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イラストの値段はこうして決まる!

よく「私の絵だと何円で売れそうですか」とか「私はSNSでイイネ1000件を獲得できる絵を描いています。いくらで売れますか?」という質問を受けます。

結論から言えば、絵の質やSNSのファンの数はお金に換算できずほとんど無意味と思っていいでしょう。

このブログでは何度も書いていますが、イラストレーターという仕事は無資格の仕事です。

そしてイラストには相場がなく、上は1枚数億円から、下は0円まであります。

さてイラストレーターを仕事とする以上、あなたは絵で利益を得る必要があります。

利益はお金でなくても構いませんが、いずれにしても何等かの価値を持たねばなりません。

ここではとりあえず利益をお金として考えて、あなたの絵はいくらで売れるのか、考えてみましょう。

絵の価値は本来金銭とは無縁

絵の価値とはなんでしょうか。
結論から言えば絵の価値は「感動」などの非金銭的なものしか生まず、本来、お金で売り買いはできないものです。

どんな絵でも金銭的な価値は0円。しいて言えば紙や電気代といった経費のみで構成された物品、あるいは産業廃棄物処理のための不良財産とも言えます。

絵の世界では「作者が勘違いされて入選した」とか「作者が芸能人だから高値になった」というようなものもあります。

絵自体に価値はなく、その作者やストーリーなどに価値があるから、高値を付けていることは多々あります。

同じ絵でも有名な作家が作ったものだと証明された途端にゴミから億円単位の価格になることは、よくあります。

このように、どんな絵でも金銭的価値は基本ほとんど無い。というのが絵の世界です。

それは、絵の価値とは金銭でやり取りできるものではなく、感動や感情といったものだけでやり取りされるものだからです。

絵の金銭的価値に決まりはない

絵は金銭に換算することができません。
例えば「金」は相場がありますし、「お米」なども相場があります。ブランドもありますが、米が1キロ1億円になることはありません。

しかし、絵ではどんな努力しても0円もあるし、落書きで億円単位もあります。
これは絵の金銭的価値に決まりや相場が無いからです。
蛇足ですが、そのせいで総会屋の事件では裏金の渡し方として適当な絵画が用いられました。絵に相場がなく1円でも1億円でもあり得るからですね。

SNSで10万人のフォロワーがいて、100万人に拡散されて見られて10万人がイイネしてくれた絵も高値で売れる保証はありません。

フォロワーが100万人いるから、フォロワー1万人の絵師よりも絵の値段が上がる保証もありません。

例えば絵は見るだけで買うことはない。と決めている人50万人のファンがいる人と、ファンが10人しかいないけどその10人がどうしてもお金を出したい億万長者なら、おそらく高値が付くのは後者です。

ある人が100時間かけてつくった絵と、1時間でつくった絵では、価値が逆転することもあります。

このように、絵には相場がありません。

ではどうするか

絵には相場がないです。

それで、これを理解してもらいたいのはすでに活動しているイラストレーターよりもむしろ、初心者やこれから絵を売ろうと考えている人です。

まず、考え直したほうがいい考え方は以下ようなものです

  • 初の依頼だから安値でいい

  • 安値から始めてだんだん高くすればいい

  • 最初のうちは苦労するものだからタダでいい

  • めちゃくちゃ頑張ったから高値にしよう

  • 自分の絵がいくらか他の人に聞こう

  • 相手に値段をつけてもらおう

これらはすべてが悪というわけでありません。
そういった手法もあります。ただ、初心者が無条件に考えてしまう「よくある勘違い」が上記のようなものです。

絵には金銭的価値が本来ありません
だからあなたの絵はあなたが値段を決めない限り金銭的には無価値だということです。

また、あなたの努力と相場は関係ありません。1000時間かけても絵の金銭的価値が上がるとも限りません。

相手に値段を委ねることも良くないことです。なぜなら金銭的な価値がないのだから、人によっては無価値だし、あなたのファンにとってはとても高い金銭的価値があるかもしれません。

だからある人があなたの絵は1000円だな。と言ってそれが1000円で売れることはないのです。

最初に安値を付けたらおしまい

例えば、100円ショップが毎年100円ずつ値上げして10年後に1000円になっていたらどうでしょう。

高級フレンチで修行して将来高級な店を開きたいと思っているシェフが修行のためと1号店では価格を300円に設定したらどうでしょう。

後から値上げ、できませんよね。
高級料理店で修業したシェフでも、最初に300円で売ったらそのブランドは一生300円。「300円のシェフ」としてブランドも確立します。

これが大規模な会社なら、高級ブランドとして別ブランドを立ち上げて、ということも可能性はありますが、絵師のブランドは1人1つ。変えることはできません。

よくも悪くも有名な画家「ラッセン」は1つあたり数十万円から数百万円です。彼が廉価版として「1000円の1点もの」をヤフオクで売り始めたらどうでしょう。途端に彼の価値は暴落するでしょう。

何が言いたいかというと「一度自分につけた値段は、一生その値段のまま」「後から上げることは不可能、あるいは不可能と思えるくらい難しい」ということです。

あなたの技術が上がっても、それが理由で値段が劇的に上がることはあり得ない。ということです。

世の中には確かに後から値段が上がる芸術家は多数います。
ただ彼らの金銭的価値上昇は「マーケター」や「画商」といったプロダクトマネージャーが戦略を用いて行っていることであって、ほとんど技術上昇が理由ではありません。

むしろ技術的には一定だがマーケティングを用いて絵そのものに投機的価値がついて価格が上昇した。というほうが多いです。

だから基本的には「いずれ頑張って上手くなれば絵の価格も上がる」ということは無いと思ってよいのです。

では最初から高値でいいのか

絵の世界は相場がないので、安いから売れるということはあまりなく、仮にあったとしてもそれは元のあなたの技術が世間一般と比べて低かったから起こることです。

自分の絵がこんな値段で売れるわけがない!と思う人は多いようです。
しかし、画商がついている人でもない限りあなた自身が営業マン。あなたの絵を安売りする営業マンは解雇すべきです。

仮に別にあなたの絵をセールスする人がいたとして、その人が「あなたの絵は売れんから時給100円になるが、頑張ってくれや」なんて言ってきたら殴りたくなりますよね。

じゃあ無限に高値を付ければいいのか、というとそういうわけにはいかない。ということは何となくわかるでしょう。

値段のつけ方は3通りあります。

1、工業製品として位置付ける
実は世の中のイラストレーターとかグラフィックの仕事している人のおそらく99%はこれに属します。
絵は芸術品ではなく工業製品です。アニメーターやゲームグラフィック、漫画家などなど、大半の絵で仕事をしている人は、工場で働いているようなものです。

絵に相場がない。と申しましたが工業製品としての絵は相場があります。
絵は本来、金銭的価値がないので無理やり規格化して相場を作り出したのが工業製品の絵なのです。

例えば漫画では原稿料というものが決まっています。アニメーターも1枚あたりいくら、とおおよその値段が決まっています。

SNSのクリエイティブからテレビ番組の制作に至るまで、絵以外でも本来芸術作品とすべきものが工業化(相場と作業内容とクオリティが決まっている)しています。

日本人は工業製品で生活をしているので、個人間の取引でも絵の工業化が起こっています。

目的、クオリティが決まっていて、それを満たす絵師と契約する。すると個人間取引だと1枚あたり1万円みたいな「なんとなくのクオリティ制限と相場」が出来上がっていきます。

この値段のつけ方の特徴は「依頼する側が相場を持っている」「絵師側はそのクオリティと相場に納得するなら応募する」ということで、イラストレーター側が値段の決定権を持っていない(あるいは放棄している)ことです。

この場合、どんなに上手くても値段は上がらず、最低限クオリティを満たしているなら金銭的差はない。となります。

ものすごく上手い人は必要なく、必要クオリティを早く作る人が最も高値になるとも言えます。

2、自分で値段をつける
工業製品では自分が営業する機会は最初だけです。契約さえ決まればあとは相場やクオリティで交渉する機会はありません。技術が低くてクオリティや速度が未達なら、値段が下がるのではなくクビ。
一方でどんなに上手くても値段は上がりません。

しかし、こちらのパターンは常に値段交渉や営業を自分で行わねばなりません。
この方法は、イラストレーターになりたい人が最初に想像する値のつけ方です。

賞や出身学校の上下、パトロンの存在、強固な金持ちのファンなどを惹きつけられるかも勝負になります。
圧倒的な実力(営業面も含めて)がある者ほど有利になるでしょう。

このような者の中には、信頼8割、絵のクオリティ2割で大手企業と繋がって、数十万円の契約を毎月行っている人もいます。

自治体などだと、新規に発注するより既存の人とやったほうが楽なので、技術や値段など関係なく人間関係で保っているところもあります。

3、営業代理者を立てる
画家と言われる人々のほとんどは、裏方を担当する画商などと二人三脚です。基本的に投機対象になるような人や絵でないとなりませんが、セールス担当(社)と画家が分離していて、画家側はセールスをその人に任せて絵だけ描いていればいい。となります。

ある意味では漫画家も編集担当者とこれらの関係にあります。漫画家は売れっ子になれば「1」と「3」の半々と言えるでしょう。

まずあなたが値段をつける、というより今後どうやって売っていくか決める時に、この3つのうちどれに進むかを最初に決める必要があります。

最初から安値を付けたらできない道もあります。1,000円の絵のために営業代行を行うもの好きはいません。

もし「3」で行きたいなら、権威やコネのほうが大事なので技術を磨きつつも国内最高峰の美大を進んで関係を作るなども必要です。

もし「1」で行くなら、専門学校や美大、あるいは最初からフリーでも一定の技術と、社会人としての最低限のスキルやコミュニケーションを学んで進む必要もあります。

10代なら「どうせ今から考えたって」などと思うこともあるかもしれません。
しかし、大部分は今日からが吉日。ということで今すぐ考えるだけ考えることも大事です。

今の自分の絵は何円ですか?と他人に聞くのは無意味なことで、自分がまずはあなたのセールスマン。値段をいくらにするか、どう進めるか、自分の売り方と将来を考えて自分で進路ややり方を考える時です。


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