コーヒー好きが経営するコーヒー屋やカフェはうまくいくか?
今回のテーマは、タイトルの通り。
「コーヒー好きが経営するコーヒー屋はうまくいくか?」です。
これ、わたしが結論を出すまでもなく、皆さんがおそらく同じ答えを出すでしょう。「そんなわけはない」と。
当然、コーヒー好きがコーヒー屋をやったからと言って儲かるわけではありません。
独りよがりな味わいになるかもしれませんし、コーヒーマニアとしての知識とコーヒー事業家としての知識が一致するとは限りません。
私自身、10年近く、元コーヒー屋かつ、現コーヒー屋のコンサルをやらせていただいていますが、コーヒーはどちらかと言うと苦手です。
でも、いざ自分がカフェ開業をしようとすると、この罠にハマってしまうオーナーさんは数多くいらっしゃいます。
コーヒー好きな人が決めたんだから間違いない?
まず、よくあるパターンが「私は普段コーヒーを飲まないんです。だから、コーヒー好きな人が知人にいるので、その人に豆を選んでもらい、価格も決めました」というケース。
冒頭でも言いましたが、私自身コーヒーが苦手なので、お気持ちはすごく分かります。
一方で、その"コーヒー好き"がどんな人かが問題です。
たとえば、以前某法人様の案件であったケース。
「コーヒー1杯500円~なんて高すぎる!コンビニコーヒーが1杯100円(当時)の時代に、500円なんて誰も飲みに来ないのではないか?値下げをして回転率を上げるべき!」という声が"コーヒー好き"の上司から上がり、「値下げをすべきでしょうか?」という担当者からのご相談がありました。
結論から言えば、当時は値下げをおすすめしませんでした。
理由は立地と、席数の少なさから、回転率を上げられるほど集客が見込めないため、少ない人数で単価を上げていく戦略のほうが向いていると考えたからです。
そして、当時の担当者様にお話ししたのが、「その方は普段カフェや喫茶店でイートインでコーヒーを飲まれる方でしょうか?もしそうであれば、どのぐらいの単価のお店に行かれる方ですか?」というもの。
すると後日分かったのが、コーヒーはほとんどコンビニコーヒーで、たまにコメダなどのチェーン店に行く…といった程度のものでした。
ここで言いたいのは、個人の嗜好の良しあしではありません。
コンビニコーヒー好きだろうが缶コーヒー好きだろうが、チェーン店のコーヒーしか飲まない方だろうが、立派に"コーヒー好き"です。
ですが、その方個人の感覚がマーケットと合っているかはまったく別のお話しというだけなのです。
コーヒーの相場はきちんと平均値を参考にする
下記の記事でも書いていますが、コーヒーの相場は年々上がり続けています。
2023年9月時点ですら、コーヒー1杯あたりの全国平均価格は462円です。
これはチェーン店の価格も含んでいるので、少なくとも、個人店や中小企業が運営する規模のコーヒー屋なら、それ以上の単価に値付けすべきです。
そしてこの話のキモは、こういった価格はたとえ"コーヒー嫌い"であっても自分で調べれば分かるということ。
個人のコーヒー好きの方の意見よりもよほど"正しい"結論を導けるでしょう。
ちなみに、今回は数値で示しやすいのでコーヒーの価格を例にしましたが、コーヒーの味わいに関しても似たような話はたくさんあります。
1人の"コーヒー好き"の意見を重視するのは構いませんが、その人の感覚が本当にマーケットに合っているものかはきちんと精査したほうがいいでしょう。
コーヒー好きの方は"コーヒーの力"を過信しがち
また少し話は変わって、常々思うことのひとつが、コーヒー好きの方はコーヒーの力を過信しがちです。
パッケージが古臭かったり、集客なんて"そこそこ"でも、「コーヒーが美味しければきちんとお客さんがついてくれる」と夢を描いている方が多いです。
これは、私が尊敬するマンガのキャラクターのセリフですが、「あらゆる商品の価値は、品質、サービス、コストパフォマンス、ブランド・・・といった多様な要素の総和で決まる。いいものなら売れるなどというナイーヴな考え方は捨てろ」という名言があります。
仮に"万人が美味しいと評価するコーヒー"なんて夢みたいなものがあるとしたら、そのコーヒーは確かに一度飲んだ人のリピート率を上げてくれるかもしれません。
でも、そもそも飲んでもらうための努力(一見さんを呼ぶ集客)は絶対必須ですし、コーヒーの味を下回ってサービスやコスパなどの満足度が低ければ、リピートにはつながりません。
特に、一見さんを呼ぶための努力は必須と言えるでしょう。
コーヒーの力の過信は禁物です。
コーヒー好きの方のよくある失敗パターンは2つ
ここまでのことをまとめると、コーヒー好きの方、コーヒー好きの方の意見を参考にした店舗のよくある失敗パターンは2つです。
1人のコーヒー好きの方の意見を強く信じすぎ、他店の味や価格帯、雰囲気のリサーチなどをしない
コーヒー単体の力を信じすぎている
こういうことを言うと、コーヒー好きのオーナー様のことを批判しているように見えるかもしれませんが、そうではありません。
"コーヒー好き"と"コーヒー屋の経営者"を両立させている方もたくさんいらっしゃいます。
だからと言って、「コーヒー好きがコーヒー事業でうまくいくか」とはまったく別物なのです。
コーヒー嫌いであっても、カフェをうまく経営している方だってたくさんいらっしゃいます。
「コーヒー好きのオーナー様」は一度コーヒーから距離を置いてみてください。
また、「コーヒー好きのお客さんや上司から意見を言われたオーナー様」は本当にそれが客観的な意見かを調べてみるといいかもしれませんね。
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名古屋市千種区でコーヒーセミナー運営、コーヒー豆・器具の卸売り、直営カフェを運営するnote合同会社の公式コラムです。