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クァシンとアイの冒険

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設定をフリー素材にしました。 キャラも世界観も自由に使ってください。 どんな形式でも大歓迎です。 小説でも詩でも音楽でも絵でも良いです。 #ワールドザワールド
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記事一覧

27 なんでもあり!? ワールドザワールド、おすすめの観光スポット5選

 ワールドザワールドにはなんでもあると言われています。  例えば、40センチの靴 から 何も書くことのできないノート、ドアのない家 から 段のない階段、ハイデガーの同人誌 も 飲むと死んじゃうお茶 も 男性用の生理用品 も 左利き用のメガネ もあります。  そんな魅力あふれるこの世界には、みんなが「町」と呼ぶ町があります。  今回はこの町から、旅行に行くなら絶対に見るべきおすすめスポットを五つ紹介します。  そのまえにまず、町への行き方を知らないといけません。  あなたが

26 川の底の神様

 しとしと雨が降った。  うさぎたちはアイの部屋にはいったり、木陰にひそんだり、土にもぐったり、箱に隠れたり。ひげを揺らして、鼻を寄せあって雨をながめるのだった。みんな静かに、黒く濡れた瞳や、赤い瞳で。  アイは床いっぱいにひしめくうさぎたちをかきわけて、扉から顔を出した。秋にしてはむし暑くて、どろりとした汗と雨が首から背中へ流れる。  陰鬱とした重苦しい雲。  うさぎたちも体を重そうに、ひっくりかえったりするのだった。  アイは雨が強くないと判断したので、外へ出て、クァシ

25 WDC・・・Worldtheworld Dog Community[ワールドザワールド犬共同体]

 午前11時。  おにぎり雲が西の山に浮かぶころ。  ドギー村の空き地には、張りつめるような血の色の風が吹きました。  人の生活する不条理な音は遠く、ここにはただ虫の身をくねる音と、それを狙うネズミの髭の音だけがピリリと結びつきます。  村と荒野の中間地。  人と野生のちょうど真ん中。  犬たちは、かつての失われた時間を讃えてここへ集まります。  およそ50以上集まったでしょう。犬たちは、互いにウゥとかクゥンとかバフンとか言いながら、顔を合わせては頭を下げたり、尻を嗅ぎ合

24 短歌集「女神たちはたらく」

__新月、曲がったノートを閉じる家庭教師の解読不能な提案。  チョークを置く音は乾いていてまるで一つの木管楽器が間違って鳴ったみたいな嬉しさがある。アイはノートに答えを書いた。三角の女神に連立方程式を教わっているのである。  三角の女神はアイの隣に腰を下ろし、机に肘をついて自分が書いたばかりの板書を眺め、「ふーん」とバネが緩んだびっくり箱みたいに首を揺らしながら後ろに大きくもたれた。下唇を突きだしてアイのノートを見る。 「よくできてるじゃん」 「数学だけは」とアイは鼻でシュ

23 蚊に刺されて

1  目を覚ますなり身体をギチギチと痛めつけ鉛のように重くする高熱の症状に、気を失うように眠ったり、また反転して起きたりと繰り返す白髪の少年は今再び瞼をもちあげ、曇った瞳で天井を眺めていた。その風景も周囲の人らの彼を慮る声も、病人には届いていない様子である。熱は抵抗を作る。ここでもまた高熱のクァシンと周囲の世界とで、音も光も意思も抵抗によってすんなり行き交うことはなかった。 「これは、ふくれ病って言ってね、このままじゃあクァシンちゃん、三日後に破裂しちゃうよ。それで中から大

22 天女の服

 天の神聖に対する無垢なる人間の最初の罪深き叛逆、 やがて空想なる地上世界を、緋く泡立つまで、底から 掻き雑ぜることになる、宿命の、筋書きの冒頭 ああ、何と悲しき存在か。その身をもって、人間の悲哀を 孤独と、無秩序な運命を、神と隔たる無限の壁を、 かつては永遠の果実とされた空気を、苦いものにしてまで、 甘いものを求めて生きる現存在の悲哀の物語を、 世俗の詩聖に歌えなかった歌の姿を、 彼は一人その身に背負って、足を挫きながら演じるのである イロニー的存在たる彼は、夕陽を望みつつ

21 アイの長い一日

その日のアイにはすることがなかったから、いつも通り規則正しく朝早くに起きたけれども何をするでもなく寝転んだまま目を開けて、天井を見ているとウサギがお腹にポンっと勢いよく乗ってきたことがきっかけで、そう、何かの弾みで心の中の世界にふっと風が吹くことはよくあるけれど、アイは今まで妄想なんてそうそうする性格ではなかったのに、この日ばかりは妄想というものが頭の中いっぱいに、それもぼんやりとではなく、明確に輪郭を持って立ち現れてきたのだが、その妄想というのは、あの路地に関することで、こ

20 スライム襲来

「あっ、いっけなーい」  僕、アイ。ちょっとドジな……何歳だろう? 多分12歳か13歳くらいの、普通の男の子! パンをくわえて走って家を出たのには理由があって、それが何かというと子どもたちが元気すぎるから。そう、今日は、子どもの面倒を頼まれていて、一人で三人の元気な男の子を見るっている大変な任務を請け負ったのだけど、朝からもうっ、椅子には座らないし、朝ごはんも食べないし。  そして事件は起きたってわけ。一番の年上で生意気な少年アボスが家を飛び出しちゃった。家の前で走り回る

19 バナナの道

 クァシンはいろんな種類の花を紙に描き写して歩いていました。  町には一川と呼ばれる川が通っていますが、その一川に沿って南下しているのです。黄色い小さな花や、赤い茎の太い花など、探してみるといくつもありました。  昼を過ぎた頃でしょうか、風車のついた赤い家を見つけました。  川辺にポツンとある家です。  クァシンには気になって訪ねてみることにしました。  中にいたのは眼鏡をかけ、白衣をまとったた恐竜でした。三本、ツノが生えています。彼は「トリケラ」だと名乗りました。クァシ

18 人産みの母

 池のように澄んだ青空の下に、巨大なライオンがいます。  古墳の前に座っている巨大なライオンです。  アイもいます。ライオンに会いにやってきたのです。クァシンも一緒です。  昨日二人で、とある事件を解決したのですが、その時一人の女性が言った「生まれてこなければよかった」という言葉がアイの頭に残っていて、そのことについて聞きにきたのです。ライオンは叡智で有名ですから。 「生まれてくるかどうかは、決められないでしょ」  とアイはライオンの鼻の上に座って空を見上げながら言いまし

17 氷を売ろう

 キヨミズは遠くを眺めた。  ワールドザワールドの北西にあるフジ山にのしかかるように作られた日本風の豪邸は南向きで、いつも威厳を輝かせている。キヨミズ城と呼ばれているこの建物には城主であるキヨミズと息子とその妹そしてそのほかの大量の使用人が共に暮らしている。  キヨミズさん、あるいはキヨさん、殿などと呼ばれているここの城主は、町をコントロールする役割をおっている。城からは町が終わるまで全ての景色が一望できる。  彼が困っていたのは、その町の市場のことだった。  町ではカラス

16 誰の家?

 ある時、アイが「今日は疲れたな。アイルームに帰ってぐっすり寝よう」と、巨大樹のところまで帰ってくると、自分の場所であるはずのその部屋に、ハイラックスが三匹、耳を垂らしてくつろいでいました。 「ちょっと、勝手になにしてるの。ここは僕の部屋だよ」 「違うね」ハイラックスの中でも一番小さいのが言った。「もうおれらの部屋だ」 「違うわけないよ。ここは僕の部屋で、知らない人が勝手に住んでいい場所じゃない」 「しかし、これを見ろ」そう言ってハイラックスが取り出したのは権利書でし

15 アイの何気ない一日

5:30 この日、アイは自分でもびっくりするくらい、早起きした。 しかも、二度寝ができないくらい目がはっきりとしている。 することがない。 とりあえず、お腹が空いているので、冷蔵庫の中を見た。 パンケーキを作って、その上に目玉焼きとベーコンを乗せることにする。リンゴジュースもあと一杯分残ってるし、最高の朝食ができそう。 6:45 朝食を食べたあと、溜まっていた食器を洗った。 今日は家事の手伝いにタニシの女神が来てくれる予定だったが、おかげでほめられそう。片付いてゆく感覚にや

14 作りかけの物語

 アイとクァシンは転がったおにぎりを追いかけていた。  つまらない草刈りという仕事を二人ですること(未定)  昼食をしていたら、アイがおにぎりを落としてしまったのだ。  おにぎりにはころころ転がり、石に当たって跳ね飛び、鳥の足に引っ掛かり、落ちて、跳ねて、転がって、ちょうどそこに走ってきた子どもの足に蹴られて飛んでいき、家に転がり入ってリビングを通り過ぎると、庭にいた二羽の鶏につつかれて跳ね上がり、馬の背中を転がって、丸太の橋を渡り、つむじ風に浮かび上がると、そのまま移動し