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ギリシャ哲学

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#思想史

ソクラテス「この男は、知らないのに知っていると思っているが、わたしは知らないから、知らないと思っている。つまり、このちょっとしたことで、わたしの方が知恵があることになるらしい。」

ソクラテス「この男は、知らないのに知っていると思っているが、わたしは知らないから、知らないと思っている。つまり、このちょっとしたことで、わたしの方が知恵があることになるらしい。」

ソクラテス「この男は、知らないのに知っていると思っているが、わたしは知らないから、知らないと思っている。つまり、このちょっとしたことで、わたしの方が知恵があることになるらしい。」
(「ソクラテスの弁明(プラトン)」より)

俗に言う「無知の知」です。
無知の知という言い方は誤解を招くので「不知の自覚」と言うべきである、という意見もありますが、私は別にどっちでもいいだろうと思います。

無知の知とは

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パルメニデス以後のエレア学派⑦ メリッソス(前5世紀)

メリッソスの生まれはエレアではなく、イオニア地方のサモス島である。
サモスの政治家・軍人として、アテナイとの戦いで勝利を収めたなどの逸話が残っている。

メリッソスはまた哲学者として、パルメニデスの思想を承継しているので、エレア学派の一人とされている。
その思想内容は、全体としてはパルメニデスと大きくかけ離れているものではない。主な違いを探すとすれば、まずパルメニデスは自身の思想を叙事詩の形式で、

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パルメニデス以後のエレア学派⑥ エレアのゼノン(前5世紀)

エレアとは、イオニア人によって建設された南イタリアの植民都市である。ここで生まれ育ったパルメニデスを中心とする一派を、エレア学派という。
パルメニデスについて語るときりがないので、前回で一区切りとして、今回はパルメニデスの弟子であるゼノンを取り上げる。

哲学史上において有名なゼノンは、二人いる。今回のゼノンと、もう一人は後の時代、ストア派の創始者となるゼノンである。この二人を区別するために、それ

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パルメニデス(前5世紀)⑥ 一の肯定・多の否定

あるものは、

① 生成されず
② 生滅もせず
③ 運動変化もしない

ということになると、演繹的に一つの結論が導き出される。
それは、

あるものは「一」である

ということである。

生成変化しないのであるから、時の経過という概念とは切り離された存在であり、永遠にある。
そして、運動しないのであるから、常にそこに留まっている。
そうなると、あるものが複数存在するということは論理的に有り得ず、た

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パルメニデス(前5世紀)⑤ 消滅の否定・運動の否定

あるものは消滅するのか?

あるものが生成するということは、一つのルートが考えられる。

あるものからの消滅:ある→あらぬ

これは「あらぬ→ある」の生成が有り得ないのと同様である。
つまり「あらぬ」ことが理性をもって想定しえない以上、あるものがあらぬものになることはない。

そうなると、あるものが運動変化することも否定される。
運動変化は、次の二つのパターンが考えられる。

① あるものから、別

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パルメニデス(前5世紀)④ 生成の否定

あるものは生成するのか?

あるものが生成するということは、二つのルートが考えられる。

① あらぬものからの生成:あらぬ→ある
② あるものからの生成:ある→ある

まず①について検証する。
前回申し上げた通り、あらぬものとは、私たちの観念をもって思い懐くことすら叶わぬ、絶対的な無である。私たちが思い懐くことの出来る無とは、有の対極としての概念であって、概念として存在するものであるから、厳密には

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