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ノスタルジア11 -機械の遺跡 前編-

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ノスタルジア13


遺跡の中。
細くて長い階段をまっすぐ降りるハバナたち一同。

ハバナ「…」

誰も声を発することなく、足音だけが響く。先頭を歩くハバナ。
ハバナの後ろにずらりと並ぶ兵士。列の最後尾にはルーとシャム。
ルーはふと立ち止まり、そして来た道を振り返える。
奥にほんのかすかな地上の光が見える。

ルー「…」

目を細めるルー。

シャム「大丈夫?少し疲れた?」

シャムは足を止め、ルーを覗き込むように体をかがめる。

ルー「ううん、大丈夫」
シャム「本当に?...しんどくなったらいつでも言ってね」
ルー「うん」

ルーはうなずき、そしてまた歩き続はじめる。

シャム「…」
少し眉をひそめてシャムは、ルーの背中を見つめるが、
すぐにまっすぐ前を向き、ルーの後に続く。


***


大広間ような場所。真っ暗で懐中電灯なしにはほとんど何も見えない。

ハバナ「あら?」

ハバナは右足で慎重に地面にを確認した後、周りを見渡す。

ハバナ「階段はここで終わりかしら?」

ハバナの背後から兵士達がぞろぞろと広間に入室する。
兵士たちは散り散りになり、懐中電灯を片手に壁に手を当てるなど、
辺りを調べ始める。

兵士「長い階段でしたね」

兵士の1人がハバナの隣へとやってくる。

ハバナ「そうねえ…」

腕を組み考え込むハバナ。

兵士「…」

兵士はハバナから視線を外し、階段の方へと懐中電灯を向ける。
細長い階段が地上へと続く。途中にはまだ階段を降りている最中の
ルーとシャムがうっすらと見える。兵士は視線をハバナへと戻す。

兵士「このままでは何も見えないので、もっと大きいライトを
準備しますね」

兵士はそう言うとリュックを地面に下ろし、それからリュックを探る。


***


そのころ、ルーとシャム。
ルーはシャムに背中を支えてもらいながら階段を降りている。

シャム「見てルー、もう少しで階段が終わるみたい」

ルーは顔を上げる。階段の先には暗闇が広がっていて、
うっすらとハバナや兵士たちの姿が確認できる。

「…」

ルーはシャムと顔を見合わせた後、シャムの手を離れ階段を駆けおりる。
後に続くシャム。最後の段を越え、ルーは真っ暗な大広間へと
足を踏み入れる。

兵士たち「!?」

突然、広間全体に明かり灯る。
リュックを探っていた兵士が驚いて立ち上がり、あたりを見回す。
先ほどまでの暗闇が嘘のように明るくなる大広間。
ざわめく兵士たち。ルーに兵士たちの視線が集まる。

ルー「…」

ルー少しバツが悪そうに眉を下げ立ち止まる。
ルーに向かって勢いよく飛びつく影。

ハバナ「すっごい!!」

ハバナはルーを軽く抱きしめたあと、
満面の笑みでルーの手を取り、飛び跳ねる。

ハバナ「すごい!すごいじゃない!やっぱりこの機械はまだちゃんと
動いてるんだわ。本当に君がいてくれてよかった!」
ルー「…」

ルーはハバナと手を取りながら、少しだけはにかむ。
少し不審そうに見つめるルーを見つめる兵士たち。
シャムはルーたちの後ろで、眉をひそめ、探るように周りを見渡す。


***


手を触れ、丁重に壁を調べるハバナと兵士たち。
広間を覆う黒く無機質な素材を眺めながら歩くシャム。

ハバナ「うーん…」

ハバナは顎に手を当て唸る。ルーはシャムの近くで、興味津々といった
様子で壁を覗き込む。反射し、真っ黒な壁にはうっすらとルーの顔が映る。
そっと壁に触れるルー。ひんやりとした壁の温度が
手袋を通してルーへと伝わる。

ハバナ「これは何かしら?」

ハバナの声が広間に響く。兵士たちがハバナの方へ振り返る。
顔を上げるシャム。ルーも壁から手を離し、ハバナの方へと顔を向ける。
ハバナは小さな四角いでっぱりを指差した後、それから高く遠い天井を
指差す。ハバナが指し示した先には巨大なスクリーンが見える。
スクリーンは天井近くにあるため、触れることができない。

ハバナ「そうねえ…」

ハバナは四角のでっぱりとスクリーンを交互に眺め、
それから勢いよく顔を上げる。

ハバナ「ねえ、ルー!ちょっとこっちに来てくれる?」
ルー「…」

ルーはシャムに視線を向ける。シャムはルーと目があうと小さく頷く。
ルーはシャムの反応確認すると、ハバナの元へと駆け寄る。

ルー「どうしたの?」

ハバナを見上げるルー。

ハバナ「ちょっといいかしら?」

ハバナはルーの背後に回り込んでからしゃがみこむ。

ハバナ「よいしょっと」

ふらつきながらルーを抱き上げるハバナ。
ハバナはフラフラしながらルーの鼻先を小さな箱のようなものに近付ける。

ハバナ「これっ…!ちょっと触ってみてくれない…?」
リー「…!」

目を見開くルー。それからルーはキョロキョロと周りを見渡す。
少し離れた場所からハバナたちを見つめる兵士たち。

ルー「…」

ルーはうつむき、右手を覆う手袋を眺める。

ハバナ「は、早く…!」

下からハバナの震える声が響く。
ルーは意を決して、手袋を外し、素早く壁の四角い出っぱりに触れ、
そしてすぐに手袋を身につける。

ルー「触ったよ」

ルーを下ろすハバナ。
それからすぐにハバナは前かがみになるゼイゼイと息を切らす。

ルー「…」
ハバナを覗き込むルー。ハバナは息を切らせながらも顔を上げ、スクリーンを見上げる。

ハバナ「…」

息を吐きながら、真剣な眼差しでスクリーンを見つめるハバナ。
ハバナにつられて、ルーもスクリーンに顔を向ける。
突然、全く違う方向から機械音が鳴り響く。
ルーとハバナはスクリーンから視線を外し、ほとんど同時に音の方へと
顔を向ける。壁の一部がスライドし、巨大な入り口が現れる。

兵士たち「…」

兵士たちやシャムの視線も入り口の方へと注がれる。

ハバナ「あら…?」

スクリーンと四角のでっぱりを交互に眺め首をかしげるハバナ。
少し俯いて考え込むがすぐに勢い良く顔を上げる。

ハバナ「行きましょう!」


***


入り口を越えた先にはとてつもなく長い廊下が続いている。
壁には一定の間隔で配置されているたくさんの扉と、
扉の隣にある四角の箱のようなでっぱり。天井には設置されたライトが輝き、廊下を明るく照らしている。
長い廊下を覗き込む一同。

ハバナ「わあ…!」

ハバナが歓喜の声を上げる。

ハバナ「すごく距離があるわね」

ハバナが楽しそうに笑う。

シャム「先が長くなりそうですね…」

シャムは永遠と続く廊下と扉を眺めながら呟く。
ハバナとシャムの間で、頬を紅潮させながら廊下を見つめるルー。
ハバナは少し屈んで、ルーに笑いかける。

ハバナ「わくわくするね!」
ルー「うん…!」

頷くルー。ハバナはルーに目配せしたあと、廊下に足を踏み入れ、
それからどんどん先へと歩いていく。
他の兵士たちも天井や壁を確認しながら恐る恐るハバナに続く。
ルーとシャムもハバナや兵士達に続いて、細長い通路へと足を踏み入れる。

一番近くにある扉の前に立ち止まるハバナ。ハバナは扉を様々な角度から
眺め、それから扉のすぐ近くの四角いでっぱりをつつく。

ハバナ「ルー!」

ルーはハバナの方へと顔を向ける。
四角いでっぱりを指差しながら手を振るハバナ。

ハバナ「これ、お願いー!」

バナナに駆け寄るルー。シャムもルーのあとに続く。

ハバナ「ね、これまた触ってみてほしいのだけど…」

ハバナは少しかがんでルーに囁いたあと、シャムの方へと顔を向ける。
目を瞬かせるシャム。シャムは、ハバナとルーを交互に視線を向け、
それからルーの背後へ回る。

シャム「ルー、いいかな?」
ルー「うん」

ルーが頷くと、シャムは少しかがんでルーを抱え、そして持ち上げる。

ルー「…」

目の前の四角の箱を見つめるルー。

シャム「今なら大丈夫」

シャムがルーの耳元で囁く。
ルーは素早く手袋を外し、外した手袋で手を隠しながらでっぱりに触れる

ハバナ「…」

二人の様子を真剣な眼差しで見守るハバナ。
小さな電子音を立てながらでっぱり点灯する。

ルー「うわっ」

ルーは小さく悲鳴をあげて箱から手を離す。

ハバナ「何が起こったの?」

四角のでっぱりに鼻先を近づけ凝視するハバナ。ハバナにつられて
小さな箱を見つめるルーと、ルーの背後から覗き込むシャム。
箱には何かの記号のようなものが表示されている。

“ようこそ、生体情報の登録を開始しますか?”

ハバナ「何かしらこれ?」

でっぱりを突くハバナ。画面が変わる気配はない。

ハバナ「うーん。ねえルー、もう一回これ押してもらってもいい?」

ルーは小さくうなずき、再度小さな箱に手を置く。

“認証パネルをタッチしたままお待ち下さい。”

ルーが箱に手を当てると、画面の記号が変化し、
そして画面が不規則に動き始める

ハバナ「…」

真剣な眼差しで画面を見つめるハバナ。
ルーは箱に手を当てたままハバナと画面を交互に見る。
突然、画面から短い電子音が響く。

ルー「うわっ」

ルーは再び悲鳴をあげ、手を離す。画面には先ほどとは
違う記号が浮かんでいる。

“登録が完了いたしました。
ユーザーを変更する場合は、カウンターにて初期化の手続きを承ります。”

ハバナ「…」

顎に指を当て、画面を見つめるハバナ。ルーはハバナの方を見る。

ルー「ねえ、ハバナ。これ何だろ…」

ルーが言い終わるのよりも早く、扉が左右にスライドし、そして開くドア。

ルー「…あっ」
ルーが声を上げ、扉の方へと顔を向ける。ルーの声に合わせて同じく向けるハバナ。

ルー「空いてる…」

小さくつぶやくルー。

ハバナ「…」

ハバナは、眉間にしわを寄せたまま開かれた扉を見つめるが、
すぐに破顔する。

ハバナ「行こ!」

明るい声を上げ、部屋の中へ足を入れるハバナ。

ルー「…」

ルーを抱えたまま、きょとんとした様子で立ち尽くすシャム。
シャムの方へ顔を上げるルー。シャムはルーの視線に気がつき、
すぐにルーを地面へと下ろす。
地面に足がつくと、ルーは、すぐさま部屋へと駆け込む。
シャムは少し周りを確認し、それからルー後に続く。


***


小さくこじんまりした部屋。ベットと小さい机にクローゼット、
それから真っ白な箱が床に置かれている。
あたりを見回しながら部屋の中を歩き回る3人。
シャムは膝もとのベッドに手を置く。

シャム「…これはベッドですかね?」
ルー「じゃあこれは机かな?」

ルーは小さな机の引き出しを引っ張り、そして中を覗き込む。
引き出しには何も入っていない。
ハバナもルーの開けた引き出しを覗き込む。

ハバナ「何も入ってないわねえ」
シャム「なんだか、私たちが使っているものと
あまり変わらないように見えますね」

シャムはベッドや机の周りを歩き回りながら呟く。

ハバナ「こっちの箱は何かしら?」

ハバナは床に置かれた小さな白い箱を指差す。箱に駆け寄るルー。
ルーはしゃがんで、箱をじっと見つめる。

ハバナ「ちょっとごめんね」

ルーの背後からハバナの手が伸びる。
ハバナは小さな箱の取っ手をつかみ、それから引っ張る。
簡単に開く箱は。

ルー「うわ、冷たいっ」

箱の中ら冷気が流れ出し、ルーの顔に直撃する。顔をこすりながら、
箱から離れるルー。一方ハバナはしゃがんで、小さな箱に顔を近づる。
中を覗き込むハバナ。中には何も入っていない。

ハバナ「…」

ハバナは小さな箱の蓋を閉め、それから無造作に両手で箱をつかむ。

ルー・シャム「…」

ハバナの様子を見つめるルーとシャム。
持ち上げようと、力一杯引っ張るハバナ。
しかし箱が床から離れることはない。

ハバナ「あー、ダメ。無理」

小さな白い箱から離れ、それからハバナはベッドに腰をつけ、
手で顔を仰ぎながら息を切らす。

ハバナ「はあ、これはこれで面白いのだけれど…、
でもまあ、後回しでいいわね」

姿勢を正し立ち上がるハバナ。

ハバナ「さ、次に行きましょ」

ハバナは出口へと視線を向ける。


***


遺跡周辺。
遺跡に向かって堂々と足を進めるバーマンとそのあとに続く兵士たち。遺跡の周りで作業をしていた兵士たちがざわめく。動揺する作業員たちをよそに、バーマンとその部下たちは
機械の扉の前にずらりと並ぶ。巨大な扉の前で、
バーマンは大きく胸を張りながら部下たちに向かって演説を始める。

少し離れた茂みに身を潜め、バーマンたちの様子を伺うウエストと
チャーリィとワイヤー。
3人の中でウエストだけがメインクーンの軍服を着込んでいる。

ウエスト「なーんか言ってやがるな」

ウエストは望遠鏡でバーマンを眺めながら呟く。

チャーリィ「ね、本当に行くの?」
ウエスト「ああ、このままじゃ大損だからな。わざわざこんな辺境まで
来て、車がボロボロになって終いじゃやってらんねーだろ」
チャーリィ「それはそうだけど…」

顔をしかめるチャーリィ。

ワイヤー「うんうん。それにルーのこともほっとけないし…」

ウエストの隣で満足げに頷くワイヤー。

チャーリィ「…」

チャーリィはもの言いたげな目でワイヤーを睨む。そっぽを向くワイヤー。
ウエストは二人の様子には全く意に介さず、双眼鏡を覗き続ける。

ウエスト「おっ、終わったみたいだな!」
立ち上がるウエスト。
チャーリィとワイヤーはいがみ合うのを止め、ウエストへ顔を向ける。

一通り話したのち,バーマンは勢いよく踵を返し、そして扉への中へ入っていく。
規則正しい動きで、後に続く部下たち。ウエストはバーマンが遺跡に
入っていくのを確認するとチャーリィに双眼鏡を手渡す。

ウエスト「よし」
チャーリィ「気をつけてね」
ワイヤー「うん、危なくなったらすぐに帰ってくるんだな」

ワイヤーはウエストにメインクーンの軍服の一部である帽子を手渡す。
ワイヤーから帽子を受け取り、頷くウエスト。

整列しながらまっすぐ遺跡を進む兵士たち。慌てて後からやってくる1人の
兵士。ウエスト。ウエストはそのまま最後尾へと並ぶ。

兵士「…」

1人の兵士が、遅れてやってきたウエストに怪訝そうな視線を向ける。

ウエスト「…」

兵士の視線に気がついたウエストは、
汗を滲ませ、帽子を深くし、少し俯く。

兵士「…」

兵士は目を細めながらウエストを探るように見つめていたが、
すぐに視線を外し、特に何かを言及することなく、
遺跡をまっすぐ進み始める。

ウエスト「…はあ」

安堵し、大きく息を吐くウエスト。

ウエスト「いきなり見つかったのかと思ったぜ」

ウエストは小さく呟いた後、顔を上げ前を確認する。列の先には
胸を張り行進するバーマン。
バーマンの背後にずらりと兵士たちが続く。
バーマンの部下たちにまざり、入り口の階段を降りるウエスト。


***


遺跡の中。小さな部屋。
部屋にはベッドと机、そして小さな箱が設置されているだけで、
ルーたちが一番最初に入った部屋とほとんど同じ構造。
部屋を歩き回るルーとハバナとアリス。
ルーは小さな箱に駆け寄り、蓋を開け、手を入れる。

ルー「冷たっ」

すぐに手を引き抜き、蓋を閉めるルー。
アリスは机の引き出しを開け、そして中を覗き込む。
先ほどの部屋と同じく中には何も入っていない。

ハバナ「どの部屋も全く同じね…」

ため息混じりにつぶやくハバナ。ハバナは空っぽの引き出しを見つめる。

ハバナ「…なにかこう、せめて設計図とか資料的なものでも
残ってれば嬉しいのだけど」
シャム「まあ、先はまだ長いですし」

シャムは少し困ったように笑いながら、ハバナをなだめる。

ハバナ「そうねえ…」

ハバナは腕を組みながら扉の方へと歩き、そして部屋から顔を出す。
廊下の壁一面にずらりと並ぶ扉。

ハバナ「…まさか本当にどの部屋も、全部同じなのかしら?」


***


2列になり、階段を降りるバーマン一派。
規則正しく腕を動かし、列の先頭を1人歩くバーマン。兵士たちも同じように規則正しく並びながらバーマンのあとに続く。
最後尾にはあたり見回しながら階段を降りるウエスト。

ウエスト「…」

ウエストは立ち止まり、壁をじっと見つめる。

兵士「おいっ」

突然、ウエスト脇腹を小突かれる。慌てて前を見るウエスト。
入り口でウエストを凝視していた兵士が仁王立ちになっている。

兵士「あんまりキョロキョロするなよ」

兵士はウエストを軽く睨む。
帽子を深くし、顔を隠すウエスト。

ウエスト「お、おう。悪い」

ウエストは縮こまりながら、列の最後尾へと戻る。兵士はウエストが
列へ戻ったのを確認すると自分も列の中に入る。
2人並んで階段を降りるウエストと兵士。
兵士は小声でウエストに囁く。

兵士「お前、新入りだろ?」
ウエスト「え?」

ウエストは目を丸くし、兵士の顔を見るが、すぐに視線を逸らす。

ウエスト「ああ…、最近入ったばかりで…」

視線を泳がせるウエスト。

兵士「やっぱり。うちの部隊は入れ替わりが激しいからな」

1人で満足げに頷く兵士。

兵士「隊長はここ最近、特に気が立っていてな。今はいつもより
ピリピリしてるだけなんだ。だからそんなに緊張しなくても大丈夫だ」
ウエスト「はあ…」

気のない返事をするウエスト。

兵士「…」

兵士は不服そうに眉をひそめ、それからまたまっすぐ前を見て歩き始める。
黙って階段を降りる二人。

ウエスト「あの、何でまた?」

ウエストが兵士に問いかける。

兵士「え?」

目を少し見張りながらウエストの方へと振り返る兵士。

ウエスト「いやあの、気が立ってるっていう…」

ウエストは帽子で顔を隠しながら、気まづそうに顔をそらす。

兵士「ああ、」

兵士はウエストの質問を察し、少し顔を仰ぎながら話し始める。

兵士「本来、この遺跡は俺たちの部隊が担当だったんだがな」

ウエストに顔を近づけ小声で囁く兵士。

兵士「でも今はシャム准士官が指揮を担当しているだろ?」
ウエスト「…」

眉をひそめるウエスト。

兵士「シャム准士官っていうのは財政部の方だよ」
ウエスト「シャム准士官…」
兵士「とにかく、この遺跡を、我々の軍部と財政部のどちらの管理にするか上層部で揉めていてさ。 …ハバナ博士も今はどちらかといえば
准士官の方に信頼を置いてるようだし」

兵士は周りを確認し、それから小声てつぶやく。

兵士「…遺跡の内部が調査できるようになったのは、
おそらくシャム准士官の功績だろうしな。とにかくさ、
この仕事が終わるまで、我らが隊長は気が気じゃないんだよ」
ウエスト「…なるほど」

ウエストは顎に指を当てる。

兵士「まあ、この仕事が終われば、今よりは気楽になるから大丈夫さ」
ウエスト「…そうっすね」

話が終わり、まっすぐ前を向いて歩き始める二人。

ウエスト「遺跡を取り合ってるのは、
ボルゾイとメインクーンだけじゃないのか…」

ウエストは小さく呟く。

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