見出し画像

B線TNS日記27 チョ・ナムジュ「82年生まれ、キム・ジヨン」 読了

某月某日 TNSにて

シルバーウィーク中に驚きの読書体験をした。

もうかなり前に、いつも聴いているPodcast番組の中で、チョ・ナムジュという女性作家の「82年生まれ、キム・ジヨン」という本が紹介されており興味を持った。番組を聴いた後早速ネットで購入したのだが、読むのは後回しの「積読」にしてあった。
先の連休中SNSの広告記事で、この小説が映画化され近く日本で封切になるというのが流れてきて、はっとこの本の存在を思い出し読み始めた。

読み進めながら涙が止まらなくなった。心に共感の嵐が吹き荒れた。

主人公のキム・ジヨンはソウルで1982年に生まれた女性。私とは5歳違いで、生まれ育った国も違う。なのに、なのに、どうしてこんなに私と同じなの!同じ道を歩いて、同じ経験をし、同じ辛さを抱えている…。

そう思ったのは私だけじゃない。本書が出版されるや韓国では130万部を売り上げ、社会現象にまでなったそうだ。そして読者の女性たちがみな、「これは私たちの話だ!」というリアクションをとったという。現代を生きる女性の多くが直面するこの社会が抱える問題を、ひとりの女性キム・ジヨンの半生を通して私たちに突き付けてくる。
「キム・ジヨン」とは82年に韓国で生まれた女性の中で一番多い名前だそうだ。特別ではない、どこにでもいる、私たちと同じような女性が、家庭、そして学校で教育を受け、不景気の中で就職をし、結婚、出産、育児を経験していくなかで対峙する数々の不条理。「やめてくれ!」と言いたくても声に出せない「女性」であるからゆえの不当な扱い。ジヨンの祖母、母たちの世代は、それを当然と引き受けて生きてきたけれど、現代に生まれ、男女同権の理論をたたき込まれてきた私たち世代ゆえに、その不条理を看過できずに苦しむ様子は、まさに自分の姿を映し出す鏡のようだった。

今まで自分が憤っては飲み込み、憤っては我慢してきた、私個人的には解決することを半ばあきらめてしまった問題を再度提起され、「このままで本当にいいの?」と問われたような読後感である。
登場人物たちが魅力的にいきいきと描かれている。
読みやすい文体で展開のテンポも良いのであっという間に読み終えてしまった。
男女問わず、みなで感想を語り合いたい。

この記事が参加している募集

#読書感想文

188,902件

よろしければサポートをお願いします!いただいたサポートは今後の記事の取材費としてつかわせていただきます。