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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2018年2月の記事一覧

#1.今日の盗み聞き。

@お昼まえの渋谷発・新橋行きの都バス。六本木通りの坂を登ってまた降りて、西麻布から老婦人が乗ってきた。80代はじめくらいだろうか。 西麻布が霞町だった頃からお住まいなのか、もの馴れているけれど、足どりが心もとない。毛糸の帽子の頭が小さく、革の手袋をはめた手が小さく、すべてが小さい。吊り革につかまるのも、大変そうだ。 車内を見渡す。 路線バスの定員は70名、座席数25だというけれど、人気の前方席を占めるのは、困ったことにオール老人。席を譲るべき若者&現役世代は、わたしもふ

コメントウザ男に菩薩リプライ

コメントウザ男に対する菩薩リプライに、私は毎日目を見張っている。 一から説明します。もうだいぶ下火になってきたなという感のあるFacebook。それでも、今でも毎日毎日飽きもせず頻繁に投稿する友人というのはいるもので、そのごく一部の友人の日常に、意図せずやたらと詳しくなってしまうという感じ。 友人A子は「ここの店のパンケーキ、ふわっふわ!」「この映画、泣けた~!」「ディズニーランド、超楽しい~!」などという感想を、工夫なく頻繁アップするクチだ。私はA子自身に好感を持ってい

私の役に立った結婚に関する14のアドバイス

 旦那とは出会ってから7年くらい、結婚して3年半くらい経つ。  私は恋愛経験がものすごく少なく、初めて付き合ったのが旦那で、旦那にとっても私が初めての彼女だった。まあ、そんなわけで私は付き合った後も「で、付き合ったけど何をすればいいんだ?ゆくゆくは結婚したい気持ちもあるけど、どうやって相手を見定めるんだ?」というような初歩的な疑問がたくさんあった。  そんな感じだったので、私は自分の親や兄弟、出会う既婚者たちに片っ端から「どうしてこの人と結婚しようと思ったの?どうしたら夫

スゴイ編集者ほど「言語化力」が高い

雑誌の企画で『紋切型社会』の著者・武田砂鉄さんに「優秀な編集者の条件」という原稿を依頼して書いてもらったことがある。 武田さんにお願いしたのは、編集者としても書き手としても、紙とWebとを両方経験していて、誰よりも辛辣に語ってもらえると思ったから。ただその結果として「優秀な編集者の条件なんてない」と原稿で一蹴されてしまった。 言われてみてはじめて、自分もそんな「条件」のようなものがあったら逆につまらないだろうなと気づいた。決まりきった条件なんてないからこそ、編集者としての

1日3回エゴサをしてた私が、ある日エゴサをやめてみたら幸せになった話

椎木里佳です。 初回のnoteは見ていただけましたでしょうか。 https://note.mu/rikashiiki/n/n04b3784288c3 ありがたいことに、60000人以上の方に見ていただき、noteフォロワーさんも700人を超えました!! すごいね、noteって。正直あなどってました もちろん嬉しかったので、初回坊主にはならず、2回め(今回)も書こうと思う!がむばる! わたしは会社を始めてちょっとしてから、高校1年(15歳)でTwitterを始めても

映画「夜間もやってる保育園」のこと

初出2017「現代を生きるための映像ガイド」青土社 「壁のあちら側」  独り身だった時期の私にとって、「子育て」というものは、興味すらないどころか、存在すら気にしたことのない話題だった。  けれど、数年前に子どもが産まれ、否応なしに自分もこの問題に当事者としてコミットせざるをえなくなってくると、そこで起きているあまりに過酷な現実に、絶望を通り越して放心するしかない状態に陥った。  詳しくは書かない。ここでそれがどれだけ大変かを書いても、子どもを持っていない読者(あるい

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『バーフバリ 王の凱旋』の感想を外国人の食レポ風に書く

■日本:34歳男性 評価:★★★★★ 僕はインド映画にあんまり興味がなかった。『バーフバリ 王の凱旋』を観るまではね。 この映画がはじまってから最初の五分で、ああ、僕の人生はここから変わってしまうんだということを、即座に悟った。そのくらい素晴らしい映画だった。 映画が終わってしまったとき、僕が何をしたか? 立て続けに『バーフバリ 伝説誕生』も観て、気付けば腕立てと腹筋を繰り返し、都内でまだかかっている上映館をネット検索しはじめていたんだ。自分でも驚いたよ。「ワォ!こんな

音楽とお金とファン

岡崎体育くんのファンクラブ運営を巡る騒動(めんどくさいので、ここには書きません興味ある方はググって調べてください)を横目に見ながら、コレはくるりのファンクラブの今後のあり方のことも、いろいろ考えないとなぁと思う次第。 岡崎体育くんは、ストイックな宅録青年かつ優れたアイデアマン、そして良い意味で目立ちたがりで、頭もいいので、虎視眈々と色んなことを狙ってると思う。そして誰もやってないことで何かをひっくり返すことにカタルシスを感じているはずだ。それでも、ただ音楽作ることが好きなん

オンラインとオフラインにおける「自分」の多面性を考える

今日、長年私をオフラインで知っている友人から「ごめん。もう無理」というLINEが届いた。 そのメッセージに続いたのは「Twitterとか全部フォロー外させてもらった。もうこれ以上あやかのあやにーの部分は見たくない。」と。 その友人は私が長く仲良くしていた友達だったし、たぶんSNSでも当初は色々リプライをもらって返信したりもしていたと思う。 気が付いたら、確かに私もリプライしなくなったし、向こうからも何かアクションを起こされることはなくなっていた。 距離を取りたいという

鞭には飴を、叱咤には激励も

5歳からピアノとエレクトーンを習っていた。 8歳の年に引っ越したあとも教室を変えて続けてきたのだけれど、この新しい先生が本当に怖かった。 おそらく「才能」というものを考えるようになったのは、この先生とのレッスンがきっかけだ。何人もで演奏をするアンサンブルのレッスンにも通っていたため、ほかの子の演奏を聴く機会が常にあり、それを指導する先生の言動で自分の力とほかの子の力とを比べやすかったのだ。 飴と鞭でいうなれば、ほとんどが鞭の先生だった。飴をくれるのは、本番の直前。レッス

実在しないそいつへの怒り

幻の存在に対して怒っている人を見たことがある。 専門学生の頃、一学年下に40代の男性がいた。二十歳くらいの学生たちの中で浮くわけでも馴染みすぎるわけでもなく、誰に対しても丁寧に接する人だった。腰が低く、笑顔が柔らかかった。 ある飲み会で、その人が突然「皆さん、国民年金は払っていますか?」と言った。 その場には私を含めて10人ほどの若者がいた。私が通っていた学校は世の中のことを何も知らないイノセント過ぎる生徒が多く、みんなの回答は「学生納付特例を使ってる」「親が払ってる」

粉飾したい

美容整形をすると、その後きれいな人を見る度に、 「あの人も整形では?」 「この人もそうなのでは??」 と疑うようになるらしい。 なかなか示唆に富んだ話だと思う。 私はよく、人に対して「この人、”粉飾さん”では?」と疑うという悪癖がある。 ”粉飾さん”って別に一般的な言葉ではなく、私が勝手に言ってるだけなんですが。 要するに、”すごいことをやっている風”な発言をして、実際よりも自分を大きく見せたい人のことです。 「それが気になるってことは、自分にもそういうとこがあるってこと

編集は「人を信じる」仕事

近年で言えば、2014年は2人、2015年は4人、2016年は2人だった。 何の話かというと、私を担当している編集さんの中で、退職した人の数だ。ただし、その退職は私が原因ではなく(もしかしたらそうかもしれないけど)、「前々から辞めたかったので」「ほかの出版社に転職」といった理由からだ。 こんなことが続くと、「私の担当になる編集さんは退職してしまう」というジンクスがあるのではないか、と思ってしまう。 だって、はじめて担当になった編集さんからも、雑談の合間に「実は僕、会社辞

交差することのない「彼」の人生に思いを馳せて

久しぶりに前の住人宛の郵便物が届いた。 半年ほど前にも見たことがある宛名だ。 きっと直前の住人宛なのだろう。 姓名でどんな人物なのか想像してみる。 男性のようだ。 年齢は20-30代くらいだろうか。 それから郵便物は「ドメイン契約更新のご案内」とある。 自分で事業をしている人だろうか。 彼はこの部屋でどのような生活をしていたのだろうか。 私のように家でのんびり過ごしていたのだろうか。 それとも寝に帰るだけの生活だったのだろうか。 はたまたこの部屋で仕事をしていてほとんど