【読書記録】 「流浪の月」
ー 愛ではない。けれどそばにいたい。ー
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「流浪の月」
著者 凪良ゆう さん
創元文芸文庫
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私は、きっとこの2人を、愛と呼ぶのだと思う。
形だけの恋人同士の人はいる。
触られたくない、もういつ離れてもいい、どうでもいい、愛なんかない。
血は繋がっているけど、それだけで、愛なんてない親子もいる。
戸籍上は夫婦だけど、愛と呼ぶほどの想いを相手に抱いていない。
こんな形のつながりは、きっとこの世の中に溢れているのだろう。
この作品に登場する2人の関係に、恋人とか家族という名前はなかったけれど、それでも、彼らには愛があったんだと思う。
離れていても、幸せでいてほしいと願うこと。
ときどきインターネットで調べたりすること。
会いたくてたまらなくなること。
できるだけ近くに、そばにいたいと願うこと。
困ったときは、当たり前のように力になること、そばにいること。
形だけの恋人、戸籍上の夫婦、血だけは繋がっている親子…
彼らも最初は、愛を抱いていたのかもしれないけれど、いつしかなくなってしまうことも多い。
その原因のひとつにこれがきっとある。
「 自由 」
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幸せな人生ってなんだろうと考える。
恋人がいること
家族がいること
結婚していること
仕事で成功していること
お金をたくさん稼ぐこと
将来を考えたときに、何歳までには結婚して、何歳までに貯金はいくらあって…そんな将来設計を考えたことがある人はきっと多い。
そういうのが本当に幸せだって感じる人もいると思う。
でも、この作品を読んで、
私にとって幸せな人生とは「 名前がつけられないものを多く感じること 」なんだと思う。
作中の2人の人生は、側からみたら大変なものであるけれど
「 事実は、真実ではない 」
作中の彼らが人生を通して、幸せかそうじゃないかはわからない。
彼らにしかわからない。
でも、彼らには名前がないものがたくさんあるんだと思う。
お互いの存在とか
安心などでは表しきれない居心地・心の平穏とか自由とか
そんなようなものを表す言葉はあるだろうけれど
完全にぴったり、しっくりくるものはきっとない。
少し違う、足りない、そんなに浅くない、そんなに込み入ってない。
名もないものが、彼らの人生には溢れているだろうなと、
それを自分以外のだれかに感じたとき、それを愛と呼ぶのだろう、そう感じられる作品。
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ここまで見ていただき、ありがとうございます。
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