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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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2022年10月の記事一覧

坂本龍一 名曲ベスト10(私選)

※3000字以上の記事です。  お時間のある時に、  お付き合いいただけると嬉しいです。 この手の記事を書く時は、冒頭にアーティストの概要を書くことにしています。ですが、坂本龍一ほど、そのキャリアを短い文でまとめるのが、難しいアーティストもそうそういないでしょうね。 そもそもこれまでにやってきた音楽のジャンルが幅広過ぎるのです。 キャリアのはじめの頃に組んだバンド、YMO では「テクノポップ」を携えて世界を駆け巡りました。 かと思えば、単独で映画『戦場のメリークリスマ

相撲警察と、日本のメタル・ジャーナリズムについて②

私がここに書き散らしている雑文は、基本的に書きたいことを好き勝手に書くのだが、特に、大相撲のことについて書くと全然読まれない傾向があって、ゆえに、昨日から書いているテーマだと、普段から特に感じていない手応えを、笑ってしまうくらいさらに感じない。自分がいろいろ考えていることをアーカイブするのが主目的なので書くけど。 昨日から書いていたのは、簡単に言うと、若い相撲ファンの振る舞いに注意をする「相撲警察」みたいな人が話題になっていて、大相撲ファンクラスタでは「ああ、あの人のことか

interview Shaun Martin - Empire Central:僕らダラスのシーンの合言葉は"Music for Booty&Brain"

スナーキー・パピーの『Empire Central』のテーマのひとつは だった。マイケル・リーグを始めとした主要メンバーはテキサス州のダラスのシーンで腕を磨き、ダラスでこのバンドをスタートさせた。という話はマイケル・リーグに語ってもらったのだが、ここでスナーキー・パピーの中の“ダラスらしさ=Dallas-ness”をもっと深く知りたくなった。そこで今回はスナーキー・パピーの鍵盤奏者ショーン・マーティンにも話を聞くことにした。 スナーキー・パピーのライプを観たことがある人な

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歌と人の近さ~10.22 橋本絵莉子「燃やして探してツアー2022」@名古屋DIAMOND HALL

ソロになって初めて橋本絵莉子を観た。思えばチャットモンチーを最後に見たのが2017年の長崎。もう5年半も前だ。そういうノスタルジックな感慨も少しはあれど、何といっても橋本絵莉子としての楽曲がどれも素晴らしいので早くライブで体感してみたいという期待感でいっぱいだった。 曽根巧(Gt)、村田シゲ(Ba)、恒岡章(Dr)というバンドメンバーを引き連れてオンステージすると、1曲目からガンガンに観客にクラップを煽っていく「脱走」だったことに新鮮味を感じた。チャットモンチーといえば3ピ

水玉消防団ヒストリー第2回 カムラ 1955—1975

取材・構成◎吉岡洋美 協力◎松本路子写真事務所、地引雄一  1976年、京大を休学し「カルチャーに触れたい」一心で上京したカムラが出会った新宿「ホーキ星」。ここで初めて「私が感じていたことをちゃんと話せる」と感激した彼女だが、では、それまでは何を感じて過ごしていたのか。60〜70年代半ば、地元福岡でロックと学生運動に憧れ、京都に進学した多感な少女期を時代とともに振り返ってもらった。 「自分から情報を集めないとロックを聴けなかった」 ——水玉消防団のなかで結成時

#8 R=Rehearsal 十人十色のリハーサルが最高の演奏を生み出す。

リハーサルが始まるまでに。コンサートのスケジュールや演目が決まってから、実際の公演日までの期間は数ヶ月〜数年と、その公演内容によって違います。著名な指揮者や演奏者を海外から招聘する場合や、オペラのような大掛かりな公演の場合は、かなり早くから準備を始めていることも。リハーサルの準備は、まず使用する楽譜の出版社などを指揮者と確認することから始まります。どの楽譜を使うのかが決まると、練習1か月前までには演奏者が閲覧できるよう準備し、並行してオーケストラの配置の確認作業も進められます

2022年、トラップの現在地

近年のトラップについて書きました。記事に登場する曲を中心にしたプレイリストも制作したので、あわせて是非。 派生ジャンルではないトラップの現在今ではすっかりヒップホップのスタンダードとなったトラップ。2000年代にアトランタを中心に発展して2010年代に本格的に全米での浸透を果たしたこのスタイルは、途中で様々なサブジャンルを生み出しながら成長を遂げてきた。2010年代前半にはシカゴで「ドリル」と呼ばれるシーンが盛り上がり、Chief KeefやLil Durkなど多くの才能が

¥100

メタルもたぶん伏流水

タワーレコードのキュレーションサイト〈Mikiki〉で連載を持つようになって、4年ほど経ちます。 毎月のトピックは、こちらから提案することも編集さんに提案してもらうことも両方あるのですが、「メタルを経由してプロのジャズ・ミュージシャンになった方へのインタビュー」を昨年から続けています。これは私の提案で始めました。 私はいつも、そしていまだに、 「メタルを聴いていたように見えない」と言われるのですが、人を見た目で判断するなと言いたい。ガチメタラーだよ!しかも面倒臭めの。 結

interview Àbáse - Laroyê: カンドンブレからバイレファンキまで。ブラジルの今を捉えた音によるドキュメンタリー

Abaseは謎のプロジェクトだった。 僕は2019年にリリースされた『Invocation』で知った。アフロビートへの造詣の深さが聴こえてくるし、演奏もプロダクションもクオリティが高く、すぐに愛聴盤になった。ただ、Abaseを主宰するSzabolcs Bognárの活動拠点がUSでもUKでもなく、ハンガリーってこともあり、彼がどんなミュージシャンなのかの情報はほとんどなく、よくわからないままだった。 2021年には『Laroye』をリリースする。アフロビート系のプロジェク

¥300

チャールズ・ステップニーの未来とJディラの過去

*日本盤CDを聴いて若干の修正を施してあります。 ローファイの裏にある未来  様々な方がすでに書いているように、発掘音源として発売されたチャールズ・ステップニーの「Step on Step」は素晴らしいアルバムだった。聴きこんでもよし、流しっぱにしてBGMにするのもよしで、Spotifyで夜な夜な再生している。  1970年前後の一人多重の宅録なので、4chテープにピンポンしながら形にしたと思われ、決してハイファイではない。だが、インティメイトな質感をもった、チャーミング

屈辱の片隅 -SOPHIAの武道館公演によせて-

 SOPHIAは、思春期の私に屈辱の意味を教えた。  「屈辱の意味を教えた」といっても、その音楽が自分にとって屈辱の作用を及ぼしたということではないし、もちろん当人たちから屈辱的な振る舞いを受けたということでもない。生きている時間のなかで、人は屈辱から何を受け取ることができるかを示したのが、私にとってはSOPHIAというバンドだった。時に人が自らを殺める原因にもなるであろう屈辱の感情が、どれだけ甘美で、どれだけ力強く、どれだけ自分を生かすものになりえるかを、私は彼らの言葉と

¥200

和レゲエ数珠繋ぎ-第28回- 副島 隆

岡山県倉敷市 副島 隆 アーティスト名 古澤良治郎 曲名 カナカナ 発売年 1982年 副島(そえじま)と申します。テクノDJとしての四半世紀のキャリアの傍ら、近年は和モノの7インチの蒐集に明け暮れつつご当地レコードのコレクターとしてのラジオ出演等、いよいよ活動実態の説明も面倒な事務用品販売会社勤務の44歳です。年内の目玉出演は先鋭若手集団(商工会議所青年部)による1000人規模の屋内レイヴ(某アリーナでの市民綱引き大会)での監修(肉体労働)兼DJ(即興音効)です。どうぞ

「ヴィジュアル系は音楽ジャンルじゃない」に俺だけが異を唱えている

Photo by Laika Notebook 「ヴィジュアル系は音楽ジャンルではない」という説があります。 ファンレベルでは共通認識としてあったものの、長くはっきり言語化はされていなかったような気がします。それがメディア上でちょくちょく聞くようになったきっかけは、2017年10月8日に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』の「関ジャム音楽史~ヴィジュアル系編~」での、ゴールデンボンバーの鬼龍院氏による「ヴィジュアル系は音楽ジャンルではなく、文化的要素が強い」発言だと思

¥100

Brian Eno "FOREVERANDEVERNOMORE"

イギリス・メルトン出身のコンポーザー/プロデューサーによる、ソロ名義では5年10ヶ月ぶりとなるフルレンス29作目。 8月の話だが、京都にて開催された BRIAN ENO AMBIENT KYOTO に行ってきた。世界初公開作品を含むいくつかのインスタレーション作品の展示ということで、視覚と聴覚の両面からイーノの創り上げた世界観にどっぷり浸ってきた。近畿圏のみならず日本中の各地からイーノファン/音楽ファンが集まってきたのだろう、会場はなかなかの盛況だったが、暗い照明とディープ