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「おらんうーたんになりたい。 」と初夏の多摩動物公園で思わず呟いてから、ぼくが考え、発信し、活動してきたこと。

0.はじめに

※2020.5.5 本noteの一部を加筆・修正しました。

※2020.5.31 本noteの一部を再加筆・修正しました。

※2020.8.2 本noteの一部を再々加筆・修正しました。

※2020.9.26 本noteの一部を再再々加筆・修正しました。

※2020.11.22 本noteの一部を再再々々加筆・修正しました。

※2021.1.17 本noteの一部を再再再々々加筆・修正しました。

※2022.6.5 記述が古くなっていたことから一時非公開としていましたが、内容を再整理し加筆・修正のうえ再公開しました。

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はじめまして。 「おらんうーたんになりたい。 」と申します。 動物園や水族館、広義の動物関係施設、博物館、霊長類学などを主なテーマとしてnoteを執筆しています。
    動物園でオランウータンをはじめとする霊長類たちに「魅せられ」てから、動物園や水族館から垣間見える様々な事象について文化社会的な切り口を中心に探求を続けてきましたが、これまでの活動を体系立てて紹介する機会をあまり持ってこなかったため、これまでの活動とこれからの創作についてこの記事では時系列でまとめていこうと思います。
それらの記述はそのまま、このアカウントの「自己紹介」になるはずです。

1.そもそも何でこんなに動物園や水族館に通いつめるようになったんでしたっけ

 

   私は、もともと動物園や水族館が好きな子どもだったと思います。家族や友人と各地の園館に足を運ぶ機会も多々あり、生きものたちに親しむ時間を多く持って幼年期を過ごしました。


   大学生になってからもふらりと上野動物園や東武動物公園を訪れることはありましたが、今ほど分析的に、また熱狂的に園館という場自体に関心を向けてはいませんでした。どちらかと言えば、地域コミュニティ拠点やアートプロジェクト、自主読書会といった、「ヒトが創発的に縁を切り結び、創造を行う場」に強く関心を抱いていたかも知れません。


     転機になったのは就職して2年が経った頃でした。職場の環境がとても厳しくなり、それまで趣味活動の中で拠り所にしてきた、先述の「創発的な場」に関わっていく元気もなくなってしまっていた。友人と話しても気は晴れず、かなり迷走していた時期でした。

    そんな時、たまたま足を運んだ多摩動物公園で、オランウータンたちの魅力に取り憑かれたのです。「おらんうーたんになりたい。」という長いアカウント名は、その時何気なく呟いた感嘆をそのまま用いたものです。

   各地の動物園への訪問を重ね、また後述する「戦後日本オランウータン史」の探求を経た今では、彼らの生を「自由」と安直に表現してしまうことに些か躊躇いを感じますが、当時の疲弊し切っていた私は、物言わぬオランウータンたちの瞳に、また高所での自在な身さばきに、ある種の「解放」を見出していたのです。

   動物園はヒトとヒトが縁を切り結ぶのみならず、ヒトとヒトならぬものが縁を切り結ぶ場でもある。そして、その「縁」を強く意識することで、何気なく歩いていた園内の風景もがらりと変わって見える。そんな、生きものたちと向き合う時間がもたらしてくれる魔法的な力について、もっと探究していきたい。その思いが高じて、気づけばずいぶん遠いところまで来てしまいました。


2.「ジプシーさん」との出会いと別れ、「戦後日本オランウータン史」(2017〜2019,現在非公開)

    多摩動物公園に通いつめる中で新しい創発の可能性に気付き、厳しい本業とも折り合いを付け、なんとかどうにかやっていけるようになってきた頃、多摩動物公園の長老で、飼育下で世界一長生きしたボルネオオランウータンでもあるジプシーさんがこの世を去りました。思い入れのあった動物園動物の訃報に直面するのは初めてのことでした。

   ジプシーさんが開園まもない多摩動物公園にやって来てから日本で過ごしてきた日々は、そのままそっくり戦後日本のあゆみと重なっています。この頃、「大型類人猿情報ネットワーク」(GAIN)の存在も知り、日本で暮らしてきたオランウータンたちの歴史を包括的にとりまとめ、彼らひとりひとりの「いのち」の輪郭をなぞってみたい、と感じるようになりました。それは同時に私にとって、創発の場として動物園を再定義する第一歩でした。

    半年ほどかけて様々な文献や記録を渉猟し、2017年11月に第一版が完成した「戦後日本オランウータン史」は、2019年にnoteで再公開を行い、同時に各年代の「解題」を付すことで、ひとまずの「完結」を見ています。ただし、2019年版についても内容が古くなっていることから、現在は公開していません。

3.猿リッチメント大賞(2018〜2019)

   オランウータンをはじめとする霊長類を訪ねて、各地の動物園へ足を運び始めてからしばらく経った2018年前半は、動物の飼育環境の改善を求め、園館の対応を糾弾する議論が激しさを増していた時期でもありました。 

     園館における動物福祉の向上は今や大きなテーマとなっていることは疑いようもないことですし、私自身も改善を求める主張を否定するものではありません。しかし、思いが加速するあまり、園館のスタッフや園館自体を匿名で痛罵する発言を行う人がいることを個人的に憂慮していました。観覧者と施設との分断を生む攻撃/口撃ではない形で、「いいな!」と思った取り組みに光を当てることが出来ないか。そんな思いから発信し始めたのが、市民Zooネットワークが主催するイベント「エンリッチメント大賞」をもじった、「猿リッチメント大賞」でした。

 自分が強く関心を抱いている霊長類の飼育状況にあえて限定し、様々な飼育管理上の工夫や、観覧者に伝える工夫を取り上げたこの企画は、私自身の園館等施設に対するその後のスタンスを決定付けました。

   ただし現在の私は、環境エンリッチメントの動物に対する効果測定に関しては、印象論だけではなく、やはり獣医学等専門的な知見からの評価を待たなければ正しく語ることは出来ないのではないか、という認識を抱いています。 大切なことは、安直に「これはいい、これは悪い」と断ずることではなく、試みの反復の中から真に効果のある飼育方法が見出され、様々な制約の中にあっても幅広く共有されていくことではないか、と考えています。

4.小説「いのちの箱舟#1〜#2」(2018〜2019)

   先の「猿リッチメント大賞」企画を始めた時期から、園館を訪問する中で観覧客として直面した様々な疑問を、直接的に刺々しくぶつけることで火に油を注いだりせず、また特定の誰かを糾弾することもなく表現するにはどうしたら良いか、そんな問いをぼんやりとあたためていました。

    自分なりのひとつの解として執筆を始めたのが、小説「いのちの箱舟」シリーズでした。 「バーチャル動物園」という主題を扱った第1編、「国立動物園」という主題を扱った第2編とも、後述する「犬山オフ会」で無償配布した私家同人誌「Long-long-long-Call」/「Long-long-long-GREAT Call」に収録しているほか、noteにも加筆修正し再掲載しています。

   小説作品としての出来はともかく、岐路に立っている場について、「違う仕方で」語っていき、向き合っていくこともできる、ということに、一連の作品群の創作を通じて気付けたように思います。

5.犬山オフ会(2019)

   動物園をベースとした、創発的な集まりは果たして実践しうるのか。 その問いに向けて企図したのは2019年に都合3回成立した「犬山オフ会」でした。 この企画では、愛知県犬山市の「日本モンキーセンター」で行われるイベントに共に参加して頂き、意見交換を行う機会を持ちました。 また、「いのちの箱舟#1」「いのちの箱舟#2」に短い動物園エッセイを併録した私家同人誌、「Long-long-long-Call」「Long-long-long-GREAT Call」を各回で参加者に頒布しています。

 2019年6月8日の第2回では犬山鵜飼観覧も併せて実施するなど、動物園の持つコミュニティ機能や地域観光の起点としての決して小さくない役割について考え、小規模ながら実践する機会を持てたことは、得がたい経験でした。

 たいへん思い出に残るイベントではありましたが、非公式で開催した集まりということもあり、もう少し企画者としては内容を練ったり、訪問園と調整を詰めるべきだったなぁ、と反省しています。

 昨今の新型感染症の拡大の中では恐らく同じ形で再度実現するのは難しい企画かも知れません。

6.日本モンキーセンターへの「応猿」(2017〜)

 先に述べた「犬山オフ会」は、会場に選定した日本モンキーセンターという園の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい、という考えもあり、企画したものでした。
    2017年に2歳児の頃以来およそ20年振りに訪問した日本モンキーセンターは、名鉄グループの傘下から離れたこともあり、資金難の苦境に陥っていました。
    2018年、「プリマーテス研究会」に参加するために「日本モンキーセンター 友の会」に入会した私は、その後繰り返しこの園を訪問していく中で、この園が個性的なコミュニティ運営や研究会活動の拠点として機能していることを知り、この場をなくしてはならない、という思いに駆られました。
2019年には「友の会」のサポーター会員として個人的に出来る範疇での「応猿」活動を展開。 この年以降、いままで以上に活性化した園の寄附活動についてtwitterやnoteを通じ特に力点を置いて紹介してきたほか、来園者として少額ではありますが物品寄附やクラウドファンディングにも参加しています。 

   また、この園で触れてきた霊長類の多様性をイラストとしてnoteに公開するなど、「創発の場」としてのこの園が持つ魅力についても複数の媒体で発信を重ねました。

 私の中では、訪問する園館が増えれば増えるほど、特定の種や個体への関心と同時に「動物園や水族館という場所が存在し続けていることの自明性」が揺らがされていることに気付く場面も増えていきました。動物園・水族館という「場」そのものに対する関心が次第に強まってきたようなのです。

   「場」が消滅するということは、「種」や「個」の福祉環境も著しく悪化するリスクが突如として生じてくることだと考えるからです。

    個人的な楽しみ方を広げるとともに、「どんな恩返しが、動物園・水族館に対して出来るだろう」という考え方を強めることが出来たことも、動物園・水族館に継続的に足を運び始めてから生じた大きな変化でした。

7.小説「いのちの箱舟#3 【新訳 動物園が消える日】」(2019〜休止中) 

   「いのちの箱舟」に連なるシリーズとして断続的に公開している「新訳 動物園が消える日」は、これまでの園館訪問を通じて感じたことを、フィクションという形式を通じて定置していくことを企図した創作です。 過去に創作した「いのちの箱舟#1〜#2」の作品世界を踏襲しつつ、既に現実の日本国内でも表面化し始めている「動物園の消滅」という事象を受け止め再解釈していくことを大きな主題としました。

   2019年から2020年年初にかけて、消滅した動物園の跡地や、いま岐路に立つ動物園を訪ね、過去の訪問記録と併せて「取材ノート」を作成しました(完結済み)。 この取材を背景にした小説の展開も進めてきましたが、昨今の社会情勢の中で国内の動物園・水族館は臨時閉園を余儀なくされ、一時的に私たちの生活から「消えて」しまいました。

    すでに動物園・水族館は再開園し、感染症対策を念頭に置きながらも憩いの場を人々に提供していますが、現実が空想を凌駕してしまったいま、どのような方向に「動物園の消滅をめぐる物語」を転がしていったらいいのか、書き手として構想の大規模な見直しを迫られており、以降執筆は止まったままです。

8.「戦後日本チンパンジー列伝」(2020,現在非公開)

 2020年に入り、「戦後日本オランウータン史」に引き続く形で「戦後日本チンパンジー列伝」という動物園史の構想もnote上にて展開しました。 この動物園史には、日本で暮らすチンパンジーの主要な家系を調べ、国内動物園等施設におけるチンパンジーの「群れ」としての生を再考したいという意図がありました。

 2019年秋頃から事前のリサーチを開始し、チンパンジーをめぐる社会のまなざしも反映させながらnoteに書き綴ってきました。

    執筆を進める中で国や企業も関与した繊細な話題や、現在進行形で問われているチンパンジー施設の資金管理をめぐる問題にも踏み込むこととなり、非当事者としてどこまで書くことが許されるのか、 非常に悩みながら取り組んできました。

 2020年8月に一応の「完結」として筆を置きましたが、先の「戦後日本オランウータン史」同様に情報の古さが目立っており、こちらも現在は非公開です。この執筆の過程で認識した事象に関する問題意識は、継続してあたため続けたいと感じています。

9.霊長類フリーマガジン「【EN】ZINE(エンジン)」(2020〜2021)

 日本のみならず世界中で新型感染症が猛威を振るう2020年、思うように動物園や水族館を訪問できない中で、これまで動物園・水族館で感じていたことや挑戦してきた実践をさらに次のステージに引き上げる活動を家に居ながらできないだろうかと考えるようになりました。 

     そして発案したのが、霊長類フリーマガジン「【EN】ZINE(エンジン)」の製作でした。

    2020年10月に完成し、「おもしろ同人誌バザール」等一部イベントで無償にて頒布したことに加え、2021年1月にはwebでの全文公開も開始しています。また、日本モンキーセンター等一部の施設にも寄贈しました。

    2021年1月には第2集にあたる「【EN】ZINE Re:Boost!!」制作も開始しました。多様な寄稿者の方々にも参加頂き、2021年10月に完成。この冊子の配本にあたっては何らかの「作品」を寄せてもらって冊子と交換とする「ブースター」制度を創設し、この仕組みによって集まった作品をさらに「追補録」として2集にまとめることができました。

10.詩歌「さるのうた」(2020〜)

 2020年は「【EN】ZINE」内の一企画として現代短歌を中心とした詩歌の発表も開始しました。最初のうちは霊長類に対象を絞ってきましたが、徐々に日々の中で触れたことや感じ取ったことから着想を得た現代短歌も不定期に発表しています。

   2021年11月にはTwitterスペース上で「動物園歌会」をオンライン開催。共同主催者であるぽめさんの卓越したディレクションもあり、盛況のなか幕を閉じました。

11.ラジオ「Long-long-long-Call」(2020〜休止中)

   2020年には「犬山オフ会」で配本した私家同人誌と同じタイトルを冠したradiotalkでのpodcast配信番組「Long-long-long-Call」にも挑戦しました。

   毎週末に不定期に更新し、土曜日は動物や動物園まわりの話題を、日曜日は日常の雑談あれこれを主に喋る構成でしたが、現在は後述する「しのばZooゼミ」を中核としたTwitterスペースでの配信に活動媒体を切り替えています。

12.動物(園)本読書会「しのばZooゼミ」(2021〜)

   2021年から不定期で、動物や動物園に関する書籍を読むオンライン読書会として「しのばZooゼミ」を主催しています。Twitterスペースで開催し、ハッシュタグ #不忍ゼミを付けて意見を募ることで、幅広い方に参加していただけるような読書会運営を目指しています。

   この「しのばZooゼミ」は私個人のプロジェクトの実験室という側面もあり、Discordサーバを構えて動物園に関する話題の情報収集や、半クローズドな環境下での企画構想も進めています。



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