心を満たすな。空で満たせ。
幕末の名著「言志四録」に学ぶ
東洋の生き方学 No.41
言志録 佐藤一斎著 第四十一条
【原文】
富貴は喩えば則ち春夏なり。人の心をして蕩せしむ。
貧賤は喩えば則ち秋冬なり。人の心をして粛ならしむ。
故に富貴に於ては則ち其の志を溺らし、
貧賤に於ては則ち其の志を堅うす。
【訳文】
物質的な豊かさは春や夏のようであり、人の心を蕩けさす。
貧賎は秋や冬のようであり、人の心を引き締める。
故に、物質的豊かさは志を人の志を薄弱にし、
貧賎は人の志を堅固なものにする。
言志録 第四十一条『心を満たすな』
豊かな時代になった。
この条文(言志録 第四十一条)で言うところの、
"富貴は喩えば則ち春夏なり。人の心をして蕩せしむ"
現代は
人の心を蕩かす、春や夏のような時代であろう。
時代や社会を否定しても何も始まらない。
その様な時代だからこそ、
自分の決めた生き方を全うすることに意義がある。
多くの偉人が生まれた時代は、秋や冬の時代であろう。
故に、志を堅固にしやすかったのだ。
現代は、佐藤一斎先生の言う、
志を溺れさせる時代なのだ。
故に、自分の生き方を貫く
つまり、志に生きる価値がある。
この豊かで満ち足りた時代にあって、
如何に生きるのか?
毎日自分に言い聞かせていることがある。
"腹は満たしても、心は満たすな"
こう自分に言い聞かせている。
これは、自己肯定感を捨てろなどという、
そういう意味ではない。
人は生まれながらにして、
誰もが尊い存在であると思っている。
自己否定など以ての外である。
"心を満たすな"ということは、
永遠を志向し続けると言うことである。
美味い物ばかり食べたいとか、
自分だけ腹一杯食べたいとか、
人間は腹加減で生きているのではない。
美味い物を食べても、腹一杯食べても、
満たされない何かが、人間を人間たらしめている。
人体の生命維持においては、
それで良いのかもしれない。
美味い物を適当に食べて、適当に寝る。
それで良いだろう。
しかし、私たちは人体ではない。
人間である。
腹を満たしても、満たされない何かがある。
突き詰めると、誰しもがそうだと思っている。
誰しもが、満たされざる何かによって、
突き動かされている。
その存在を見つめなければならない。
見つめるためには、真空でなければならない。
空で満たすのだ。
人間だけが喰らえる"何か"が、
人間を人間たらしめている。
その何かを喰らい続けるために、
心を空で満たさねばならない。
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