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40.著作権の切れた美術をポストカードやホームページ、note記事を自社の宣伝物で利用したいのですが、どのようにすればよいのでしょうか。

所有権・出版権と著作権

質問⑱・著作権の切れた美術をポストカードやホームページを自社の広告物で利用したいのですが、どのようにすればよいのでしょうか。また、ある美術館が所有する江戸時代の日本画美術全集などがありますが、これらを使う場合はどうしたらよいのでしょ
う。


たしかに、著作権は著作者の死後70年の経過によって保護期間は終了し、著作権はなくなります。(法人著作の場合は公表後70年)その後はどうなるかというと、公有(パブリックドメイン)となり、誰もが自由に複製著作物を利用することができます。当然、江戸時代の著作物であれば著作権はありません。

たとえば、ポストカードやホームページ、自社の広告物で使用する場合、美術全集に掲載されている写真をそのまま複製することにはどんな問題があるでしょう。

前頁の通り、著作権はありません。また、その著作物を印刷するために平面的に写真撮影しただけでは単なる複製写真ですから、その写真自体には著作権法上でいうところの著作権は認められません。

さらに、出版社の版面権はどうだろうか。これも現在のところ版面権は立法化されていません。出版社は出版行為自体に対しては著作権法上の権利はありません。

このように、美術全集のうち、レイアウトや文章、他の著作物を利用することなく、(新たな著作権があるもの、解説、評論) 美術全集に印刷された江戸時代の日本画だけの複製に関しては、今のところ一切、著作権侵害にはなりません。

しかし、印刷された絵画を複写することはかまわなくとも、複写の場合、鮮度が落ち、実際に実用化するにはむずかしい場合もあります。

そこで印刷用の製版フィルムが必要になるときもあり、この場合、日本画を所有している美術館に写真撮影の許可をとり、新しく印刷用のフィルムをつくるか、撮影したフィルムを借りる必要があるかもしれません。

だからといって、美術館は撮影することを拒否することも、許可することも、一定の条件(撮影料他)で要求することはできます。

これは著作権の権利を行使しているわけではなく、所有権を行使していることになります。また、正式に契約し使用許諾をとっても、契約者以外が勝手に使用した場合、契約違反によって損害賠償請求を求められる場合もあります。

このように、日本画と日本画の印刷用フィルムには著作権はなくとも所有権を有していますので、印刷用フィルムの譲渡や貸与に関し、その使用方法や使用料について条件をつけることができます。


商品化と著作権


質問⑲・「イラスト」・「ロゴ」・「サービスマーク」を商品化するまでの方法を知りたいのですが?商品化した売込み方法、ロイヤルティ、商品化するための経費や商標権、著作権などをどう考えていくか?また、注意点や成功例、失敗例なども教えてください。


「イラスト」・「ロゴ」・「サービスマーク」を商品化するまでの方法の前に、まず考えなければならないことは、自分の能力及び作品力の部分を再確認しなければなりません。

プロとして考え、ビジネスをしていくならば、自分の作品力の判断も必要になります。

1.イラストに関していえば、どの部分に自信があるか。自分のイラスト作品を他人に見せてどんな評価を得られるのかという点です。

また、ロゴ・サービスマークなどを商品化するにしても、自分の創作エゴだけでなく、それを使用する相手側のメリットや考え方を反映させるものでなければ押し付けになる可能性が多いものです。

ほとんどのロゴマーク・ロゴタイプをつくってきた多くのC・1デザイナーたちは、これらを理解する能力が不足していたため壊滅に近いのが実状です。デザイナー特有の職人的気質でよりよいモノを生み出そうとしてきたが、デザイナー側の視点から考えた押しつけが多く、また費用も最低でも50万から100万円といったように、正しい根拠や価格設定のないまま企業に請求しつづけてきたツケが回ってきたものともいえます。

グラフィックデザイン(商業デザイン)とは、芸術家の集団ではなく、商業を活性化させ、企業に収益を与えることが本来の目的でしたが、芸術家に近い考え方が蔓延し、自分の作品に酔いしれ、自己本位になってしまいました。

また、ロゴマーク・ロゴタイプは、特許等の工業所有権の中の商標権に依存してきたため、出願しなければ権利として主張できない創作の仕方が中心となり、作品(商品)自体の魅力に欠けてきました。つまり、流行を追いすぎたため、誰もが同じような作品をつくるようになり、むしろ他との差別化が図れなくなるほど表現が衰退してしまったのです。

これからロゴマーク・ロゴタイプを制作する人たちは、著作権を主張できるつくり方を取り入れることによって新たな個性化や独自性を図れるはずです。

2.「成功例・失敗例」これは様々な内容で異なりますが、イラストも、ロゴマーク・ロゴタイプなどは、すべてが商業的なものです。
そこで成功例を一言でいえば、その作品によって企業の収益が上がることです。

また、その作品によって商品名や企業名が広く知れわたることです。

これは面白いことで、たとえ創作した人が素晴らしいと思ったからとか、企業が大変喜んだとか、大金を支払ってくれたかどうかではなく、その企業またはその商品を購入する一般の消費者の評価によって決定されている点です。

ですから、ロゴマークやロゴタイプを創る人は、常に勝手な主権的な考え方でつくるのではなく、その企業や商品の先に見える消費者を見据えて考え、創っているかどうかが成功のカギとなっているようです。(たとえばトマト銀行がよい例でしょう)
また、その反対が失敗例だと考えればよいでしょう。

3.「経費」という意味がわかりませんが、イラスト・ロゴマーク・ロゴタイプにかかる費用のことでしょうか。

たとえば、そのイラストや他の作品を制作するための材料代とか、写真をそのために撮影し、どうしてもある場所に行かねばならなければ、交通費がかかります。それらをクライアントに経費として計上します。またどうしても購入しなければならないものすべてが経費になります。

4.「ロイヤルティ」に関しては、ロゴマーク・ロゴタイプはほとんどがロイヤルティ制度を導入していません。特に大手の場合は買い取りです。イラストに関するロイヤルティは文具、雑貨、ファンシーの世界、また一部絵本の世界のみで、イラストもどちらかといえば買い取りに近い。通常は上代価格の2%から3%といわれていますが、現実はもっと低いものです。
   
ただし、キャラクターのように商品力、訴求力のある特別なものは、5%から10%可能なものもあります。(但し実績やネームバリューが必要)「製品の売り方」イラストやロゴタイプ等は製品とはいわず、あくまでも商品だと思いますが、製品だろうが商品だろうが、売り方は同じと考えればよいでしょう。

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