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無口な歌詞

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あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2021年4月の記事一覧

ジントニック

ジントニック

積もる話の棒倒し
大事なところを
崩してしまわないよう
壊してしまわないよう
遠くなったタケナワ
.
空いたグラスを
何度も口へ運ぶものだから
そろそろかってね
.
最後の一杯
ジントニック
頼む唇が少し震える
きっと明日には
思い出せるものも
多くはないと
置いた手に重なったのは
同じ温度の他の肌色
.
.
最後の一杯
ジントニック
緩むネクタイに軽く零れる
きっとこれから
口火を切ることが

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試着室

試着室

いつになく心細いのに
いつになく清々しい
いよいよ自分が
よく判らなくなる
.
差し込まれた衣装に袖を通す
着せ替え人形になっても
表情が見つからない
.
ハローハロー
ハローハロー
増えるばかりのバリエーション
溢れ返るのはクローゼット
泣きそうな曇り空
ハローハロー
ハローハロー
消えるばかりのイミテーション
花が開くのはリローデッド
転けそうな下り坂
.
.
いつになく涙脆いのに
いつになく

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98%

98%

忘れられたように
誰かの家の窓辺から
こちらを見ている
あの人形の瞳が
誰かに似ている気がした
.
そうか
今朝の歯磨き
すすいだ後に上げた顔
.
彼女は淋しくしていたか
私がそう思っただけか
窓にもたれて眺める街並み
立ち止まっただけで
初めから知らないふりをして
こぼさないように
また笑う私たち
.
.
忘れられたように
静かな部屋のテレビから
だらだら流れる
再放送のドラマを
ぼうっと見ない

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stars

stars

世界地図をひろげて
目を瞑ったまま
指を落とした場所
それが海の真ん中だとしても
何だか愛おしく思えた
.
限りある星と
憶えきれない星を
線で結んだだけ
.
世も末と
誰に言われたの
ここに来ても
まだそう思うの
大きな影を夜と呼び
明るい嘘を朝と呼ぶ
ならばまだ
名を知らないだけ
そんなものばかりだろう
.
.
高いビルを見上げて
手を伸ばしたまま
風を掴んだこと
それがただの妄言だとしても

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君の日

君の日

何も言わなくていいよ
今日は黙っていよう
その方が感じることも多い
.
何も知らなくていいよ
今日は笑っていよう
その方が見つかるものも多い
.
空っぽの手の平で伝えたいのです
.
心を込めて目一杯
叩くたびに響く揺れる
言葉から洩れた
大事に返したいこと
世界の時計を一秒間止めてでも
送りたかった気持ちの分
長くなる喝采
おめでとう
.
.
誰も行かなくていいよ
今日は迷っていよう
その方が出逢

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祭り

祭り

手をかけるほどに
手放したくはなくなる
悪いひとだね
いつまででもきっと
.
青いリボンだけ
綺麗に外せば
あとの祭り
.
わた菓子はなく
金魚すくいも
射的やくじ引きも
浴衣の君だって居ないから
つまらなそうにする
そのままのふたりから
ほどけてゆく影
消えるまで
.
.
目をつけるほどに
見透かしたくはなくなる
駄目なひとだね
いつまででもずっと
.
服のボタンから
静かに外せば
あとの祭り

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夜

信じていたはずの
真っ暗な空が
優しいだなんて
片耳だけがまだ熱い
.
憶えていたまでの
真っ青な歌が
正しいだなんて
片耳だけがまだ熱い
.
狭いリノリウムの廊下
あの鳥になれるのならば
もう半分も掴まえられますか
.
不安定な周波数に乗って
この夜が波打つ間際
帰りたくなかった街だから
余計に輝いて見せるんだ
だからせめて
一番綺麗な思い出にするの
一番小さな月になるの
.
.
抱えていたはず

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少年

少年

福神漬けを買い忘れる
でもまあ別にいいかって
まっすぐに帰って
昨日のカレーを食べる
.
日々がそんなもので
出来上がっていることを
知るまでの青春
.
莫迦にできない程の数の夢が
今日も使わずに捨てられる
上げ過ぎた棚はもう届かなくて
いつぞやに飾った写真の中
埃をかぶって笑っている
少年に訊く
.
.
大事なことを言いそびれる
でもまあ次もあるかって
あっさりと切り替え
溜まったドラマを流す

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NEXT DOOR

NEXT DOOR

砂場に建設した
自慢のお城が
雨で壊れてしまった
誰かのせいじゃなくて
よかったとも思った
.
煙草を吸いながら
ベンチに座る
顔を向けた先に懐かしい形
.
数ではないが
確かなもの
幾度となく繰り返される
その途中だったんだ
あの日も今日も
そんなことばかりだけれど
愉しかった
それだけは僕のもの
.
.
砂場に開通した
地下のトンネルが
雨で崩れてしまった
誰かのせいじゃなくて
よかったとも思

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すきなもの

すきなもの

せかいの大きさは
あなたの大きさ
見よう見まねだって
りっぱな勇気
.
じょうろの雨がふって
くもの巣がきらり
よく見ると虹
.
たすけあって育つ
小さなせかいで
自由はだれのものでもない
ちゃんとつかれた夜に
ふとんの中でねむれるなんて
こっそりにやけちゃうよ
おやすみなさい
.
.
せかいの優しさは
あなたの優しさ
かって気ままだって
すてきな勇気
.
いっしょの月を見れば
すんだ目にきらり

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とも

とも

苦手な帰り道は
どこまでも長くて
また明日もあるのに
肩を落として歩く
.
三つ目の曲がり角に来て
ふと立ち止まったら
動けなくなった
.
もう二度と
バイバイを言わないように
このまま窓を締めて
淋しさから逃げ切りたい
似たようなことを
思ってくれる人が他に
居るとすれば
それこそ僕も一緒に逃げたい
.
.
見知らぬ分かれ道は
まだ心細くて
面影もないのに
背中を追って走る
.
四つ目の曲がり角

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DAN DAN DAN

DAN DAN DAN

あーあ、やっぱり
ココアにすればよかった
そんなことばかりだよ
ずっとこれから
.
手の平ではおさまらないから
左右のポケットも
後ろのポケットにも
パンツの中でも入れたんだ
ほかほかの秘密
.
泣いてしまえばいい
笑えるようになるまで
泣いてしまえばいい
笑えるようになるまでは
ずっと傍に居るからさ
いつまでも
何回でも
間違えてやろうぜ
.
.
あーあ、やっぱり
バニラにすればよかった
似たこ

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Lose Rose

Lose Rose

泣けと言い聞かせれば
際限もないのに
涙を止める芝居は
未だに上手くならなくて
.
間延びする夜は
季節と反比例
少しずつずれてゆく
.
色のない涙は
冷たくて
音のない涙は
重たくて
どうすることもできないと
もうそのまま寝てしまう
泡沫の夢の中では
せめて安らかであれと
願いながら
.
.
待てと言い聞かせれば
躊躇いもないのに
歩みを止める理由は
未だに見つけられなくて
.
背伸びするバラは

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猫の額

猫の額

こんな日は
決まって怪我をする
些細な切り傷が
やけに痛くて
口走りそうになる
言葉が控える心
.
測ったことはないですが
猫の額ほどの
狭さなのでしょう
.
深呼吸をしたって
まだ足りない
好きなお菓子を食べても
まだまだ足りない
自分の機嫌の取り方を
誰かが知っている訳もないから
気が乗らなくたって
過保護に可愛がってあげる
こんな日くらいは
.
.
そんな目に
合っても莫迦にする
腐した言い

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