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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2021年4月の記事一覧

紅茶のはなし

もっぱら私はコーヒー派。 朝の一杯に始まり、甘いお菓子のお供に、一息つきたいときに、、そうは言っても一日3杯程度だけど。 自宅ではカプセル式のコーヒーメーカーを使っているのだが、このご時世リモートワークで夫婦ともに自宅にいる時間が増え、これではランニングコストが馬鹿にならないと、朝の一杯だけはコーヒーメーカーで淹れ、あとはインスタントコーヒーで済ますようになった。ケチな、、もとい堅実な夫婦なのだ。 紅茶も好きだし、常備はしているけど、なんとなくいつもコーヒー。 だった

けっしてモノクロなんかじゃなかった

一枚の白黒写真があった。 柔らかそうな革張りのソファで鉛筆片手に足を組み、何かを執筆している男性と、彼から少し離れてちょこんとソファの上でお座りするポメラニアン。 日常の何気なく愛しい瞬間が切り取られた、とても素敵な写真だ。 その写真が貼られたアルバムからふと顔を上げると、写真の中の男性がシワが増え、髪が薄くなり、カラーになった状態で、孫の私をにっこりと見つめている。 写真は1970年代に撮られたものだから、およそ50年前。 半世紀の年月を経て私の目に届いた祖父は、モ

叱れないのはやさしさなんかじゃなくて

ありがたいことに、私のことをいたく尊敬してくれている後輩がいる。 中学時代の吹奏楽部の後輩なのだが、名前はかおりちゃん(仮)という。 地元を離れてしまったから中学の後輩なんて近況をほとんど知らないけれど、かおりちゃんは今でもやり取りをする数少ない後輩のうちの一人だ。 かおりちゃんが私のことをここまで尊敬してくれるようになったのには、あるきっかけがある。 中学生の頃。ある日、かおりちゃんともう一人別のパートの子が部活をサボっていたという情報を耳にした。パートリーダーだった

蕾に気付いた娘たち

#スポーツがくれたもの 戸惑い 長女の卒園式、そして入学式。指折り数えて待った節目は、桜前線とともに颯爽と過ぎ去った。そんな晴れやかな卒業の裏で、予期せぬもう一つの卒業が突風のように訪れた。  3月下旬のことだった。夕飯前、うたた寝をしている娘たちと、料理に蓋をし、出来上がりを待つ妻。私はスーツから部屋着に着替え、手持ち無沙汰にスマホを眺めていた。静寂の中、唯一しゃべり続けていたテレビのアナウンサーが「大手スポーツクラブ大量閉店」というニュースを読み上げた。  閉店、廃

なんでもない日を特別にしてくれる器、やちむんの話。

うっかりケーキ屋さんの前を通ってしまった。 キラキラと輝くケーキと目が合ってしまった。 ただ、それだけ。 なんの記念日でもないけど、ケーキに《美味しいよ。おいでおいで!》と呼ばれたら、買わずに素通りするなんて失礼なことできないから。 暑くなってきたので、マンゴームースを連れて帰ることにしました。 家に着くなり、そわそわとケーキを食べる準備。 お気に入りのお皿を出してきます。 それは、沖縄で一目惚れしたやちむん。 まるで沖縄の海のような美しい青色のドット柄が愛らし

「何でもない文字を綴る」は人生の余白を愛するためのおまじない

自分の心の健康をはかる方法が何個かある。 ひとつめは、聞いたことのないあたらしい音楽を手にとること ふたつめは、外をぼーっと見つめる時間を持てること みっつめは、何でもない文字を綴ること この3つのどれかひとつでも出来ていれば、わたしの心は生きている。 全部できていればすこぶる健康。 ひとつも出来なくなったら赤信号。 「心が健康」と言ってしまうと=病気のように捉えられてしまうかもしれないけれど、決してそういう重大な状態を指しているわけではなくって、 自分が心地よくこの世

日比谷の書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――「日比谷で本を売っている。〔ビールと生きがい〕」新井見枝香

※当記事はエッセイ連載の第16回です。第1回から読む方はこちらです。  職場の仲間と、仕事終わりにクラフトビールを飲みに行こうと約束してから、数か月が経った。飲食店の時短営業が解除されないと、我々はラストオーダーに間に合わない。ぎりぎり閉店前に駆け込んだとて、アルコールの提供が終わってからでは、揚げたての唐揚げもむなしいだけである。  久しぶりに何の予定もない休日、溜まっていた洗濯物を片付け、部屋を掃除したところで、散歩に出掛けた。明るいうちに歩く地元は新鮮だ。古い蕎麦屋の

玄鳥至

「あーーー、腰が…」 去っていくバスの駆動音を聞きながらキャリーケースから手を離し、ぐっと両手を空に向かって伸ばす。 鈍い音が節々でなっているのを無視して脱力すれば、先ほどよりかは幾分軽くなった体。 首を回すついでに辺りを窺うが、時が止まっているのではないかと思う程に記憶の中の風景と相違ない。 錆ついた看板の精米機、色あせたポスターの張られた美容室、崩れないのが不思議なほど朽ちている野菜の無人販売所。 砂利道にキャリーの足をとられながら何とか歩き続けていると、ようやく実

怪我した指に息子が貼ってくれたもの

木曜・ 朝 息子の幼稚園の支度がスムーズに進んだ。 家を出る時間まで少し余裕がある朝になった。 何気なく自分の指を見たら、いつの間にか右手の人差し指の側面に傷があった。 血が少し滲んでいて、割と深く切れていた。 それまでなんともなかったのに、傷があるなと認識したら急にズキズキと痛みだした。 「どこで怪我したんだろ・・」 そう私が呟くと、年中の息子が遊んでいた恐竜のおもちゃを投げ捨て、私に駆け寄る。 「見せて!!ママ血が出てる!!絆創膏持ってくるね!!」 息子は絆創

大人スイッチをOFFにして、息子と過ごした休日は楽しかった!

先週の土曜日は、1日中雨。 車を持っていないわが家では、必然的にお家を中心に過ごすことになる。 晴れの日は、近所の公園に行くとだいたい誰かがいて一緒に遊んだり、お昼ごはんを買って自転車でちょっぴり遠出したりして、なんだかんだあっという間に1日が過ぎるけれど 雨の日、家で息子と2人きりで過ごす1日は、時間がたつのがおそいおそい。 「雨の日 子供 過ごし方」 Google先生に答えを求め、ネットサーフィンをしていたとき、「シュタイナー教育」というワードが気になって、ここ

就活、いったん疲れた

新着メールの送り主が見えて、一瞬ためらってからフォルダを開く。 株式会社まるまる。 誠に、まで見えたら、残念ではございますが。 きゅうっと胸のあたりが縮んで、どーんと何かを突きつけられた気持ちになる。 こうして、その後の長文は企業の誠意か精一杯の好感度なのか、社会の中できめられた型でいわゆるお祈りをされる。 もちろん、もう今年度の選考は受けないでね、って書いてある。 こんなやり取りを想定して、予め予防線を張っておくことはできるけれど、それでも何かしら自分に残った重

ピアノの先生との思い出

木曜日が好きになれない。 木曜日は「ピアノ教室にいく日」だったからである。 幼稚園のときに友達が習っていたから真似してやりたいと自分で言い出して習わせてもらっていたくせに、私はちっともピアノに向いていなかった。 コツコツ練習する、とか、譜面通りに弾く、とかが元来苦手な子どもだったのだ。 しかしピアノという楽器は好きだったので、アニメの曲を適当に弾いたり、課題の曲を好きに変えたりして弾いて(そのくせのだめカンタービレのような天才というわけでは全くなく)、よく親に叱られた。

世界からスポーツが消えたなら

ちょっと前まで、世界ってこのままずっと続いていくものだと思ってた。 だけれど、 今こんな世界の変化を目の当たりにしてると、この先どんなことだって起こり得るって考えてしまう。 だから、もしかしたらこの世界からスポーツが消えてしまう、なんてこともあるかもしれない。 実際8年前に、東京オリンピックが延期されるなんて誰が想像しただろう。 有名な占い師だって、医学者だって、感染学者だって、歴史学者だって、そんなこと言ってなかったじゃないか。 だからスポーツが無い世界だって、もし

カカオ ≠ チョコレート?

カカオ = チョコレート。 わたしたちにとって、周知の方程式である。 しかし、カカオの魅力はそれだけではないようだ。 Made in Lithuania先日、京都にある+Chocolatに訪れた。 ここに訪れたきっかけは、わたしの大好きなビーントゥバーチョコレートショップであるgreen bean to bar CHOCOLATEのスタッフさんからご紹介いただいたからである。 入店して目に飛び込んできたのは、多種多彩なビーントゥバーチョコレートである。 そのほとんどは