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ノスタルジア1 -よくある冒険-

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ノスタルジア13

登場人物

こんなアニメが見たいと思って書いたシナリオです。
小説ともシナリオとも言い難い文章ですが、読んでもらえると嬉しいです。



木々が立ち並ぶ林の中。
軍服を身につけた沢山の人々が、忙しげに動き回っている。その中でも一際目立つ大柄な男、バーマン。そしてその隣には眼鏡をかけた女性、ハバナ。バーマンは眉間にしわをよせ腕を組みながら、そしてハバナはそわそわと落ち着かない様子で、その大きな崖を眺めている。

突然鳴り響く爆発音。
爆破の振動で地面は揺れ、突然の揺れに木々の枝にとまっていた鳥達が驚き、一斉に飛び去っていく。
軍服を身にまとった男がひとり、バーマンたちの方へと駆け寄ってくる。

バーマン「どうだ」

男に尋ねるバーマン。

男「駄目みたいです」
ハバナ「…」

バーマンと男のやりとりを、隣で聞いていた聞ハバナは、黙ったまま爆心地の方へ向かってと歩きはじめる。

男「あっ」

ハバナに気がついた男は声をあげる。

男「危ないですよ」

男の忠告を無視して、そのまま進むハバナ。
扉のような外観をした精工で真っ黒な造形物が、岩と岩の間からむき出しになっている。爆破の影響を直接受けたにもかかわらず、その巨大な造形物には傷ひとつついていない。ハバナは凛とした眼差しで、それに手を伸ばし、入念に調べ始める。不自然な窪みを見つけるハバナ。
そっとそれを押してみる。すると無機質な機械音をたてながら扉の一部分が変形し、真ん中に細く小さな窪みのある、小さい台が姿を現す。ハバナはその窪みに手を入れ、奥に触れようとしてみるが、
その窪みはハバナの、ふわふわとした毛に覆われた大きな4本指の手にはあまりにも小さすぎるため、その奥まで入れる事ができない。

ハバナ「これは…」

ハバナは眉をひそめ、そのくぼみと、それからくぼみの上に刻まれた、
不思議な形の記号・・・・・・・・を凝視する。



タイトル『ノスタルジア』


小さな田舎町。
大きなバケツを両手で抱えながら道に沿って歩くルー。
見渡す限りの畑で仕事をする男性や、風車小屋の近くで雑談をする女性など、村人達の営みが行われている。子ども達のにぎやかな笑い声にルーが顔をあげると、二人の子どもがルーの方へ向かってきている。ルーは顔を少しだけこわばらせ、それから片方の手をバケツから離し、その手で帽子を深くする。
しかし子ども達はルーに目もくれず、その隣をかけて行く。
子ども達が通り過ぎるのを確認すると、ルーは少しだけ頬を緩ませ、
ふたたび両手でバケツを持ち直す。

村人たちの集落と少しはなれた場所に小さな家が建っている。家の前。
ルーはドアの隣にバケツを置き、そしてドアのノブに手をかけ、ゆっくりと回す。
薄暗い部屋の中。
台所や机や暖炉、ベッドなどの必要最低限の家具が配置されているだけの、殺風景な室内。ルーは台所へ行き、シンクの上を通る壁配線に背伸びをしながら手を伸ばす。まもなく、じじじという音を立てながら部屋に明かりが灯る。
部屋が明るくなるとルーは安心して少し口角をあげ、それから両手で帽子を脱ごうとする。しかし、突然コンコンと扉を叩く音が家に鳴り響く。
ルーは帽子に手を伸ばした格好のまま一瞬だけ固まるが、すぐに手をおろし扉の方へ顔を向ける。


門口の前に立つ、一つの影。
遠慮がちにゆっくりとひらく扉。少しだけ開かれた扉の隙間から小さな男の子の不安げな顔がのぞく。男の子はルー。ルーは目の前の人物の足下に視線を向けていたが、やがてゆっくりと顔を上げる。
訪問者はルーのよく知った女性、シャム。
目が合う二人。シャムがルーに微笑みかけると、ルーは目を見開き、それからうつむいて、ほんの少しだけ頬を染める。


***


家の中。
部屋の真ん中に置かれた少し大きめのテーブルと、そのテーブルの対であるイスに腰掛けているシャム。シャムは少しぼんやりとした様子で、台所や暖炉やベッドなど、部屋中を眺めている。
手前でごとりと物を置く音。
シャムはテーブルに視線を向ける。テーブルには大きなコップが置かれており、
紅茶が注ぎ込まれている。
そして、その隣で少しはにかんだ表情で立っているルー。

ルー「どうぞ」

シャムはコップを手に取り、口元まで運ぶと「ありがとう」と言って微笑えんでからコップに口をつける。ルーは、ぱちぱちと目をしばたたかせながらその様子を見つめる。


***


夜。家の中。机を囲みながら談笑するルーとシャム。
机の上には少しだけスープの入った鍋や、からっぽの皿などが並んでいる。

シャム「ルーは機械に興味がある?」
ルー「機械…」
シャム「古代人が使っていた道具だよ」

ルーはピンとこないといった様子で目をしばたたかせる。

シャム「私がここに来る時にいつも乗っているバイク。
あれも機械のひとつ」
ルー「…」

ルーは家の近く停めてあるアリスのバイクを思い出し、
玄関口へと顔を向ける。

シャム「メインクーンにはね、」

シャムは静かな口調で話し始める。

シャム「私のバイクとは比べられない程の大きい機械もあるのよ。
前には大砲がついていて、バイクと違ってたくさんの人が乗れるの。
えっと、戦車って言うんだけど」
ルー「…それも走るの?」
シャム「もちろん」

前のめりなり、楽しそうに話を聞くルー。
シャムはルーから視線を逸らし、少しだけ顔を窓の方へ向ける。

シャム「ねえ、ルーはこの村だけじゃなく、色んな所に行ったり、色んなものを見たりしたいと思わない?」
ルー「…!」

シャムの問いに目を開き、それからルーは少しうつむく。
シャムは話を続ける。

シャム「もちろん、この村も素敵だけれど、外の世界にはもっと大きな町や自然があるの。
ルーは海を見た事がある?」
ルー「おじいちゃんは、僕はどこにも行っちゃいけないって」
シャム「…」

シャムは少しだけ眉をひそめるが、すぐに笑顔になり優しく問いかける。

シャム「…ルーは? ルー自身はどうしたい?」

ルーは顔をあげる。
ルーはまっすぐシャムを見据えながら答える。

ルー「僕はここが好き」
シャム「…」
ルー「それに、いつかおじいちゃんが帰ってくるかも知れないし…」

ルーの答えを聞いたシャムは目をふせて小さく微笑む。

シャム「うん、そうだね」


***


ルーが住む家から少し離れた丘の上。様子をうかがう三人男。
ウエストとワイヤーとチャーリィ。
双眼鏡でルーの家を覗くウエスト。その隣でそわそわしているワイヤー。チャーリイは二人の背後に駐車してある車の運転席でくつろいでいる。

ウエスト「あれだな」
ワイヤー「僕も見たいんだな!」

ワイヤーに双眼鏡を渡すウエスト。
双眼鏡を受け取るとワイヤーは興味津々といった風に覗き込む。
ワイヤーに双眼鏡を渡したウエストは立ち上がり、チャーリイがいる車へと向かう。

チャーリィ「来てくれるかしら」

チャーリィはウエストにたずねる。

ウエスト「無理にでもご同行願うさ」

そう言ってウエストは後部座席に乗せてある大きなリュックを見る。
つられてチャーリイもウエストの視線の先にある荷物に目を向ける。

チャーリィ「そうね」

ウエストは荷物から視線をはずし、
そしてルーの家の方がある方向に顔を向け、つぶやく。

ウエスト「決行は、明日の明け方だな」

明け方。ルーの家。室内。
ベッドに潜るルーと、少し離れた場所で座ったまま眠っているシャム。
ルーは布団の中でも大きな帽子と手袋をしっかりと身につけている。
シャムのことが気になり、いつもより早く目が覚めてしまうルー。
ルーはシャムがいる方向へ寝返りをうち、その姿を確認する。
座ったままの状態で寝息ひとつ立てずに眠るシャム。
シャムを確認したあとルーはベッドに潜ったまま、窓の方へと身体を向ける。
外の景色を眺めながら昨晩のシャムとの会話を思い出し、少し顔を曇らせるルー。
ルーは気を紛らせようと、ぼんやりと景色を眺めていたが、外でうっすらと煙があがっていることに気がつく。煙をよく見ようと身体を起し、窓に顔を近づけるルー。
あっという間に煙は広がり、窓によって隔たれられた外部はほとんど見えなくなる。そしてそれから、突然ぱんぱんという破裂音が鳴り響く。
ルーを驚いて体を仰け反らす。その音を聞いて勢いよく目を見開くシャム。
続いて大きな爆発音が響く。

外。ルーの家から少し離れた場所。
車の座席に腰をかけ、家の様子をうかがう3人の男。
ルーの家からは沢山の煙が立ちこめているのが見える。
その様子を見て呆れるチャーリイ。

チャーリィ「やりすぎじゃない?」
ウエスト「これぐらいがちょうどいいんだよ」

チャーリイは呆れ気味にウエストを横目で睨むが、当のウエストはチャーリィを無視して平然と車からおりる。

ウエスト「チャーリイ、お前はここで待機だ」
チャーリィ「…はあい」
ウエスト「いくぞワイヤー」

ルーの家へ向かってだらだらと歩き始めるウエスト。
ワイヤーも車から降り、ウエストのあとへとつづく。


***


ルーの家。
煙で視界が悪いが、ルーの家はところどころ倒壊しているのが確認できる。
ウエストとワイヤーは家の手前で立ち止まる。

ワイヤー「僕もやりすぎたと思うんだな」
ウエスト「うるせえ」

家の敷地へ足を延ばすウエスト。突然ワイヤーはウエストを引き止める。

ワイヤー「…ねえ、ウエスト。この家にいるのって本当にその子と女の人だけだよね?」
ウエスト「もちろんだ。女の方はほっとけよ」

ワイヤーは顔を上げルーの家を見つめる。
家は煙にまみれてほとんど確認することができない。

ワイヤー「なんだか嫌な予感がするんだな。
ウエスト、その女の人ってメインクーンの…」

ウエストは苦笑する。

ウエスト「おいおい、まさかーー」

ウエストが口を開こうとしたそのとき、煙の中から人影が勢い良く飛び出してくる。
人影はシャムとルー。シャムの腕には目を見開いたルーが抱えられている。
空中を駆けるシャム。そしてそれを驚いた様子で見上げるウエストとワイヤー。
シャムは片足でワイヤーの顔面へと勢いよく着地し、そして軽い足取りで地面に降りると、そのまま走り去って行く。
ぽかんと口を開けて、立ち尽くすウエスト。
しかし、すぐにウエストは気を取りなおす。

ウエスト「くっそー!」

一方、ワイヤーはぱたんと仰向けに地面へと倒れる。


***


ルーの家から少し離れた場所。
運転席で肘をつきながら、少しばかり船をこぐチャーリイ。
突如、けたたましいエンジン音が車の横を通りすぎる。
慌てて体を起こし、音の方向へと鼻先を向けるチャーリイ。
そこはバイクへとまたがるシャムとルー。
シャムの背中につかまるルーを見つめながら、チャーリイは目を細める。

チャーリイ「え、あれって.....」

間もなくチャーリィの元へウエストとワイヤーがやってくる。
ウエストの姿を確認し、車から身を乗り出すチャーリイ。

チャーリィ「ねえ! ちょっと、今.....」
ウエスト「わかってる!」

素早く車へと乗り込むウエスト。しかしワイヤーは車に乗る動作もおぼつかなく、のろのろとしている。

ウエスト「いそげえ!」

癇癪をおこし、車のボディを思い切り叩くウエスト。

ルーの村から離れた平原のような場所。
バイクへとまたがるアリスとルー。
ルーはアリスの腰に両手をまわしている。

シャム「しっかりつかまってて」

腕に力を込めるルー。

シャム「もっとしっかりつかまって」

シャムは一瞬だけハンドルから手を離し、ルー両腕を引っ張る。
ルーの体がシャムの背中にぴたりとくっつく。アリスの体温を感じて
頬を上気させるルー。シャムはルーが捕まったのを確認すると、
バイクの速度を思いっきりに上げる。
突如、シャム達のすぐ近くの茂みの中から、車が横滑りに飛び出してくる。
乗っているのはウエストとチャーリイ、そしてワイヤー。
横目で車を確認し、顔をしかめるシャム。
車はシャムたちの真横へとやってくる。
ハンドルを握るチャーリイ。その後ろの座席で、
巨大なマジックハンドのような奇妙なおもちゃをかまえているウエスト。
ワイヤーはウエストの隣で顔を冷やしている。

ウエスト「よし、もっと近づけろ」

3人の男たちが乗る車はスピードを上げ、徐々にルーたちへと近づく。
ルーは3人が乗る車へと顔を向け、その様子を一瞥し、
そしてすぐにアリスの背中へを顔をうずめる。
徐々に距離を縮める車。
力一杯、アクセルを踏み込むシャム。
スピードが上がり、バイクは一気に前へと出る。
強い風の抵抗を受けるルーとシャム。
ルーは目を閉じ、強く力を込めながらシャムにつかまる。


ウエスト「チャーリィ!」
疾走するアリスたちを見てウエストが叫ぶ。
エンジンの出力を上げ、車を加速させるチャーリィ。

ワイヤー「うわっl」

ワイヤーが小さく悲鳴を上げる。

強い風の抵抗を受けつつも、まっすぐ前を見据えながら走るシャム。
シャムの身体につかまるルー。
ウエスト達の車から発せられたエンジン音が、
徐々にシャム達の背後へと迫る。
突然、シャムは自分自身の身体が軽くなるのを感じる。
慌てて振り返るシャム。背後にはウエストが操作する巨大なマジックハンドの手に抱きかかえられるようにつかまれて空高く浮くルーの姿。

ウエスト「よおし、このまま逃げるぞ!」
チャーリィ「了解!」

車は瞬く間にUターンし、シャムのバイクからは猛スピードで離れていく。
シャムは空中へと浮くルーを見て一瞬あっけにとられていたが、
直ぐに気を取り直し、ウエストたちの方へとバイクを走らせる。

ウエスト達の車のすぐ後ろを走るシャム。
マジックハンドに挟まった状態で宙づりになっているルー。
その巨大なマジックハンドの長さは数メートルほどあり、
シャムからは、到底とどきそうにない高さでルーはぶら下がっている。
シャムの様子を不安げな様子で見下ろすルー。

ウエスト「来やがったな」

車に背後に張り付くシャムを確認し、ウエストはマジックハンドをワイヤーへと渡し、それから、すぐに荷物をさぐる。
ウエストは、マジックハンドとは別に拳銃のような形をした奇妙なおもちゃをリュックから取り出す。
その奇妙なおもちゃの銃の発射口からはボクシンググローブが伸びている。銃口をシャムの方へと向けるウエスト。
シャムはバイクを運転しながら横目でウエストの様子をうかがう。
引き金を引くウエスト。グローブがシャムの顔に向かって、
まるでバンジージャンプをするかのように勢いよく発射される。
シャムはハンドルを握る手に力を込め、両足を宙へと持ち上げる。
そして素早く両足をバイクのシートに着地させ、勢いよくシートを蹴り、
グローブが自身に届く前に、シャムは空へと舞い上がる。
その様子を見てポカンと口を開けるワイヤーとチャーリィ。
ウエストも他の二人と同様、驚いた表情でシャムを見上げていたが、
すぐに気を取りなおし、ズボンのポケットに乱暴に手をつっこむ。
シャムは空中で舞いながら、腰にぶら下げていた剣を引き抜く。
右手を振り上げ、ルーを捕まえているマジックハンドの手の付け根に向けて刃を力一杯振り下ろすシャム。衝撃で分解する巨大なマジックハンド。
ルーは反動で浮き上がる。


一方、ウエスト。
ウエストは、急いでポケットから親指ぐらいの小さな機械を取り出す。
ルーに向かって機械のボタンを押すウエスト。機械からはピンのような物が発射され、小さなピンはルーの帽子にしっかりとくっつく。

マジックハンドから解放され、地面に向かって落下するルー。
シャムは握っていた剣を地面へと放り投げ、ルーを両手で抱きとめる。
地上では、シャムのモーターバイクはぐらぐらと絶妙なバランスを保った無人のままで走り続けている。
シャムは空中でルーを脇に抱えると、バイクのハンドルに向かって
手を伸ばし、シートへと着地する。

着地と同時に猛スピードでバイクを発進させるシャム。
ルーはハンドルとシャムの間に挟まれている。

ルー「…」

シャムを見上げるルー。
ルーの視線に気がつき、シャムは少し困ったように微笑む。

シャム「ごめん、ちょっと狭いけど我慢してね」

バイクはみるみるうちにウエスト達から遠ざかる。
バイクが遠のいたことで気を取りなおすチャーリィ。
チャーリィ「お、追うわよ!」
アクセルを強く踏み込むチャーリィ。ワイヤーはまだぼんやりとシャム達の背中を見つめている。

ウエスト「…」

厳しい視線でバイクを見つめるウエスト。
シャムたちに向かって勢いよくスピードを上げる車。
しかし車がスピードを上げたのと同時に、シャムに壊され、
地面へと散らばったおもちゃの切れ端が、
ウェスト達の車に煽られて浮き上がる。
おもちゃの残骸の一部が3人の乗る車のタイヤの間へ滑り込む。

ウエスト「うおっ!」
チャーリィ「ちょっと、何!」

回転しながらうしろへ下がる車。
しだいにウエストたちの姿は見えなくなり、
遠くでがしゃんという音が響く。
そしてそれを追うようにあたりに爆発音が響き渡る。


#創作大賞2023 #ファンタジー小説部門

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