世界史 上 (ウィリアム. H. マクニール)
(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
すこし前に話題になった本なので手に取ってみました。
著者のウィリアム. H. マクニール氏は、カナダ生まれの歴史学者、シカゴ大学名誉教授です。文庫版は上下2巻で構成されていますが、上巻がカバーしているのは、古代から西暦1500年ごろまでです。
まず、冒頭「はじまり」の章、原人類からホモ・サピエンスが分化した頃の記述にこんなくだりがありました。
以降、本書は、基本的に過去から歴史を辿る形で記述が進んでいきます。
紀元前3000年以降、それまでの農耕民の世界に加えて新たに草食獣に依存した遊牧民が登場してきました。
その後、青銅器の時代を経て鉄器の時代が到来しました。専門職人の手によって鉄製の武器・農具等が作られ、軍事面でも経済面でも大きな変化(進歩)が生じました。著者はこの「鉄器時代」の意味づけをこう語っています。
こういうザクッと本質を捉えようとする記述が、本書のそこここに見られます。その適否について判断する力は私には到底ありませんが、とても興味深く、いろいろな面で勉強になります。
そのほか、上巻の範囲内で気になった解説として「ローマ法」の位置づけについての記述がありました。
本書を読むにあたっての私の基本的な問題意識は、いわゆる「山川世界史」と比較してそれと大きく異なる切り口があるかという点でした。
その点では、まず「宗教」の取り上げ方が明らかに異なっていると感じましたね。本書では、キリスト教はもちろんですが、イスラム教・ヒンドゥー教・マーニー教・シーク教等々、それらの宗教の誕生から拡大、相互間の衝突・支配・併存といったダイナミクスが世界史の基底のひとつとして強く意味づけられていました。
また、東西世界を結びつける役割としての匈奴・フン族といった遊牧民族への注目も興味深いものでした。
核となる文明を規定し、その周縁文化への影響等を自然な流れとしてバランスよく俯瞰する視点や、歴史の中での本質的変曲点をその後の世界の姿に敷衍する捉え方は明らかに本書の方が重厚ですね。
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