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公式コンテストで3回受賞した山羊メイルさんがnoteで見つけた、ライバル、仲間、夢

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回はエッセイと小説を書く山羊メイルさんにお話を聞きました。

新潟県三条市で会社員として働き、妻と息子と暮らす山羊さん。noteでは、これまでに3つの公式コンテスト、3つの私設コンテストで受賞しています。

過去といまを行き来し豊かな筆致でつづられる作品に、懐かしい記憶の扉が開いていきます。

noteはコンテストがあるから、創作をはじめ、続けやすい

それまで一切、日記さえも、自発的な創作活動はしてこなかったという山羊さんが、noteをはじめたのは2020年5月。きっかけは、作家の岸田奈美さんが主催した文章コンテスト「キナリ杯」でした。

「はじめてエッセイを書いてキナリ杯に応募した理由は、賞金の10万円がほしかった。ただそれだけ。お題である『おもしろい文章』が、なぜか書ける!と思ったんですよ。でも、1本目に書いたnote『コンビニとエロ本と裁量権』はいま振り返ると、薄っぺらくておもしろくない。懲りずに書いた2本目『この歌はそんな歌なんだ』も、ただ起きたことをだら〜っと書いただけでした」

「スキ」の反応も少なく手応えがなくても、次を書いてみようと思ったのは、noteでほかにもコンテストが開催されていたから。

「noteはコンテストがあってお題があるから、創作をはじめやすいし続けやすいんですよね。ASICSとnoteがコラボした『#応援したいスポーツ』投稿コンテストは、ことあるごとに友だちに話していたラグビーの話がテーマとして頭に浮かんだので書ける!と思った。次こそ賞を獲りたいと思ったので、よく読まれているひとたちのnoteや本を読んで研究しましたね」

書き方の着想を得たのは、昔から大好きだったという電通・TUGBOATのクリエイティブディレクター・岡康道さんのことば。「『場違い』と『アイデア』は一直線上にある」ーー。

「小説やエッセイも同じように『場違い』が大事なんじゃないかって。そこから1つの作品に異なる時間軸や場所を入れて、場面を切り替えるようにしたんです。これなら平坦な日常をおくる中年男性の僕でも『おもしろい文章』が書ける、と手応えを感じました」

そうして3本目に書いたエッセイは見事、「#応援したいスポーツ」投稿コンテストで篠山竜青選手に選ばれ、ASICS賞を受賞。山羊さんはまたコンテストに応募するためエッセイを書き続けます。

ライバルでもあり仲間。受賞をきっかけに広がった交友関係

4本目に書いたエッセイは、ひふみとnoteがコラボした「#ゆたかさって何だろう」投稿コンテストで準グランプリに。受賞をきっかけに、新たなつながりができたそう。

「投稿期間中にひふみのnoteアカウントで、投稿作品をピックアップして記事にしていたんです。そこで、マスダヒロシさんの『撮りがいのあるギャルに感銘をうけた日』を読んで。振袖のギャルとおじいさんというとんでもない『場違い』が発生していて、負ける、とスキはしなかったんですよ(笑)。そしたらマスダさんから受賞発表後に連絡をいただいて、彼も僕のnoteに同じようにスキもしなかったって。そこから交流が生まれました」

このエッセイは、note公式コンテストの受賞前に、illy/入谷 聡さんが独自に主催する「#磨け感情解像度」コンテストにて、協力者・サトウカエデさんが選ぶ特別枠、芽生え賞を受賞。

「この賞をきっかけに、noteを書いているひとたちと広く交流がはじまって、noteとの向き合い方も変わりました。自己満足じゃなくてひとに読んでもらえる文章を書いていこう、と。読んでくれるひとたちのことをより意識するようになりましたね。そこからいまがあるので、入谷さんとサトウさんには足を向けて寝られないです。サトウさんのコンテスト受賞作『8分間のサマー・トレイン #あの夏に乾杯』を読んで、僕も賞をとれるようなものを書きたいって思いましたしね」

その後、目標通り、KIRINとnoteがコラボした「#ここで飲むしあわせ」投稿コンテストで審査員特別賞を受賞。

「KIRINの賞はものすっごいほしかった。過去3回の受賞作はこれがタダで読めるのか!と思うほどいい作品が多かったので。3回目の『#また乾杯しよう』投稿コンテストでは『夜空の下には僕らしかいなかった』というエッセイで応募したんですが、乾杯したのが水だったから、入谷さんに『コンテスト史上最安値』と言われて(笑)。お酒を入れて『#ここで飲むしあわせ』投稿コンテストに向けて書いたのが『28歳』。自分でもよく書けたと思う。やっぱり賞を狙うなら主催者の意図をある程度汲んで書かないとダメですね」

noteを通してつながったひとたちは、おもしろい作品を書くライバルであり仲間。

「ひとりでただただ創作を続けるのは難しい。だから、コンテスト応募者の作品を読んで負けるもんか!と思ったり、Twitterでnoteの感想を伝え合ったりできるのは励みになります」

平坦な日常が豊かになって「今日も1日生き延びられる」

山羊さんはnoteをはじめて「平坦な毎日が豊かになった」と話します。

「家族もいて家と会社を往復する49歳の中年男性の日常って、どうしても平坦にならざるを得ないんですよ。でもいまは、noteを開くだけで、自主的な創作ができて、好きなひとたちとつながれる。この歳で凡庸な日々に変化があるなんて思ってもみませんでした。

毎日、20分から1時間くらいは必ず、PCの前に座ってnoteを書くようにしているんです。bar bossaの林伸次さんに毎日書きなさいってアドバイスをもらったので。毎日向き合っていると、なにを書こうか、日常の中で題材を拾おうとする。書く対象を見つけ、深く考えるようになって、物事や風景の輪郭がはっきり見えるようになりました」

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書き上げたnoteに対する反応も、日常を彩るひとつの要素になっているそう。

「一生懸命書いたものでもスキが少ないnoteは、後から読み返してみるとイマイチ。逆に多いものは自分でもおもしろいんですよ。みなさん読む目をもっていらっしゃるから、スキやコメントをもらえるのはすごく嬉しい。スキをもらえたら拝んでいます。ちなみに僕のnoteは最初に妻が読むんですよ。妻の『おもしろかった』の声のトーンや表情でも、出来がわかっちゃいますね」

心を揺らし日常を豊かにするのは「書く」ことだけではありません。

「書くための自分の足腰を鍛えるためにも、小説をはじめとした本やほかの方のnoteを読む機会が増えました。noteにも好きな書き手が何人もいます。好きなnoteをシェアできるのも喜びの一つ。平坦で凡庸な毎日はたのしいことばかりじゃなく、つらいこともあるんですが、寝る前にすばらしい作品にたまたま出会うことができたら、その日は生き延びることができる。今日も明日も明後日も生き延びましょう。そんな気持ちで僕は、誰かのnoteを共有し、自分でもnoteを書いています」

49歳から新たに見つけた夢の途中

現在、エッセイから小説に軸足を移して、10万字ほどの長編小説の執筆にも挑戦しているという山羊さん。

「エッセイで僕の日常を切り取ってもおもしろくないのでね。小説は"嘘”が書けるから。僕が書きたいのは一貫してシステムと個人の話なんですよ。最初にテーマや設定を決めて、プロットを考えても、向こうからくるものをどんどん書いていくと、全然違う結末になる。自分でも想像していなかった作品になるから、書いていてもおもしろい。noteで月2本は短編を投稿したいと思っていて。短編でも、書き上げてから推敲を何度もしています。最近書いた記事『新宿の雪』は、1本完成させるのに15時間かかりました。長編は1年くらいかけて完成させたいと思っています」

そんな山羊さんにはいま、新たに見つけた夢があります。

「恥ずかしい話なんですけど、本を出したい。小説で。そして、noteで生まれてnoteで育ったnote発の作家だと書籍の帯に書きたい。昔から本を読むことは好きだったけど、自分で創作をしたことは一度もなかったので、作家はただの憧れで。サッカーをやっていないのにストライカーになりたい、というくらい遠い存在でした。でもnoteで創作をはじめて、新たな夢を見られるようになった。noteのおかげで49歳から人生に広がりができました。だから感謝しています。まずは長編小説を書き上げて、これからもnoteで創作を続けていきます」

■noteクリエイターファイル
山羊メイル

新潟三条/Keep yourself alive /ロケンロー!/医療法人総務部勤務/note公式コンテストでいくつか賞を頂きました。ありがとう→https://note.com/yagicowcow/n/n72dabdd31d06
note:@yagicowcow
Twitter:@yagicowcow

text by 徳 瑠里香

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