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日本人の教養 混迷する現代を生き抜くために (中嶋 嶺雄)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 タイトルが気になって手に取った本です。
 著者中嶋嶺雄氏は、国際教養大学理事長・学長で当学の創設者とのこと、その建学の志を記した本です。

 まず、本書のテーマである“教養”ですが、著者が抱く“教養”は、単なる知識の集積ではなく「実践」を伴うものです。

(p2より引用) 教養とはつまるところ、その人の判断の根幹を支えるもの-行動哲学とでもいうべきもの-です・・・

 したがって、“教養”を修得するためには、知識の獲得はもちろんですが、実行動による“体験”も不可欠だと著者は考えています。

(p102より引用) 本質を見抜く目というのは、人間の外にあるのではなく、内にあります。ここが教養教育の一番難しいところかもしれませんが、物事の本質-すなわち選択や決断の根本になるもの-を見極める目を養うには経験の蓄積が欠かせません。

 この「経験」の中には、その場所に行く、人に会うといった実体験はもちろんですが、「読書」もひとつの経験です。

 その観点から、著者は本書の巻末に「読書案内」としてブックリストを紹介しています。
 そこで著者が薦めているのは、

  • 幼児期の「ちびくろサンボ」をはじめとして、成長するに従って、「マゼラン」「車輪の下」「おろしや国酔夢譚」

  • 日本を知るという点からは、「三四郎」「人間失格」「石光真清の手記」。

  • 多様な人生に触れるという点から、「狭き門」「若きウェルテルの悩み」「シーシュポスの神話」。

  • 国際教養大学の学生の必読書としては、「武士道」「三酔人経綸問答」「菊と刀」「文明の生態史観」「論文の書き方」「万葉秀歌」「文明が衰亡するとき」。

  • さらに世界を広げるために、「文明の衝突」「平和の代償」「創造の方法学」「職業としての学問」、そして著者自らの手による「国際関係論」。

まさに多種多様でどの本も興味深いものがあります。

 数えてみると、これらの本のなかで私が読んだことがあるのはまだ8冊なので、せめてもう数冊には手を伸ばしてみようと思います。



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