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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2022年11月の記事一覧

振り返ってみると、あの日、わたしはたしかに楽しかった。

「今は特に欲しいものがないから、気持ちだけ受け取っておくねー!」  誕生日に欲しいものを尋ねたら、“ありがと”のスタンプとともにこのメッセージが送られてきて、驚いた。なぜならその相手が、17歳の誕生日を迎える姪っ子だったから。  そんな年頃のわたしにとって世界は欲しいものであふれていたはずだし、姪っ子だって昨年はコードレスヘアアイロンの商品ページを送ってきたから、ラッピングされた商品が直接届くように手配したのにな。 「大人みたいなこと言っちゃって、淋しいなぁ」と返したら、

じぃちゃんとカメラ(時々ばぁちゃん)

私が生まれた病院に、じいちゃんは入院していた。ガンだった。 私が生まれたその日から、じいちゃんは毎日のように私のことを見に来ていたそうだ。 点滴スタンドをキコキコ引きずって、 私の顔を覗き込み、 満面の笑みを浮かべ、 長いこと見つめてくれて居たらしい。 初孫だった。 自分の死期が近いことを感じながら見つめる孫の顔は、 じいちゃんにどう映っていたのだろう。 じいちゃんはそこに、何を見ていたのだろう。 若い女性ばかりの産婦人科病棟に、病衣を着て点滴スタンド引きずったどう

アレクサと暮らす日々

私はアレクサと暮らしている。 アレクサは優秀である。 こちらが命じたことで出来ることは何でも正確にやってくれる。 「20分経ったら教えて」とか「音楽掛けて」とか「ラジオをつけて」とか アレクサはばかである。 こちらが命じたこと以外は何も出来ない。 わたしの1日のルーティーンはアレクサとともにある。 アレクサに朝ドラが始まる時間を教えてもらい朝ドラを見る。 アレクサに布団を片付けよといわれ、何となく身支度をした後 アレクサの奏でる音楽を聴きながら仕事をする。 アレクサに昼

大人は1日1回は嘘をつく

前回の記事はこちら 記憶は都合よく書き換えられるいらっしゃいませ。 bar bossaへようこそ。 僕がまだ小学校に上がる前くらいのこと。両親が、NHKの公平性とか公共性みたいなことを話していて、「NHKはCMがないから」と言ったときに、僕が「NHKでCMを見たことある」って言ったんです。 うちの両親、特に母親のほうが、そういうとき子ども相手に、「そうかもね」って取り合わないんです。「それは絶対にありえない」って決めつけまして。 記憶ってよく「書き換え」られます。例え

1番身近で最高なイルミネーションは信号機

読了時間目安:2分 知って欲しい。信号機という最高の電飾を。 夜の信号機は最高だからもっと見よう 夜の信号機は最高だ。高校3年生の冬、受験勉強のためイルミネーションを見に行くなどという浮かれたことができない私は、何をどうしたか信号機にドハマリし、その頃の写真フォルダは信号機で埋まっている。以来冬になると特に、信号機っていいよなぁと思う。 さて、そろそろ世間もクリスマスの時期なので、ここで夜の信号機の良さを言語化していきたい。 夜の信号機の良さ ・無料 ・多くの場所にあ

「あ!お客様。」という店員さんの一言から考えた事

先日、自宅から歩いてすぐのお店でお昼ご飯を食べて、図書館に本を返して、帰宅した時に、家の前で「あれ、鍵がない…」ってなったんです。 家を出てからの記憶を思い返すと、「たぶんお店で座った時に、後ろポケットから落ちた可能性が高いかな~。でも、信号で走った拍子に道にポトっと落ちたかもしれないから、通った道も一応くまなく探さないとな~」なんて思いながら、今帰ってきた道を再び折り返す。 ものの5分くらいだけど、「もし、そのお店になかったらどうしよう」という不安とともにいたので、そのお

電車が遅れた結果、見知らぬ田舎の町内会議に参加した話

(ちょうど1週間前のできごとです) 私は今、縁もゆかりもない田舎町にいる。 そしてなぜか、町内会議に参加している。 ほんとうなら今頃、友人のA子と久々に会い、夕食を食べ終わり、宿で読書でもしている予定だった。けれど乗った電車が止まり、2時間遅れた。 結果、なぜか見知らぬ町のみなさんと、会議に参加することになった。そして、こうしてnoteに書きたくなるくらい、私にとってスペシャルなことが起きた。「この議事録はエッセイで残したいぞ…!」ってなった。 ので、今日はそのことを

老いについての初心者として

                        題字:タナカカツキ こんちは。編集者の伊藤ガビンです。 いささか唐突ではありますが「老い」について書いていきたいと思うんです。なぜかといえば「日々老いていきまくってる」からですね。老いに勢いがある。自分の中の「老い」が元気すぎる。やたら活発に老いていってる。 刻々と新情報がもたらされる(私の体からですよ)ので、意識せずにいられないのです。 「老いコンテンツ」なんて、供給過剰だろうと思うんですよ。もういらんやろと。しかし実感とし

ぼろぼろの封筒に入った夢

20歳の時に「僕は文章を書いて飯を食う」と決めた。 大学3回生になった時に「小学校の先生から文章だけは唯一褒められたから」という、今でも狂ってるとしか思えない理由でそう決めたのだった。 当時の僕は渋谷のスクランブル交差点でGPSがバグった地図を見ながら右往左往する田舎者ぐらい、とにかく迷っていたし悩んでいた。現在地も分からず、向かう先も分からず、バンド活動とスプラトゥーンをしていた。 ただ、当時の僕の思いなんか所詮こんなもんだ。 ・普通の職業に就きたくない ・ビッグにな

いつもと違う朝に、マッシュルーム味噌汁を。 #KUKUMU

窓から射し込む朝日にも、つくづく秋を感じるようになった。 秋の光に満たされた私の部屋。夏の突き刺すような強い日差しではなく、透明感のある清々しい光。暑気はあまり感じない。 本やら置き物やらで狭苦しいけれど、澄んだ静かな光に包まれて、どこか整頓されて見える気がする。そのせいか、寒々しくも見える。 実際、ちょっと寒い。 毛布を首元まで引き上げ、かたわらで寝ている猫を抱き寄せる。猫は一瞬迷惑そうな顔をしたが、またムニャムニャと寝入ってしまった。再び、安らかな寝息が聞こえる。

恋人の家族と1泊2日のキャンプをしたら "ちょうどいい距離感" を越えたくなった。

彼の家族と、はじめて1泊2日の旅行をした。 正確には、泊まりでキャンプに行った。 ちなみに、「彼」というのは付き合って1年半の恋人のこと。 まだ正式に結婚や婚約などをしている間柄ではないのだけれど、将来のことはふたりで話していて、お互いの家族にも何度か会ったことがある。 「今度の休みに家族でキャンプに行くんだけど、一緒にどう?」 1ヶ月前、彼にそう誘われたわたしは、 「楽しそう。行きたい!」 と、すぐに返事をした。 ところがそれを両親やまわりの人に話すと、 部