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無口な歌詞

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あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2020年1月の記事一覧

その通り

楽しい人生
怖がらないで
.
.
白い花には色がないって
誰かに言われたこともあった
.
長い旅など詰まらないって
誰かに言われたこともあった
.
それって誰
って訊かれても
判らないような誰かならば
.
気にするなとまでは言わないが
足を止める理由にしてしまわないで
捜すな 捜すな 捜すな
弱さを上手く飼い馴らしたら
その誰かに逢いに行こう
楽しい人生
怖がらないで
.
.
青い空には星はないっ

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ぴゅう

絵に描いたような雲が
空のど真ん中で
寝転んでいるのか
じっと動かない
.
物は試しと
一思いに
息を吹きかけてみるも
気の抜けた口笛が
ぴゅうと鳴っただけ
.
想像力は
せめて上向きで
無限を知らない宇宙の
小さな星の僕らには
変えられるものと
変えられないものがある
譬えばあの空の雲のように
.
.
目の覚めるような恋が
夢のど真ん中で
寛いでいるのか
やけに大人しい
.
手に届くはずの恋は

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ソワレ

点滴の間隔で
傘から雨が
また落ちてゆく
.
数え切れない夜を
明かしてきた
三階の角部屋には今
知らない人が暮らしていて
.
忘れられない夜を
並べていた
西向きの窓際には今
小さな花が飾ってある
.
簡単にそれを決められない
あれはそんなに
適当なものではなかった
雨がスニーカーを
濡らしてゆくように
次第に大きくなったの
.
.
点滅の間隔で
喉から声が
また落ちてゆく
.
ミントブルーの色

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あなたのけむり

別れが一緒に付いてくるなら
初めから頼まなかったのに
贅沢なハッピーセット
.
「あのね」といきなり話し出すから
相槌も返せなかったんだ
曖昧なスタートライン
.
それとなく伸ばした手の
戻し方が判らなくなって彷徨う宙
.
口数は涙の代わり
遠くにそっと捨ててきて
あの白い雲のように
知らない空まで飛んでゆけ
煙突から膨らんだ
あなたのけむり
.
.
別れの気配は曲がりなりにも
薄っすらとしていた

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RPG

彫刻刀で掘られた名前
全く知らないその人のことを
何の思い入れもなく
ただ思い出そうとしている
.
退屈な昼休み
不自由な自由時間を
潰すだけの暇潰し
.
モンタージュ
いつだって僕は
空想で勝手に作り上げる
そしてそのまま
不完全な姿で
こっちに襲いかかる
正体も戦い方も
僕だけしか知らない
三十分のRPG
.
.
心配性が招いた雲が
何にも見えない天井を埋めて
誰に言われるでもなく
また濡らさ

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アルミ缶

空にしたアルミ缶を
捨てるでもなく
手に持って歩き歩き
行く当てのなかったこと
ずっと前から
気がついていても歩く
.
もう夜
.
重たくなったような勘違い
確かめるつもりで振ってみても
さっき拾った煙草の吸い殻が
からからと音を立てるだけ
.
そろそろ雨も降りそう
.
帰り道にしては長い遠回り
帰りたいと思うまでと
考えていたのに
お腹が空いてくるなんて
つい笑ってしまう
.
.
自動販売機なら

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日々

震えるほど
君を喜ばせたいと
広げたノートに
書き殴る計画
.
涙なんて
今の方がよく出ると
誰かも何処かで
言っていたものだし
.
きっかけもなく逢おうよ
時々こうやって
.
好きというだけでよかった
あの頃のチュートリアル
難しいことは何でも
明後日に放り投げて
無駄遣いのように時間を
ただただ排水口に流していた
それでも美しかった日々
.
.
痛みだけに
強くなってしまったと
並べた弱音が

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キスをする

さっきのは
溜め息じゃないと
咄嗟に否定した
口に出せば
少しでも取り戻せるような
気がしたから
.
朝は綺麗だね
隣りで呑気な声がして
釣られた呑気な声が
曖昧な返事をする
.
何でもなくて
淋しさすら
感じてしまいそうな
そんな時にいつも
好きだという
たったそれだけのことに気づく
そしてキスをする
.
.
きっとまだ
手遅れじゃないと
静かに期待した
夢に見れば
少しでも引き返せるような

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匿名希望

私にしか
名づけられない
私だけにしか
呼ばせてくれない
あの気持ち
.
はじめは
そんなつもりもなくて
ただの挨拶程度が
いつの間にか
.
大抵のことはそんなもので
でもだから気になる
.
判り易く揺れて
触れて膨れてふやける
判り易く濡れて
撥ねて捩れて塞がる
判り易く暮れて
擦れて破れて漂う
居眠りが連れてくる
あの気持ち
.
.
私にしか
見つけられない
私だけにしか
応えてくれない
あの

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咲かせたい花

小さくて硬い蕾が
凍える枝の先
次の季節を待つように
じっとしている
.
花も葉も
その時をイメージして
眠る
.
それは晴れていた方がいい
けれども別に雨でもいい
門出でもないから
立派でもないから
久し振りに目を覚ますだけで
笑ってもらえるなんて
身に余る贅沢な賞賛でした
.
.
優しくて白い光が
震える指の先
長い電話を切るように
ぱっと射し込む
.
茎も根も
イメージを優先して
伸びる
.

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motel

遠い未来で
今夜の過ちを
昔話のように誰かへ
聴かせていたりするのかな
.
若い二人が
泊まったモーテルは
旧い映画のように朝まで
賑やかだったらしいとか
.
携帯電話は置いてきた
代わりにポケットを
膨らませているのはリモコン
多分あの部屋のテレビの
.
明るいと眠れないから
ブラインドを下ろして閉じる
知らない車と目が合ったけれど
それよりもベッドに帰りたかった
あまり言葉は交わしていない

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ミルクと偏頭痛

雨の日には
あの涙を思い出す
唇に流れてきた
忘れられない味のこと
.
偏頭痛持ちだったから
二人して見上げていた天井
お互いの手を額に乗せ合って
どっちが冷たいとか何とか
それだけでただ時間が過ぎていた
.
温めたミルクが優しい夜
.
言葉では救えなかったとして
諦めることなどなくて
形を変えた愛に従うのも
それはそれで気が楽だから
甘さに溶けたっていいんだよ
こんな雨の日なら
.
.
雨の日に

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sour grapes

込み上げるフレーズ
心許なくて困る
それでも哀しい歌には
ならないように願う
.
取り替えるフレーム
思い掛けなくて黙る
それでも沈んだ部屋には
見えないように飾る
.
誰に向かって言う訳でもなく
ただ同じ繰り返し
.
もういいや
明日に全て任せた
なんて口にはしないけれど
密かに考えることは
今まで幾度となくあった
きっと判り易く顔に出ていても
最後の言葉だけは
自分で飲み込んだらしい
.
.

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欲る

太陽のない
夕暮れに似ていた
腑に落ちる前に
居なくなった足許の影
.
誘惑が灯る
濡れた路面の上を
裸足で渡る
.
確かめてくれたことがない
寒かったとか
冷たかったとか
潜ませた分だけ重たくなって
次第に浮かばなくなる
かと言って沈む訳でもなく
.
.
計画のない
旅立ちに似ていた
目が醒める前に
捨てたかった初めてのもの
.
約束が烟る
過ぎた電車の窓で
あいつも笑う
.
諦めてくれたことが

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