意味安全で居心地のよい空間に良い音楽があるっていうbar黒茶屋のコンセプトを理解する人だけが集まる、まさにシェルターのような場所。 bar 黒茶屋は築100年ほどの京町家をリノベーションした素敵な空間。しつらえられた大きなガラス戸には午前から昼間にかけて

      • 沈潜に寄せた選曲のこと

        “10月の沈潜”というDJイベントで選曲してきました。横浜は老舗のダウンビートのマスターの吉久修平がコロナの酒類提供自粛をふまえ、ノンアルコール(≒コーヒーのみ)でいかに没入できる空間を作れるのかって考えたところから始まったもの。今回はその二回目。前回はアンビとかダウンテンポとかポストクラシカルなんかがよく流れていて、会話もはばかられるほど張り詰めた空気だったことは聞いてました。 沈潜って言葉を辞書で調べると、”心を落ち着けて深く考えること”とか”深く没入すること”って出て

        • Harry Skoler - Living In Sound: The Music of Charles Mingus

          ハリー・スコラーと聞いてピンとくる人は、ジャズを熱心に追っている人でもなかなかいないのではないでしょうか。1956年生まれなのでパット・メセニーやブレッカー・ブラザーズの2人、エリック・マリエンサルといったフュージョン世代の大御所と同世代のクラリネット奏者。リーダー作もマイナーレーベルから出してはいますが、バークリー音大を卒業後にはニューイングランド音楽院のマスタークラスを修了したのちは、エチュード本などを執筆していたり、バークリー音大で教授をやっていて、どちらかと教育者とし

          ¥100
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        Best JAZZ Albums of 2023 with Reviews

          2021年のジャズギター

          メモを見返していたら、2021~2022年にかけて書いていたジャズギターのベストの記事が出てきました。個人的にテンヤワンヤで生活に余裕がなくなっているうちに気づいたら存在すら忘れていたものですが、読み返してみたら2022年の6月の時点で読んでも十分なにかの視点になるのではと思ったので、せっかくなので共有します。今年中にもっとまともな、現行ジャズにつながるジャズギターを総括する何某が公開できたらと思ってますが、これはまた別のお話…。 メインストリーム・コンテンなギター 話題

          ¥100

          2021年のジャズギター

          『AA 50年後のアルバート・アイラー』を読んだ。

          アイラーをはじめフリージャズや前衛音楽など言葉を介さない音楽ジャンルを聴く上でつきまとう”考えるな感じろ”的な雰囲気。それは本書の後藤雅洋さん、村井康司さん、柳樂光隆さん鼎談でも触れたれているように、観念的に語られすぎてきた功罪でもある。本書はそれらを否定するかのように、ジャズという枠組みや国籍を越えてワールド、ヒップホップなど交流がなさそうに見える音楽ジャンルや、小説、映画、ジェンダーやBLMなど様々な視点からアイラーを考察し、縦横の繋がり見出だしパースを描き視点を提供して

          『AA 50年後のアルバート・アイラー』を読んだ。

          レコ屋のジャズ担当が選ぶ、2020年個人的ベスト

          今年で三回目の”レコ屋のジャズ担当が選ぶ個人的ベスト”です。多くの人が既に語っていることですが、コロナが世界を襲い、BLMが世界中に拡散され、ミュージシャンもそれに反映/呼応した作品が目立った2020年。今年もジャズやその周辺の音楽は素晴らしいリリースが多くて選ぶのが大変でしたが50枚に絞りに絞って選びました。雑誌や音楽メディアの年間ベストに数多く載っているベストテン的な作品は意図的に除いてありますので、あくまで”個人的”なベストとして楽しんでもらえればと思います。 今まで

          レコ屋のジャズ担当が選ぶ、2020年個人的ベスト

          2020年代のジャズを聴くための、10年代のジャズギター作品

          2000年代以降のジャズギター・シーンにおいて最大のヒーローといえばカート・ローゼンウィンケル、ということに異論のある人は少ないだろう。高速のリフと、絶妙なバランス感覚でアウト・フレーズを交えた独特の浮遊感のあるフレージングで軽々と小節を飛び越えていくスタイルは、その後に現れたギタリストを”カート以降”か否かで測れるほどの一大センセーションを巻き起こした。しかしそのスタイルも10年代半ばまでに、マイク・モレノ、アダム・ロジャーズ、ラゲ・ルンドらによってほとんど極められたように

          2020年代のジャズを聴くための、10年代のジャズギター作品

          Oded Tzur - Here Be Dragons

          近年、イスラエル出身のミュージシャンが目覚ましい活躍を遂げるている。ベーシストのアヴィシャイ・コーエンの活躍を筆頭に、彼のメンバーであったピアニストのシャイ・マエストロや、ECMから3枚の作品を発表したトランペットのアヴィシャイ・コーエン、ブラジルの伝統音楽であるショーロと接近するクラリネットのアナット・コーエン、そのあとに続く数多くの若手ミュージシャンがジャズ界で活躍しているのは、もはや周知の事実だろう。しかし、中近東と隣接していることや、イスラエル建国のルーツが複雑なだけ

          Oded Tzur - Here Be Dragons

          福盛進也トリオ - For 2 Akis

          Shinya Fukumori Trio / For 2 Akis 大阪府出身、全くと言っていいほど無名なドラマーである福盛進也のECMデビュー作を山本邦山の「銀界」以来の日本産フォーキー・ジャズというと大袈裟だろうか。マンフレート・アイヒャー主催のECMが掲げるテーマの一つに、「”ある地域の音楽"をアイヒャー・プロデュース、ECMというパッケージで世界に届ける」ということがあげられる(『Jazz The New Chapter 2』参照)。和ジャズの名盤:山本邦山による「

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          レコ屋のジャズ担当が選ぶ、2019年個人的ベスト

          某レコード屋のジャズ担当として働く神谷ハヤトと申します。2018年に引き続き2019年の個人的ベストを選びました。今年は最高傑作と迷わず評せるような、ミュージシャン個人のキャリアや方向性、意識している文脈が昇華されている作品が例年よりも多い印象でした。CD屋の一人のスタッフとしては今まで以上にジャンルが入り混じり、なかなか一言では言い表わせない魅力を持っている作品が多いだけに、この素晴らしい作品たちを如何にポップなどでレコメンドするかと言うことに意識的になった一年だったように

          レコ屋のジャズ担当が選ぶ、2019年個人的ベスト

          Camila Meza / Traces

          チリ出身のシンガーソングライター、カミラ・メサ。レベッカ・マーティンやベッカ・スティーヴンス、グレッチェン・パーラートらと並んで、現在誰しもが彼女の声を欲しがるファーストコール・ヴォーカリストといっても過言ではない彼女の米サニーサイドからのデビュー作が今作だ。思い返すと彼女のデビューは、ジャズがアメリカだけの音楽ではなくワールドワイドな言語になり、世界中から様々なミュージシャンが台頭するようになった昨今のジャズシーンを物語るエポックメイキング的な出来事ですらあったように思う。

          Camila Meza / Traces

          Lage lund / Terrible Animals

          Lage lund / Terrible Animals ノルウェー出身のギタリスト、ラゲ・ルンドによる4年ぶりの新作『Terrible Animals』が届いた。前作『Idlewild』までのルンドはには優等生という言葉が似合っていたように思う。名門バークリー音大を卒業後、若手ジャズミュージシャンの登竜門セロニアス・モンク・コンペにて2005年に優勝。流麗で巧みなコードワークとソロからはジム・ホールからパット・メセニー、ピーター・バーンスタインやカート・ローゼンウィンケル

          Lage lund / Terrible Animals

          レコ屋のジャズ担当が選ぶ、2018年個人的ベスト

          未来は全て過去から来ているし、現在の刺激的なものはいつも何らかの形で過去の豊かな歴史を照らしている。(Jazz The New Chapter 4「はじめに」より) こんにちは、初めまして神谷ハヤトです。某レコード屋で働き始めて早3年になります。手に取れる距離に旧譜があって、最新譜もある。趣味趣向の違う他のスタッフがかける音楽に衝撃を受け、多種多様な年代とジャンルを扱う店だからこそ味わえる、現代のボーダレスなジャズ(にかかわらなくても)の面白さと、冒頭のJTNCの柳樂さんの

          レコ屋のジャズ担当が選ぶ、2018年個人的ベスト