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ノスタルジア12 -機械の遺跡 後編-

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ノスタルジア13



扉が並ぶ長い廊下を抜け、大きく開けた場所に出るハバナたち。
講堂のような広い場所。部屋中に、たくさんの広い机や椅子が並べてある。

ルー「わあ…」

ルーは大きく仰ぎ天井を眺める。はるか先にある天井。
兵士たちは散り散りになって、講堂の探索を始める。
規則正しく並べられた机の間を歩き回るルーとハバナとシャム。

ルー「すごく広い…」

ルーは立ち止まってあたりを見回す。

シャム「まるでパーティ会場のようですね」

机を指先で撫でるシャム。

ハバナ「そうねえ…」

ハバナはうつむきながら考え込んでいたが、やがて顔を上げ、
それから近くにある机に目を向ける。

ハバナ「やっぱりこれってただの机と椅子よねえ」

ハバナは、手近にある椅子を引き、机の下を覗き込んだあと、椅子に座る。

ハバナ「うーん…」

机に肘をつき、それから顔を深く下げて考え込むハバナ。

ルー・シャム「…」

ルーとシャムはそのまま椅子に座り込んでしまったハバナを見つめる。
シャムはルーに向かって少し困ったように笑う。

シャム「ルー、私たちも少し休憩しよう」

シャムは同じく椅子を引きハバナの隣に座る。
ルーは小走りでシャムの隣に向かう。
二人と同じように椅子を引き、腰をつけるルー。
ルーが腰を下ろすと同時に、ルーの目の前の机の一部が開き、
小さな呼び出しベルが現れる。

ルー・シャム「…」

目を見開きながら、ベルを見つめるルーとシャム。
ハバナが顔を上げる。

ハバナ「あ…」

ルーの手前に現れたベルに気がつくハバナ。

シャム「博士。ルーが席についた途端これが…」

シャムが言い終わるよりも早く、ハバナは机に身を乗り出し、
ベルに触れる。

シャム「…」

ベルを様々な角度から眺めるハバナ。

ルー・シャム「…」

ハバナを見つめるルーとシャム。ハバナはベルをそっと押してみる。

ハバナ「うわっ」

ハバナがベルを押したのと同時に、ベルの真ん中から
立体映像が浮かび上がる。

ルー「…!」
ルーは机に手を置き前のめりになり、そしてシャムは立ち上がる。

ハバナ「…」
立体映像には様々な料理の画像が規則正しく並んで居る。
一心不乱に映像を見つめるハバナ。

ハバナ「…」

ハバナの瞳に映像が映る。

ハバナ「これは私にも動かせるんだ…」

ハバナは独り言のようにつぶやき、頬を少し紅潮させ、
もう一度ベルを押す。
ハバナがベルを押したのと同時に、立体映像が消える。

ハバナ「…」

ハバナは何度もベルを押し、立体映像の出し入れを繰り返す。

ハバナ「はあ…」

一通り触った後、息を吐くハバナ。

ハバナ「…ルーしか認識できないものも多いけど、レバーとか
スイッチのようなもので起動する装置は私たちにも
動かせるじゃないかな。多分…」

そう言ってハバナは、立体映像にあるアイコンの一つに指を触れてみる。
ハバナが触れたアイコンの色が反転し、それから画面が変わる。

”3分お待ちください”

立体映像には記号が浮かび上がっている。

シャム「…なんですかね?」

眉をひそめ、立体映像に鼻先を近づけるシャム。
目を細めながら映像を見つめるハバナ。

ハバナ「これはきっと古代の文字ね。…うーん、3はわかるんだけど」

ルーは机に手を置き、前のめりになって立体映像を眺める。

ルー「えっ?」

突然、ルーは手に違和感を感じる。慌てて机から手を離すルー。
ルーが手を置いていた場所の一部がスライドし、中から料理の乗った皿を乗せた細長い機械が出てくる。その細長い棒状のマシンは、器用に料理を
置くと、何事もなかったかのよう机に収納される。
料理からは湯気が立ち上がり、あたりに匂いが漂う。

ルー・ハバナ・シャム「…」

呆気にとられながら料理を見つめる3人。

シャム「ふふっ」

突然、シャムが吹き出す。
シャムの方へ顔を向けるルーとハバナ。

シャム「…すみません。いえ、なんというか、ここは何らかの
施設であったことは間違いなさそうですが、
我々が期待していたような発掘物とは少し違うなと思いまして」

シャムが少し安心したように微笑む。

ハバナ「そうよねえ」

ハバナはうなずく。

ハバナ「民家…うーん、集合住宅ってところかしら?」
ルー「これ、食べれるのかな?」

ルーは目の前の料理を指す。
シャムはルーに向けて困ったように微笑む。

シャム「さすがに、それはやめといた方が…」

シャムが言い終わるよりも早く、身を乗り出し料理をつまみ口に
ほうりこむハバナ。

シャム「あっ、ちょっと!」

シャムは、慌てて立ち上がる。

ハバナ「うん、美味しい」

ハバナは咀嚼しながらニッコリ微笑む。

シャム「博士、いくらなんでもいきなり口に入れるのは…」
ハバナ「大丈夫よ、アリスさんは慎重すぎるわ」
シャム「…」

ため息をつくシャム。

ルー「…」

ルーは料理をじっと見つめ、手を伸ばす。

「ルー、これはやめておこう」

シャムは強い口調でルーをいさめる。

ルー「…」

ルーは少し肩を落としながら、バツが悪そうに手を引っ込める。
ハバナは料理を飲み込み、それから少し息を吐く。

ハバナ「ああ、でもこう、なんていうか、何かが違うっていうか…」

机に突っ伏すハバナ。
ハバナ「…少しでも何か機械の仕組みを解明できそうな物が
見つかれば良いのだけど」


***


階段と広間と抜け、長い廊下へと出るバーマン一行。
規則正しく扉が配置された廊下を眺め、目を細めるバーマン。
多くの扉が開けっ放しになっている。

バーマン「よし調べろ!」

バーマンは声を上げる。バーマンの掛け声と共にに兵士たちが
次々と駆け足で部屋へ入室していく。兵士たちに混ざって、
部屋の一つに入室するウエスト。
ウエストは部屋に足を踏み入れ、それからあたりを見渡す。
部屋には机とベッド、それから四角い箱が床に置かれている。

ウエスト「…」

慎重にあたりを眺めながら部屋を歩くウエスト。
ウエストはベッドの前までやってくると、布団を軽く叩く。

ウエスト「…」

少しだけほこり立つベッド。
ウエストは目を細め、それから近くにある机の引き出しを開ける。
引き出しの中を覗き込むウエスト。

ウエスト「…何もねーか」

ウエストはため息をつき、それから四角い箱に視線を向ける。

ウエスト「こっちはなんだ?」

ウエストは少ししゃがんで、取っ手をつかみ箱を開ける。
箱の中から冷気が流れ出し、ウエストに直撃する。

ウエスト「おおっ」

慌てて立ち上がるウエスト。

ウエスト「…」

箱をじっと見つめ、それから中に手を入れる。

ウエスト「こりゃいいな!」

ウエスト中腰になり箱を抱えるが、四角の箱は持ち上がらない。

ウエスト「くそっ、何だこれ。床にひっついてるのか?」

入り口から別の兵士が現れる。

ウエスト「おい、何してる!早く行くぞ!」
ウエスト「…」

顔をしかめるウエスト。

ウエスト「…わかった。今、行く」

ウエストは箱から手を離した後、名残惜しそうに冷蔵庫を一瞥し、
それから出口に向かう。


***


講堂の出口。
出口の先には上に続く階段と下に続く階段、それから巨大な扉。
巨大に扉の横には、小さな上向きの三角のスイッチと下向き三角のスイッチが縦に並んでいる。さらに、扉や階段から少し離れた場所にに小さな箱が
設置されており、中には薄い板が何枚も入っている。
出口の前で立ち尽くすルーや兵士たち。

兵士「…」

兵士の1人が、おそるおそる上向きの三角のスイッチを押す。
扉の上のライトが左から順番に点灯していき、そして扉が開く。
兵士たちから歓声が上がる。

シャム「…」

兵士たちに混ざってその様子を眺めるシャム。
シャムはハバナが講堂にある小さな箱の前でしゃがみこんでいるのに
気がつく。ハバナの隣にはルー。
シャムはハバナに近づき声をかける。

シャム「どうかしましたか、博士?」
ハバナ「…」

ハバナはアリスの問いには答えず、黙って小さな半透明の板に手を伸ばす。
真剣な眼差しで板を見つめるハバナ。ルーも半透明の板を除きこむ。

シャム「…」

シャムは二人を背後から見つめていたが、やがてハバナと同じように
箱の中から透明な板を一枚手に取る。
ハバナは板をあらゆる角度で見つめた後、表面にそっと手を置く。
板に手を置いたまま透明の板を見つめるハバナ。
徐々に透明の板に熱が篭り、そして突然鮮やかな色の画像が浮かび上がる。

ルー「うわっ」

声を上げるルー。

ハバナ「…っ!」

ハバナは息を飲む。ぽかんとした様子で二人を眺めるシャム。
シャムもハバナの同じように手元の透明の板に触れてみる。
しかし板は何の反応も示さない。首をかしげるシャム。

シャム「うーん。こっちは、何も起こらないな…」

そう言ってシャムは板を手前の机に置き、それからハバナの手元を
覗き込む。板には地図のような画像が映し出されている。

シャム「これは…地図でしょうか」
ハバナ「…うーん」

板を見つめたまま、うなるハバナ。

ハバナ「そうね…あ、何かしらこれ?」

黄緑色の点滅する光がハバナの目に止まる。
ハバナは黄緑色の光を指差す。

シャム「…」
シャムとルーは板を除きこむ。
ルーの瞳に黄緑の光が映る。
突然、板を手に立ち上がるハバナ。

ルー「うわっ」

驚いて声を上げるルー。

ハバナに合わせてアシャムも立ち上がる。少し不満げにハバナの方へ
顔を上げるルー。ハバナはルーの様子には全く気付かず、
一心不乱に講堂と画面を交互に確認する。

ハバナ「この光、たぶん現在地ね」
シャム「なるほど、確かにそうですね」

そう言いながらシャムは地図に浮かぶ緑の光を指を伸ばす。
シャムが板を指でこするのと同時に、板に映る画面がスライドする。

シャム「あ!」

慌てて手を離すシャム。

ハバナ「まあ!」

ハバナが目を見開き、声をあげる。

シャム「すみません、博士…」

気まずそうに、一歩下がるシャム。

ハバナ「気づかなかったわ」

そう言ってハバナは頬を紅潮させながら板を除きこみ、
次々と画面をスライドさせていく。ルーはハバナの背後から板を
覗き込もうとするが、板は高すぎる位置にあるため届きそうにない。
ルーの様子に気づかないハバナ。

ルー「…」

ルーは不満げにハバナから離れ、透明な板がたくさん収納された小さな箱の方へ向かおうとするが、目の前の机にシャムが最初に触っていた透明の板が無造作に置きっぱなしになっているのに気がつく。

ルー「…」

机の上の板に手を伸ばすルー。ルーは机から板を取ると、
恐る恐る板の表面に手を触れる。

ルー「わっ」

透明な板に鮮やかな画像が現れる。
ルーは画面をフリップし、次々と地図をスライドさせる。
シンプルな地図の上に、複数の無数の光が点滅するページが現れる。
ルーは映像を凝視する。

ルー「…」
ハバナ「ここへ行ってみましょう!」

突然、ハバナが声を上げる。ルーは顔を上げハバナの方を見る。
ハバナは板をみんなが見えるように、上にあげ、地図のとある一箇所を
指で指す。

シャム「これは…最深部ですか?」

地図見上げるシャム。他の兵士たちもハバナの周りに集まり、
板に目を向ける。

ハバナ「少なくとも地図上ではそう見えるでしょ?」

ハバナはにっこりと笑い、それから階段の方へと向かう。
兵士たちの群れを割って、巨大な扉の前に出るハバナ。
ハバナは開きっぱなしの扉を覗き込む。ハバナは、その狭い空間かの壁に
数字が書かれたボタンが並んでいるのを見つけると、
すぐに兵士たちの方へと顔を向ける。

ハバナ「地図上にあるこの記号を見てみて」

板の右上にある数字を指差すハバナ。

ハバナ「この記号と、ここに書いてる記号!」

そう言って、次にハバナは背伸びをしながら扉の上に並んでいる
数字のアイコンを指差す。

ハバナ「これって、同じものを指し示してると思わない?
…ひょっとしたらこの小部屋からワープできるのかも」

シャムがうなる。

「うーん、それは調べてみなければなんとも…」

シャムに合わせてざわめく兵士たち。
透明の板を片手に持ったまま、離れた場所から廊下を見つめるルー。

ハバナ「まあ。とにかくやってみましょうよ!」

ハバナは明るく声を上げる。
ざわめく兵士たち。兵士の一人が声を上げる。

兵士「そうだな、少し試すぐらいなら…」

最初の兵士を筆頭に次々と賛同の声が上がる。

ハバナ「よかった!じゃ、みんな入って、入って」

小部屋の中から手招きするハバナ。兵士たちは次々と小部屋に入室する。

ルー「…!」

ルーは兵士たちが小部屋に入っていくのに気がつき、慌てて板が並ぶ小さな箱の中に戻す。それから、ぎゅうぎゅう詰まった子部屋に飛び乗るルー。

シャム「あ、ルー」
シャムが足元のルーに気がつくのとほぼ同時に、エスカレーターの扉が
ゆっくりと閉まる。


***


小さな箱の中にはたくさんの透明な板。そのうちの1枚だけ、電源が入りっぱなしになっている。板に映る地図と小さな箱型のイラストの中で
点滅する黄緑光。
地図の右端に表示された数字が次々と切り替わっていく。


***


扉が規則正しく並ぶ廊下。廊下の真ん中で仁王立ちになっているバーマンと部屋を忙しく行き来きする兵士たち。

バーマン「全く、だだっ広いだけで何もないところだな」

バーマンは肩を落とし、ため息をつく。

バーマン「うーん、めぼしい機械はすでに
回収してしまったのかもしれんな…」
兵士「しかし隊長、よくはわからないですが、
これだけでも十分すごい施設ですよ」

バーマンの隣にいる兵士が答える。

バーマン「うーむ」

腕を組み考え込むバーマン。
バーマン「拠点にはなるか? いや、しかしここは立地が悪いな…」

バーマンはブツブツと小声で呟きながら目を細める。

バーマン「いちいち調べ回るよりも、
早いとこ連中に追いついた方がいいかもな…」

***

一本道の廊下。真剣な目で地図を見つめながら進むハバナ。
ルーやシャム、他の兵士たちもハバナの後に続く。

ハバナ「…ここ、よね?」

ハバナは立ち止まりそして顔を上げる。
目の前には巨大な扉。遺跡の入口よりも大きく、そして固く
閉じられているように見える。兵士たちから感嘆の声が漏れる。

「本当にワープできるなんて」「すごいぞ」

シャムは振り返り、背後のエレベーターを見つめながら呟く。

シャム「講堂から、一瞬でしたね…」
ルー「でもすごく疲れた…」

シャムの隣でルーがつぶやく。
苦笑するシャム。

シャム「確かに、定員オーバーだったというか…。
今思えば2、3回に分けて乗ってもよかったですね、博士」
ハバナ「…」

ハバナは返事をしない。ルーとアリスはハバナの方に目をやる。
そこには巨大な扉を一心不乱に見つめるハバナ。
ルーとシャムは顔を見合わせ、それからハバナの隣に並ぶ。

シャム「今までの扉とは何か少し違いますね」

ハバナに話しかけるシャム。

ハバナ「ええ…」

ハバナは扉を見つけたまま、独り言のように答える。

ハバナ「少しでも機械のことがわかる何かが、あればいいのだけど…」

扉の周りを見回すハバナ。
壁にはその巨大な扉以外のものは一切見当たらない。

ハバナ「スイッチのようなものは…ないわね」
ルー「…」

扉を一心不乱に見つめるルー。ルーの瞳には巨大な扉だけが写っている。
突然、ルーは扉に向かって歩き始める。

シャム「…ルー?」

眉をひそめるシャム。
ルーは扉の前に立つち、そして扉に両手をつける。

「…」
困惑しながらルーの姿を見つめる一同。
ルーは腕に力を込め、そして扉を押す。
ルーの押し込む力がに合わせて開いていく扉。

シャム「…」

シャムや兵士たちはあっけにとられながらその様子を眺める。

ハバナ「すごいじゃない!」

突然、ハバナが声をあげルーに駆け寄る。
扉から手を離し振り返るルー。ルーの手を取り飛び跳ねるハバナ。

ハバナ「ね、一体どうやったの?」
ルー「えっ?」

ルーは困惑しながらハバナの顔を見る。

ルー「スイッチがなかったから、押してみたんだけど…」


***


広い講堂。廊下を抜け出た先の講堂で仁王立ちになるバーマンと
バーマンの後ろで規則正しく並ぶ兵士たち。

バーマン「また無駄に広い場所だな!…いいかお前ら、
もういちいち調べなくてもいいぞ。とにかく先に進む道を探せ!」

バーマンの声と共に兵士たちが講堂の中へと忙しげに散っていく。
兵士たちに混じりながら講堂に入るウエスト。
ウエストは他の兵士たちとは違い、辺りを見渡しながら
講堂をゆっくり歩く。

ウエスト「おお?」

ウエストは机の上にぽつんの乗った料理に気がつく。

ウエスト「なんでこんなこんなものが」

鼻を近づけ、匂いを嗅ぐウエスト。

ウエスト「うーん?」

ウエストは首をかしげ、それから料理をつまみ、口の中へと放り込む。

ウエスト「おお!いける!」

ウエストは料理を咀嚼しながら頷く。

兵士「おーい、何やってんだ新入りー!いくぞー!」

ウエストの背後から他の兵士の声がかかる。

ウエスト「おお、悪い悪い」

ウエストは軽く返事をした後、料理をもう一つまみ、口にへと放り込み、
それからいそいそと講堂の出口へと向かう。

***

講堂の出口。出口の先には上に続く階段と下に続く階段、
それから巨大な扉。階段と扉の前に並ぶバーマンと兵士たち。

バーマン「うぬぬ…」

二つの階段を前にし、うなるバーマン。

バーマン「連中はどっちへ行ったんだあ…?」

バーマンは上りの階段と降りる階段を交互に見た後、勢いよく振り返る。
バーマンの背後で並ぶ兵士たちに緊張がの色が浮かぶ。

バーマン「おい!博士たちの痕跡を見つけたやつはいるか!?」

ざわつく兵士たち。

兵士「向こうに、何というか、変な、
強いていうなら料理のようなものはありましたが…」

兵士の一人が恐る恐る声を上げる。

バーマン「なるほど。で、その料理は博士たちの居所を教えてくるのか?」

眉間にしわを寄せる低い声でバーマンは返事をする。

兵士「…」

恐縮し、だまりこむ兵士たち。

バーマン「くそっ…!」

バーマン兵士たちの様子をつまらなさそうに睨みつけ、
それから悔しそうに顔を歪める。


***


エスカレーターの前に集まるバーマンと兵士たち。
ウエストは軽い足取りで兵士たちの元へと向かう。

ウエスト「ん?」

ウエストの目の端に一瞬ピカピカと点滅する光が写りこむ。
立ち止まり小さな箱に目を向けるウエスト。箱の中の透明な板のひとつがにピカピカと光を放っている。

ウエスト「…」

光る板を持ち上げるウエスト。

ウエスト「これは…」

眉をひそめるウエスト。
板には地図上を移動する緑の光が映し出されている。
ウエストは地図に指を伸ばす。

バーマン「おい貴様、そんなところで何をやってるんだ?!」

慌てて顔を上げるウエスト。
兵士たちの間を割って、バーマンがウエストの方へと向かってきている。

ウエスト「え? あ、いや…」

ウエストは慌てて地図を片手に持ち、そして帽子を深く被る。
ウエストの手元でピカピカと光る板。バーマンの目を細める。

バーマン「何だそれは」

ズカズカとウエストの方にと直進するバーマン。ウエストは顔をそらし、
透明な板をバーマンの目の前に差し出す。
バーマンはウエストの前までやってくると不審そうに眉をひそめながら、
ウエストから透明な板を受けとる。

バーマン「…」

透明の板を覗き込むバーマン。ウエストは帽子で冷や汗をかきながら
バーマンを盗み見る。
バーマンは地図に指を触れ、板をこすってみる。
バーマンの指の動きに合わせて本がめくれるように地図が切り替わる。

バーマン「!」

次々とページをフリックしていくバーマン。
バーマンの目が徐々に見開いていく。
突然、バーマンは勢いよく顔をあげ、そして講堂と地図を交互に見比べる。

バーマン「おお!そういうことか!」
バーマンは声を上げると、ウエストに背を向け、
板を片手に兵士たちの待つ、エレベーターの前へと戻っていく。

ウエスト「…はあ」

ウエストはバーマンが立ち去ると肩の力を抜き、ホッとしたように
息を吐く。一方バーマンはエレベータの前に仁王立ちになり、
それから兵士たちの前に透明の板を突き出す。
板を覗き込む兵士たち。

バーマン「いいかお前ら、ここを目指すぞ!」

バーマンは黄緑の光が点滅する最深部を指差す。

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