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壊れかけのzippo


珍しく酷く酔っ払っていた 珍しく電車を乗り過ごした 耳元からFOMAREのタバコが流れて普段は名前しか聞かない駅に着いていた 僕は駅から降りてもう息白が舞うような 夏を抜け出そうとした結果 冬まで追いつきそうになった季節が終わり 冷たい風の声を感じて 冬が来たんだと実感した



終電後のホームには線路沿いの道路を見ながらタバコを吸ってる女性と何も聞こえないこの場所でガタガタと不協和音を鳴らしながら自転車をゆっくり漕いでいるおじさんが居た




『まだ宵の口 もう一軒どう?』 へへへ って笑った声が普段の音より半音上がるのが特徴的でわざと濃いめのハイボール頼んですぐ酔っちゃう 高円寺北口から徒歩2分のライブハウスで働くFOMAREが好きでちょっと文学が好きだという赤茶の髪が良く似合う彼女はいつもそうやって僕を犬のように連れ出した



オール明けの富士そば ビールが1杯190円 渋谷駅 徒歩9分の幸ちゃん カランコロンと特徴的な音がする喫茶店 円山町徒歩7分ルービックキューブみたいな外観のラブホテル 深夜のオールナイトニッポンに浸って僕の付け焼き刃みたいな夢を口にしたのも君が初めてだった 人生の余白みたいな時間の使い方は君から教えてもらった 誰にも見せない夜は君とずっと共有したかった



彼女から唯一残された金属物を使いながら煙草を吸う度に ねえ?この歌聴いてって シリアルナンバー0426が刻んであるzippoを小気味い金属物を鳴らしながらシケモクを吸っていた彼女のことを思い出す


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月が滲むからもう好きじゃない
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短編小説がメイン たまに世界史・エッセイ・音楽のことを書きます / 偏愛のメディア作ってますhttps://note.com/soregashi_mag