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おとしより -パリジェンヌが旅した懐かしい日本- イザベル・ボワノ著

 私たちが普段何気なく見ているものや、気にも留めずに通り過ぎているものの内に宝物の輝きを見出す人がいる。

 そしてその宝物を絵筆や言葉で魅力的に表現できる人がいる。

 イザベル・ボワノはそんなアーティストだ。

 活動拠点のフランスではもちろんのこと、日本でも雑誌連載や多くの出版物を手掛け、最近ではNHKの番組にも出演するなどますます活躍の場を広げているイザベル。彼女とはかれこれ十年来の友人であり、一緒に仕事をするパートナーでもある。

 そんな彼女の新しい本、 ≪Otoshiyori, trésors japonais≫ の日本語翻訳版、「おとしより パリジェンヌが旅した懐かしい日本」が明日3月24日、パイ・インターナショナルから発売される。

 光栄にも本書を一足早く送っていただいたので(実は私もほんのちょっとだけ登場するんです!)今回はみなさまにこの本について少しだけご紹介させていただきたい。



 イザベルはパンデミック以前は年に2回ほど来日していた。滞在中は個展やイベント、仕事の打ち合わせ等の多忙なスケジュールの合間をぬって、東京や日本各地の路地裏を散歩をしたり、骨董市に出かけたり、素敵なお店を見つけては食事をしたりの時間を作る。そして街角や偶然入ったお店の中で出会った印象的な人やものについて手帳に書きとめたり、写真を撮って記録している。

 本書はそんなイザベルの旅日記のような1冊だ。

 外国人アーティストの旅日記と言っても、俗にいう「Cool Japan」的なものでは少しもない。彼女はありふれた日本の風景や市井の人々の日々の暮らしの様子の中から、愛おしくてどこか儚いものたちを拾い出し描いているからだ。

 その証拠にこの本のテーマは「おとしより」である。壮年期を過ぎて、静かにささやかに日々を過ごす人たち。高齢化社会の日本において人口比率の多くを占めるのにも関わらず、私たちがつい見過ごしている存在。そんな彼ら彼女らにイザベルは焦点を合わせているのである。

 ほぼ全てのページに散りばめられた彼女の絵には、対象の本質を真っ芯で捉えそのビハインド・ストーリーまで語るような「含み」があると思う。描かれている人々やモノたちを目にすると、その可愛らしさに心が躍るのと同時に何か得体のしれない切なさを覚える。

 絵に添えられたイザベルの飾り気のない文章がとても正直で、この本がものすごく私的なものに感じられる。まるで彼女と自分だけで共有する秘密のノートを読むような気持ちになるのだ。


 本の帯に添えられた、まえがきの言葉を読んで納得した。

「この本は、大好きな日本へ宛てたラブレターです。ページをめくりながら、幸せを感じていただけたらうれしいです」 
イザベル・ボワノ


 たくさんの人達にイザベルからのこのラブレターが届きますように。そして読者の方達が、その日常の中にも温かくて儚いものの輝きを見い出せますように。そんな気持ちで本を閉じた。


 もしもお読みになった方がいらっしゃればコメントをお願いします。責任もってイザベルに届けます!



 私とイザベルの出会いや翻訳をさせていただいた著書などについてはこちらに書きました。

  Otoshiyori フランス版はこちら (こちらの装丁もすてきですよね。)


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新行内紀子(しんぎょうじのりこ)
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