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ロスジェネ母さんの悲哀②

ロスジェネ母さん、それは私のことである。

自分をその世代の代表みたいに表現している感じで恥ずかしいですが、以前の記事にも書いたとおり、山田風太郎の日記集が好きで、そのタイトル中で氏が自らを「戦中派」と定義しているのに憧れてこのタイトルに決めました。レペゼンロスジェネの意気込みで行きます!

以前の記事はこちら↓


さて、オロオロとして頼りなげではあったが、私は育児という新しい分野で頑張っていた。完全母乳を貫き、育児書を何冊も読み、読み聞かせがいいと聞けばまだほやほやの乳児の枕元で毎日同じ絵本を繰り返し読んだりしていた。

出かけるのは赤ん坊の日光浴と小児科、図書館と近所のスーパーだけ。学生時代や会社員時代の友人達はまだ未婚でバリバリと働いていて、気軽に会うことも出来ない。私は孤独を深めていた。

そんな時、近くの児童館で赤ちゃんとその親たちの交流サロンがあると知った。公園デビューとか、ママ友付き合いとか恐ろしげなワードが頭をかすめたが、とにかく一度行ってみようと決めた。

児童館に入ると、畳敷きの8畳間に案内された。そこではバスタオルの上に様々な月齢の赤ちゃんたちが寝ころび、その傍らにそれぞれの母たちが足を崩して座っていた。

見よう見まねで自分も息子をバスタオルの上におろし、その横に座った。どうしよう、どうしよう。知っている人は誰もいない。私はうつむいて固まっていた。

「男の子ですね、うちも男の子なんです。今何か月ですか?」隣に座っていた女性が声をかけてくれた。

「はい、昨日でちょうど3か月になりました。」緊張しながらも答えた。

「おうちはどのへんですか?うちは〇丁目の新聞屋さんの近くなんですよ。」

「そうなんですね、うちは〇丁目です。この児童館のすぐそばで…」

そこからは堰を切ったように言葉があふれ出てきた。夜泣きであまり眠れないこと、アイスを食べたら乳腺炎を起こしかけたこと、予防接種のスケジュールについて.…おしゃべりは止まらない。

するとそれを聞いていた反対側の女性からも声がかかる。オムツを宅配にするなら生協が安いこと、乳児湿疹にはワセリンがよいこと、踏切近くにある中華屋さんが意外においしいこと。

自分の話をしたり、同じような育児の悩みを持つ人の話を聞き、地元の情報を共有する。なにこれ、楽しい。そして孤独な育児をしてるのは私だけじゃない、みんなそれぞれ頑張っているんだと気づかされた。

サロンの時間が終わって帰宅するころには、とても気持ちが軽くなっていた。人と話すことって大切。TM市よ、私にこんな機会を与えてくれてありがとう!!

それからというもの、週に最低でも1度は児童館に通う生活が始まり、それは息子が幼稚園に入園するまで続いた。未就園児時代にたくさんのママ友や息子の友人ができたことは、その後の生活を豊かにしてくれた。

徐々育児にも慣れ、地域に知り合いも出来た私は、とても前向きになっていった。息子が就園する3歳になったら、仕事を再開したいと思い始めたのもこの頃だった。 続く


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