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レコ屋のジャズ担当が選ぶ、2018年個人的ベスト

未来は全て過去から来ているし、現在の刺激的なものはいつも何らかの形で過去の豊かな歴史を照らしている。(Jazz The New Chapter 4「はじめに」より)

こんにちは、初めまして神谷ハヤトです。某レコード屋で働き始めて早3年になります。手に取れる距離に旧譜があって、最新譜もある。趣味趣向の違う他のスタッフがかける音楽に衝撃を受け、多種多様な年代とジャンルを扱う店だからこそ味わえる、現代のボーダレスなジャズ(にかかわらなくても)の面白さと、冒頭のJTNCの柳樂さんの言葉の意味を肌で感じていました。

Twitterやブログで音楽のディスクレビューや感想を書き始めたのはちょうどJTNC4が出た頃だったろうか。それが少しは実を結んだのか、今年はJazz The New Chapter 5という公の場で初めてディスクレビューを書く機会に恵まれて、本当に充実した一年間でした。権威ある批評本にディスクレビューを寄せるという経験から、新譜により意識的になった一年でもありました。

少し前置きが長くなってしまいましたが、そんな僕が選ぶ2018年ベストです。今年は本当にいいリリースが多かったので選ぶのが難しかったのですが全部で40タイトルになりました。店舗での仕入れに関わるようになったことや、ストリーミングの台頭により、毎日にように新譜や旧譜がiTunesのライブラリに追加され、もはや音楽を消費していると言っても過言ではない状況になりつつある昨今ですが、そんな中でも特に記憶に焼き付いた作品や、今後も聴き続けるであろう作品を選んだつもりです。

もちろんカマシ・ワシントンや、ロバート・クラスパーのオーガスト・グリーン、クリス・デイヴのドラムヘッズなど、僕が載せずとも誰もが知っていそうな年間ベスト級殿堂入り級作品もありますが、それらは意図的に外す傾向にしていますので、2018年の必聴作品は各メディアのベストを参照ください。それでも前述のようによく聴いた作品であったり、衝撃度が大きかった作品は、まさに”個人的”ベストとして選んでいます。年末年始や日々のお供にぜひ。少しづつ簡単なレビューも加えていけたらと思っております。

Twitterでは日々素晴らしい音楽を紹介してますので、この記事が少しでも役に立ったら是非フォローお願いします。@ya_K_un

※2019/1/23追記
□2019年版を書きました✍🏻

■Aaron Burnett / Anomaly

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■Ambrose Akinmusire / Origami Harvest

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■Antonio Sanchez / Lines In the Sand

アントニオ・サンチェスの最新作にして最高傑作かなと。パット・メセニーとの長年の活動、エレクトロニクスを大胆に導入した「Bad Hombre」や映画のサントラでのソロドラム作など、今までのキャリアを通して培った音楽的要素全てをドラマチックにまとめ上げた総括的作品。

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■Bianca Gismonti / Desvelando Mares

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■Bill Frisell / Music IS

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■Braxton Cook / No Doubt

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■dustlights / In a Stillness

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■Edward Simon / Sorrows & Triumphs

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■Elina Duni / Partir

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■Frode Haltli / Avant Folk

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■Georgia Anne Muldrow / Overload

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■Jakob Bro / Returnings

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■J. LAMOTTA すずめ / Conscious Tree

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■John Raymond & Real Feels / Joy Ride

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■Jonathan Finlayson / 3 Times Round

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※Spotifyは配信なし

■Kiefer / Happysad

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■Kit Downes / Obsidian

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■Kristjan Randalu / Absence

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■marucoporoporo / In her dream

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■Marcus Strickland's Twi-Life / People of the Sun

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■María Grand / Magdalena

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※Spotifyは配信なし

■Marquis Hill / Modern Flows Vol.2

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■Mary Halvorson / Code Girl

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■Matthias Lindermayr / New Born

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■Near East Quartet / Near East Quartet

韓国発、サックス奏者のソン・ソンジェ率いるグループThe Near East QuartetのECMデビュー作。韓国の伝統音楽と現行ジャズをシームレスにつな繋いでいて、その在り方からスタイルは違えどアート・アンサンブル・オブ・シカゴを彷彿したり。ブログでレビューも書いてます。

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■Nik Bärtsch's Ronin / Awase

ベーシストがBjörn MeyerからThomy Jordiに、さらにパーカッション無しでカルテットという一段階小編成に。ミニマルなフレーズを展開していくスタイルは健全だが、きめ細やかにレイヤーを変化させることで一種のエモさも露呈させ、ミニマルミュージック特有の聴き手の感情の変化を超えて訴えかけてくる。シンプルな編成になっても禅ファンクの進化は未だ衰えない。

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■No Tongues / Les voies du Monde

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■Noam Wiesenberg / Roads Diverge

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※Spotifyは配信なし

■Nyeusi & Justin Brown / Nyeusi

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■Otis Sandsjö / Y-OTIS

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■Rafiq Bhatia / Breaking English

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■Rejoicer / Energy Dreams

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■Richard Spaven / Real Time

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■Sam Gendel & Sam Wilkes / Music for Saxofone & Bass Guitar

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■Shai Maestro / The Dream Thief

イスラエル出身の天才ピアニスト:シャイ・マエストロによるドイツの老舗ECMデビュー作。クワイエットな音像をドラマチックに展開・発展させ曲単位でも十二分に抜群の演奏だが、アルバム単位としても一本のシネマでも観たような感覚すらあり、今まで以上にコンセプチュアルな作品。ドラムスが今まで連れ添ったジヴ・ラヴィッツから新鋭のオフリ・ネヘミヤに変わったことによるアンサンブルの風合いの違いにも注目。

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■Shinya Fukumori / For 2 Akis

これが年間ベスト。色々なところで推してきたし、これからも推していく。小椋佳など歌謡曲を取り上げてフォーキーで美しい作品に。ECMに今まで日本人が残してきた作品の中でも、もっとも純粋でストレートに日本を表現しているような。ブログでレビューしてますので見てみてください。

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■Slawek Jaskulke / Komeda Recomposed

※各種サブスク配信なし

■Sly & Robbie + Nils Petter Molvaer + Eivind Aarset + Vladislav Delay / Nordub

レゲエの重鎮スライ&ロビーと、北欧を中心に賑わうフューチャー・ジャズの第一人者である一人ニルス・ペッター・モルヴェルとの共作。南ロンドンのジャズシーンでは、カリブやアフロ的リズムやスピリチュアル・ジャズの要素を現行ジャズやに落とし込み注目を集めているが、この作品でモルヴェルはレジェンダリーなリズムセクションを、もはやサンプリング感覚で扱い新たな表情を露わにする。ブログでも書いてます。

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■Szun Waves / New Hymn To Freedom

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■長谷川白紙 / 草木萌動

年末に滑り込みでベスト。ブレインフィーダー的なトリッピーで歪なトラックながら、メロディやディテールの作り込みが素晴らしくてJ-Popとして抜群の仕上がりに。CEROとは違ったJTNC歌謡とも言えるのでは…!当時19歳という衝撃の若さで、今からフルアルバムが楽しみ。

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