最高の一杯を求めて

違いの分かる男って奴になりたいんですよ。カッコよくないですか?違いが分かる男。

神の雫って漫画があるんですけどね。皆でワイン飲んで「おぉ…この豊かな香り…まるで演劇のサロメのようだ。見える!サロメが見える!」みたいな。集団で共通の幻覚見てトリップしてるんですよ。きっと違いが分かるってのはそういう事。知らんけど。

もし俺があの漫画の登場人物として出現したら一人だけ「よくわかんねぇ!俺はストロングゼロでいいや!」って叫ぶKY極まりないキャラになりそう。どっちがゼロだかわかんねぇ!って叫ぶコカコーラゼロのCMみたいに。わかれや。

先日ツレの家に遊びに行ってきたんですけどね。小学校の頃からのツレでして。そいつ今サラリーマン辞めて個人事業主やってるんですけど、メインの業務とは別に趣味の範囲でコーヒー豆売り始めたみたいなんですよ。コーヒーが好きなんで作ってて。それをお裾分けするレベルで。

ほんで無類のコーヒー好きのA君と子供舌代表の俺がお邪魔してきたんですけど。思ったよりガチな感じだった。


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「これ、ホンジュラス産の生豆なんだけどこれをまず煎って水分を飛ばす工程から入るんよ。」
「ホンジュラスってどこや?」
「パナマの横や。」
「パナマってどこや?」
「パナマや。」
「は?諦めんなや。」


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「豆を煎るのはこの機械ね。この中に温度計が2つ入ってて温度のデータを逐一パソコンに飛ばしてて、どこまで熱したらどんな味や香りになるかを取ってるんよ。」
「マメな事しとるな。」
「豆だけにな。」
「は?※すぞ。」


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「取った温度はこのPC画面でデータロガーに打ち込まれとって。熱する時は浅煎り、中煎り、深煎りとか決めてこのデータ照らし合わせつつ実際の匂いと音で判断すんよ。」
「急にハイテクになって草。」
「この工程で味変わるけぇね。」


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「これがその工程を終えた豆。豆の大きさ変わっとるでしょ。これは浅煎りと中煎りの間。」
「皆が良く知るコーヒー豆になったな。」
「にしやんにそっくりやな。」
「誰?」
「色黒の知り合い。通称カッコいいコーヒー豆。」


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「その出来た豆をこの業務用のマシンで粉状に粉砕するゥーんだ!」
「あッ!にしやんが!」
「命をなんだと思ってる?無残、お前は存在してはいけない生き物だ。」


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「粉々にした豆を一回ふるいにかけるよ。」
「出来の悪いのがここで落ちるわけか。」
「人間社会と一緒やな。」
「落ちる側の奴が偉そうに。」


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「出来た粉に湯を入れて少しの間蒸らすよ。」
「いい匂いがしてきた。」
「コーヒーガチ勢ならさ、ジャコウネコのうんこから取れるコーヒー飲んだ事あるん?」
「コピ・ルアクのこと?高いだけであんま美味しくないよ。」
「このように俺は高尚なコーヒーの話題からでもうんこの話に舵を切ることが出来る😡」
「そう…(無関心)」


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「完成したんで、粉をこしながらポットに入れるよ。」
「なぁ、この話記事にしていい?」
「お前今の話理解出来てなくね。」
「よくわからん話を、さも理解したかのように書くのが毎日更新のコツなんや。」




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こうして我々の前に現れた一杯のコーヒー。めちゃくちゃ手がかかってる。これは絶対美味い奴だ。間違いなく美味い奴。最近変えた新しいシャア専用みたいな色のグローも添えてお洒落感もプロデュースしている。精一杯の映えって奴だ。

しかし俺は自他共に認める馬鹿舌。わかるのか。俺にこのコーヒーの違いという奴が。セブンカフェの100円の奴との差というものを、はっきりと舌で感じることが出来るのか?

「あーすげぇ。香りがもう違うわ。もうなんか突き抜ける。香りが物理的に突き抜ける。」


とか一丁前な事を言って唸ってみせる。実際は花粉症の影響でほとんど鼻は機能していないが、違いが分かる男は大体香りから入って行くイメージがあるので俺もそうする。

「アッ!美味い!美味いわ!まだ口の中に入れてないのに美味い!」


ジャブ気味に小癪な感想を飛ばす。まだ飲んでもないのに気がはやってしまい、違いが分かる男の顔が現れた。「いいから早く飲めや」などと至極真っ当な野次が飛んでくる。仕方ないので飲んでみる。

美味い。確かに美味いが何がどう美味いかと言われると言葉に詰まる。なんだかいい感じのコーヒーですねとかそんなぼんやりした感想が出そうだ。ダメだ。違いの分かる男はそんな事言わない。絞り出せ。分かってる奴っぽい言葉を。

「飲み込むのが勿体ないくらい美味い。口の中で味わいながら2年くらい保管したい。」
「へぇ。やってみろよ。」

最低なコメントしか出なかった。まだだ、ここから挽回してみせる。

「なんかこう、コクがある。コクが違う。コクを感じる。コクっている。」
「ん?どっちかというとあっさりしてね?」
「じゃああっさりしている。」

100点満点の回答をA君が邪魔してくる。コクってなんだ。コクがあるって言ったらそれっぽく聞こえると思ったのに。コクがあるの対義語はあっさりしているなのか。もうわかんねぇ!俺はストロングゼロでいいや!


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その後は駄メガネも合流してアサヒスーパードライのテイスティング会になった。はー落ち着くわ。アサヒスーパードライ。やっぱり俺はスーパードライとストロングゼロでいいや。

奇しくも目の前に俺の小学校、高校、大学時代のツレが目の前に並んでいる。中学は抜けたがなんだか俺の学生時代の人間関係の総決算って感じだ。こうして見ると壮観だ。本当にロクな人間がいない。

「さっきのコピ・ルアクってすげぇ高いんよ。」「じゃあもうジャコウネコ飼って無限にうんこさせて一儲けしよ。現代の錬金術。」
「タイには象に豆食わせてうんこから取り出すブラック・アイボリーって銘柄のコーヒー豆もあるんぞ。これ豆な。」
「豆の知識で豆知識って言っとるんか?」
「話の流れ的にうんこの知識じゃね?」


うんこの話ばっかしてんなこいつら。俺の学生時代の総決算は大赤字のようです。これを見ている人、友人はしっかり選ぼうな。





いただいたサポートは僕のストロングゼロの代金へと変わり、春には綺麗な花を咲かせるでしょう。