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無口な歌詞

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あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2020年4月の記事一覧

口癖

口癖が寝癖みたいに
付いて回って
午後まで残って
ほとほと呆れている
.
綺麗な色の葉っぱを拾って
ポケットに忍ばせる
誰も知らない秘密を作る
.
そうして夜は嘘を吐く
沢山たくさん他所を見る
止め処なく流されて
辿り着いた床に寝転ぶ
ここからまた朝を待つのは
今年のトレンドの第一位
心をあなたにあげる
.
.
あご髭が氷柱みたいに
常に育って
指でも触って
とぼとぼ歩いて行く
.
萎れただけの葉

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もう半分

さっきまでは
空を飛んでいる鳥が
自由に見えたのに
何がきっかけか
今は遠い目をしている
.
あまりにも広すぎる
その空の真ん中で
迷子になる姿が浮かぶ
.
考え方が世界の半分
だとするともうこの時点で
残りの半分しかないと
嘆くのはとても簡単
否、考え方が世界の半分
だとするとまだこの時点で
余裕が半分ほどあると
思えたら実は楽しい
.
鳥は空に居るのではなくて
鳥が居たから空なんだ
.
.

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ピーナッツクリームサンド

言葉はなるたけ小さく
ピーナッツクリームの中の
砕けた欠片くらいに
粒々としたその感じが
存在をより際立たせてくれる
.
オブラートは大袈裟だから
ふかふかのパンで挟めば
こんな僕にだって思うことがある
.
世界とか愛とか夢とか
大きさも儘ならないものに
これまで幾度と惑わされたか
言葉で言葉を説明しようなんて
大それたことは言わないから
もっとジャンクにやっても
誰が責めたりするものか
だってピ

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まだ優しい人

原付が走り去った後の
あの匂いが好き
水で薄めたような夕焼け
見慣れた町並み
変わらないものの中に
遂に自分も含まれた
.
らしくある為に
失くしていったところ
.
悲しみに手を振れるほどまだ
優しくはなれないけれど
忘れないでいると
強く望むだけならば
ここからでもできそうと
今は独りアスファルトの上で
暮れてゆく空を見ています
.
.
営みが崩れかけた頃の
美しさが好き
紙を透かしたような似顔

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僕の世界

雨でも降ればいいと
口を衝いた所で
気が紛れることもなく
くっきりとした影が
ぽつんと落ちているだけ
.
槍でも降ればいいと
口を衝いた所で
楽になれる訳もなく
こっそりと出た部屋を
静かに恋しがるだけ
.
独り言ちるのにも
ユーモアが要る
.
味のしなくなったガム
半額の菓子パン
淹れてきたコーヒー
だだっ広い駐車場の片隅
それだけ
たったそれだけ
それだけが僕の世界
.
.
風邪でも引けばいい

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ニュータウンの異星人

ニュータウンの朝
まだ仄暗い部屋
冷たい硝子窓の向こう
幾つもの屋根の上
宇宙人のような
アンテナが立っている
.
一様に同じ空を見つめながら
物思いに耽るのは僕だってそう
.
帰りたい星がある
そんなことを
恥ずかしがりもせず
ふと思いついたりする
逃避癖が生んでしまった
幻想くらいならよかったのに
どうやら強ち
嘘でもないらしい
.
.
ニュータウンの朝
まだ寝つけない部屋
遮るブラインドの隙

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name

RPGを始める際にも
ボウリングのスコア表にも
SNSのアカウントにも
一体僕は何人の僕を
この世に生んでいるのだろう
.
一人一人にも性格があって
釣り合わなさそうなのに
すぐに大人しくなる
.
僕は僕だけれども
僕ではない僕もあって
辻褄合わせのつもりはないが
その都度新しい僕に
僕は名前をつけてあげる
ここに居ていいのだと
口に出すまでもなく
また僕は僕と僕を見つける
.
.
ラジオにメール

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夜のシーソー

僅かな言葉数で
何かを伝えようとすると
また別の何かしらを
取り零してしまう
.
それをリスクと呼べば
また静かになって
思い出す懐かしい夜の喧しさ
.
いくら総てを
明け透けに渡したとして
どちらかの周波数が
一つでもずれていたとすれば
網で掬った水
手に入れられるのは
浮かんでいたものばかり
流れ落ちるものはそのまま
.
.
それがリアルと知れば
より静かになって
滲み出る珍しい夜の囂しさ
.

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ほこり

西日が当たって
美しく光る
ふとした動きで
舞い上がって
また静かに降り積もる
ただ巡るように
.
風に弱いんだ
それはいとも容易く
何処へでも飛ばされる
.
譬えばスノードームとか
砂時計をイメージする
もう予めそこにあるだけ
それらがあっちへ行ったり
そっちへ行ったりするだけ
時にはぎゅっとしたり
時にはばらばらになる
.
.
季節が回って
新しく眠る
予期せぬ事態に
成り代わって
まだ真面目

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渦中の人

冷静になって
考え直すと
そうでもなかったと
気がついたりする
だから難しい
.
沸騰したてのお茶にも
冷ましておいたお茶にも
良さがあるように
.
どっちつかずだったら
どっちを選ぶか次第
つまりは自分の
さじ加減と引き際
誰にしたって
他人事には興味がない
もっとすっとじっと
渦中の人らしく
.
.
どっちつかずだったら
どっちを拾うか次第
つまりは自分の
いい加減とユーモア
誰にしたって
退

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花飾り

バスの窓側の座席
いつも白い光が
そこばかりを照らし
浮かび上がったように
目を引く花飾り
.
その人を象徴している
優しそうな彩り
振動に合わせて揺れる
名は知らなくても見たことのある花々
.
日々想像の積み重ね
蕾は咲いたと言えなくて
まだ少し待っている
日々悔しさの出し惜しみ
涙は綺麗と知らなくて
まだ少し待っている
雨のち晴れの時の風の気儘さ
そうであれたら
.
.
バスの窓側の座席
今日

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うちで踊った

春が懐かしい
宵の花から
香りが伝って
開いた窓越しの月
誰かに似ている
.
あの歌の頃に
生まれた心の形
新しくまた重なり合う
.
楽しみを育てたら
終わりが見えなくて
考えている内に
もう春が来た
淋しさを数えても
涙は尽きなくて
乾かしている内に
もう虹が出る
.
.
あの歌の頃に
憶えた願いの形
新しくまた確かめ合う
.
ふと口遊むような
ふと弾ませるような
しあわせを食べ過ぎた帰り道

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前者と後者

ひと通り
見飽きた季節が
何度でも
新鮮に感じられるのは
忘れていたから
だけではないような気がした
.
等間隔に並ぶ
電線の上の鳥たちが
物憂げに見つめてくる
.
自問自答にも
MCとパネラーが居て
答えたい時には
後者が幅を利かせる
正解か不正解かは
実はそれほど重要ではなく
言いたいことが言えたらいい
言いたいことが言いたいだけ
だから季節の話も繰り返す
.
.
ひと通り
見慣れた景色が

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平日

珍しく早く目が覚めた日は
意外と一日が長いことを知る
そして今ではもう
笑っていいとも!が
放送していないことに
改めてちゃんと淋しくなる
.
一杯では足りない
コーヒーを淹れ直して
昨夜のアメトーークを観る
.
生活リズムは恐らく
たった一日では変わらない
そんなことは百も承知で
新鮮な気持ちに騒つく
そうして舟を漕ぎ始める頃に
外は綺麗な夕暮れ
とはいかなくて薄曇り
僕らしくて可笑しかった
.

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