週刊「サンデー毎日」“サンデー俳句王”入選全二百自作句掲載。
私が投稿を続けている週刊「サンデー毎日」の
俳句投稿欄「サンデー俳句王(ハイキング)」での入選句が
しばらく前に200句になりました。
この俳句投稿欄は、著名人が「宗匠」となって毎週2兼題を通知し、
最優秀作「俳句王」1作、2兼題それぞれに上位3作(天・地・人=三才)計6作、
さらに佳作40作で計47作が選ばれます。
私が選ばれるのは数か月に一度で
年間通してゼロという年もあり、
常連という存在には遠く及ばず、
長くやっていてようやく二百句にたどり着いた、
という感じです(noteと似てます)。
よく見ると高橋章子さん(元『ビックリハウス』編集長)によく
選んでいただいていますが、宗匠は入れ替わりがあり、
高橋さんは現在は外れています。
一番うれしかったのは、戸田菜穂さんに選んでいただいた句が
年間大賞の【地】(3位)になったことです。
また、亡くなられた小松方正さんに「川中さんの字、味がある」と
句評内で言われたこともいい思い出となっています
(書く度に『下手でも味があるんだ』と思えます)。
【200句の見方】
(1)上位3作に選ばれた場合のみ、三才の別と宗匠名を記しています。
(2)最高位の「俳句王」に選ばれた場合のみ★印を記しています。
(3)順番は単なる掲載順ですが、だんだん上手くなっている訳ではありません(ご覧の通り)。
一応は他者のフィルター(同誌編集部と宗匠)を通過した
俳句が200句並ぶのは、
あまりないと思います。
お時間、もしあれば、どうぞ。
・幼き手ただもてあます落花生
・十字切るサッカー選手に神宿り
・ほうれん草ほおばる前歯輝けり
・心配もひと息をつく暖かさ
・靴底の減らぬ気のする梅雨の空
・辣韭を頬張る彼を見つめてる
・夕焼けやそっとあの日に帰りたい
・玉子酒熱をちぎって床の中
・アスパラの嫌いな顔の前で茹で【地】小松方正
・寿司好きの五歳蝦蛄には首を振り【人】高橋章子
・ひと息をついて夜なべの古手紙
・初天神祈る老婆のしわ震え
・春の風邪そんなやわかよ髭面が
・桜餅食う妹も白髪あり【天】高橋章子
・告白をする気かしらと日傘伏せ
・南風が体ささえたキスのあと【地】吉行和子
・寝冷えするよと母の声夢うつつ★【俳句王】高橋章子
・小豆あり母の笑みあり台所
・珈琲に頼りて話す秋深し【人】高橋章子
・オリオンを見つ顔色を見つ君と【地】富士真奈美
・ピアスに手彼がついてる受験生
・白き肌むかれた梨にごくりとす【人】高橋章子
・唐辛子量を増やして喧嘩あと
・ボーナスやがんじがらめの帰り道【人】富士真奈美
・名簿焼く焚火で過去は燃え尽きず
・ワイン持ち初雪だねと君が来る
・孫の目を外らせて父の菊根分
・カラオケのように人待つ春の駅【地】小松方正
・子馬の目見る君の目が濡れている
・この汗をかかせたヤツはやはり俺
・レコードの傷十代の秋の傷
・ハイヒールアキレス腱に冬の影【地】高橋章子
・階段で近づいていく春北斗
・衣更え見覚えのある切符出る【地】小松方正
・梅干しをほぐしつつ酒悔いている【人】塩田丸男
・夏服の白き手に載るハーブティー
・爽やかな朝おはようの力知る★【俳句王】高橋章子
・灰皿を洗うも最後紅葉散る・
・撫でるよに御用納めの我が机★【俳句王】小松方正
・二つ目の家族ができて初笑
・小指出す君も手袋とっている
・懐手してジョギングを思案する
・徹夜明け氷柱を頬に当てるなり
・原子力嫌とは言えど炬燵出す
・逆上がり教えながらの梅見かな
・春雷に身動きもせず倦怠期
・母の腰痛み消えつつ水温む
・気の弱さ跳ねた蛙に見破られ
・しゃっくりが縁になる恋氷水
・別れ際みな女優なり夏の恋
・焼酎を酌み交わしつも恋でなく
・夕焼けが似合わぬ恋の誘い方【地】吉行和子
・無礼講悔いて見上げる夏の星
・枝豆に手が進むほど会話冷ゆ
・萩と我が服の色似て逃げて来る
・金髪の大和撫子菊見入る【人】塩田丸男
・冬支度仲良く終えし父母の笑み【人】高橋章子
・幸せを予約した気で日記買う【地】高橋章子
・松過ぎてまたニッポンが恐くなり
・日脚伸ぶ見てる自分の足は急く
・水菜切る音は空気を縛るよに【天】小松方正
・雪解けのせいしに君はハアハアと
・葦簾茶屋撫でられし手の蘇る
・筋肉にもぐる親指汗を溜め【天】高橋章子
・父母の声畳に溜る寝酒かな
・書きなぐる机上は宇宙冬籠
・冬の恋インターネットなどいらぬ
・冴え返る味噌汁がまた舌に乗る
・来年の初鰹まで嫁取れと
・籠枕寝言気になる喧嘩あと
・緑陰に手だけを入れて先急ぐ
・出会う日に出来すぎている十三夜
・洞へ入る蜻蛉いいことあるのかい
・風邪の真似して照れながら英語言い
・寒菊に問うてどうする永遠の愛
・短日や映画のような父母の影
・冬景色染み込むごとき市電かな
・君の吐く甘い空気や石鹸玉【地】小松方正
・そらちゃうと逆らう世代なき四月
・プリクラの四人千切れて別の春
・菜の花を生けて雑巾走る居間
・コーヒーを飲んでも無駄か昼寝妻【天】高橋章子
・葉桜になって樹を見るゆとり出来【地】高橋章子
・運ぶ娘のゼリーの揺れと胸の揺れ
・音立ててメロン食いつつ離婚告ぐ
・ぺこぺこで五円パイナップルに見え【天】高橋章子
・体育祭なぜか孤独な子の背中
・柿泥棒待ちわびている老夫婦【人】小松方正
・田舎では見られぬぞよとビルの月
・初雪にすべる君の手取る至福【天】高橋章子
・プレゼントもう探してる初喧嘩
・行き止まり影絵のような枯木あり
・猫柳撫でて対面待つ客間
・缶詰を開けて妻いぬ春の酒
・田楽を辛い話の前に出し
・寄り添いて父母の行く背にのどかあり【天】高橋章子
・農薬を恐る恐るの毛虫かな
・風鈴を吊るし夜空の音を聴く
・麦湯飲むガーデニングを自賛しつ
・音楽のリズム無視してみぞれ食い★【俳句王】高橋章子
・秋涼し背骨をぐいと押し歩く
・飛ばされる男のありて初嵐
・秋鯖の脂紅より艶めきて
・寒月やふられた君と見る不思議
・拾う神なきかの如く霰降る
・風車とらえる風もなき日陰
・事故ありし場の献花変え春深し
・信長忌戦国好きの学者顔
・訳もなく車飛ばして鱧を食う
・日本語のわからぬ不思議夏電車【地】富士真奈美
・居眠りに覚めて目の合う吊し柿★【俳句王】高橋章子
・シドニーが睡魔つくりし秋の昼【地】小松方正
・青みかん転がる先の膝の白
・達成感なきまま見やる刈田かな
・おでん屋に禁愚痴席を設けたい
・粕汁と胃袋出会いはしゃいでる
・暖房もつけず転がり吐息つく
・再会に朧の下の知らぬ顔
・あの人に会わぬ口実雹降る日
・踏み込めば蠍のような恋と知る
・押し入れに海を知らない水着居り
・「パセリにはならないの」と言う姉三十路
・達者なる歳暮の礼の母の筆
・劇のよな結末を待つ冬の空【人】髙橋章子
・蛇の殻風に生命をもろて這う【人】富士真奈美
・鍬形に挑んでみてる指の先
・干し柿を嫌いなままで古希の母
・人生の勉強をする歳の暮【天】浅井慎平
・忘れたきことばかり出る年の暮
・単純に風おもしろき風車
・インドの詩読みつつ眠る春の庭
・家族みな虻の行方に首を振り
・筍の刺身目をむきながら食い【人】浅井慎平
・肩並べ銀河の恋の話する
・地下鉄にため息が降る十二月★【俳句王】吉行和子
・寒鰤にほぐす箸まで目を細め
・ミモザ散る寺までの坂命惜し
・春来たり煮え切らぬ恋幕降ろし
・好きだった服が裏切る衣更え★【俳句王】高橋章子
・鯵もらい粥と汁とで向き合いぬ
・うたた寝の耳に簾の立ち話
・クリップの錆つきしメモ敬老日
・凶作を知らぬベランダ妻の尻【人】富士真奈美
・紅葉が単色に見ゆ別れ道
・並ぶ内願い事増え初詣
・ソナタ聴き欧風に煮る冬野菜【地】塩田丸男
・背のびして話す娘や夏の服
・熱帯夜隣の鼾が火を注ぎ
・冬の海原色の服武者のごと★【俳句王】高橋章子
・鶯の声を真似よと長く鳴き
・蛤の汁かけて朝飯とする
・春暁や前を行く人追い越しぬ【地】富士真奈美
・しゃぼん玉株分割のように増え
・竹の春背骨伸ばして歩きだす
・小春日や正座して待つ知らせあり【地】高橋章子
・桜餅今日の自分を褒めてみる
・給料の金額に飽き鱧食らう
・夏風邪やグラス片手の荒療治
・明日会う胡桃のように堅き人
・六月や歩幅を少し広く取り【地】みなみらんぼう
・目出たくも不幸でもなし鰯煮る★【俳句王】高橋章子
・俺ももう吊るし柿よと父丈夫
・浅漬や君の前歯の白きこと
・いい味の暖簾連なる冬の街
・蜆汁母の小言の拠り所
・象のよな足跡のある夏の浜
・年下の通夜に戸惑う神無月
・無花果や飴のごとくにふくれけり
・灰になる日をふと思う桐一葉
・蜂の蜜溶いて命にわたらせる
・種まきや転がる種のいとおしさ
・春深し春の準備もせぬままに【天】みなみらんぼう
・路地裏で初富士拝む背が二つ
・紙製の顔にも命雛祭
・月見草咲く頃夕餉考える
・日盛や道に迷いて三巡目
・背を伸ばし礼状を書く残暑かな
・こんなコトまでしゃべってる夜長かな
・春の旅カメラ抱くよに待ちし母
・田楽や一年の計練り直し
・麗かに火葬場の煙天に伸び
・風薫る父に手柄を告げに行く【地】やくみつる
・いま恋を失いました浴衣脱ぐ【天】嵐山光三郎
・雑草に命感じる墓参かな
・朝顔をのぞき今日着る色を決め
・夜食来て母と始まる反省会
・我が別離尾ひれがついて秋の宴
・祖父逝く日鷲が座敷を通り抜け★【俳句王】戸田菜穂《年間大賞【地】》
・二十年ぶりの花嫁島二月
・啓蟄やいくつの夢を見て覚めた
・柏餅待ちきれず食う京小路
・また一人線香花火のように逝き
・何もかも受けとめてきて冬ひとり
・小走りをやめてひと息春の雲
・噴水で始めた恋が今日終わる
・原色を着てデイケアのクリスマス
・ソプラノで歌う老女や春の月
・切り傷の乾かぬままに五月来る
・日課また一つ増やして夏が来る
・中間を探さぬ議論秋の酒