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レキシントンの幽霊 (村上 春樹)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 私はほとんど小説は読みません。その滅多に読まない小説の中でも、食わず嫌いの代表格が村上春樹氏の作品でした。

 たまたま文庫本で読む本が切れた際、家族の本棚を見ていて目に付いたので抜き出してみたのが、本書です。私にとっての「初ハルキ」、中身は7編の短編です。

 物語なのでストーリーの要約や過度な引用は控えますが、村上氏の作品はこういった感じなのかと思った部分を少しだけ書きとめておきます。
 「トニー滝谷」という作品から、色とりどりの服で満たされた衣装室の中、戸惑ったような主人公を描写したくだりです。

(p140より引用) 彼はそれを見ているうちにだんだん息苦しくなってきた。様々な色がまるで花粉のように宙を舞い、彼の目や鼻腔に飛び込んできた。貪欲なフリルやボタンやエポレットや飾りポケットやレースやベルトが部屋の空気を奇妙に希薄なものにしていた。たっぷりと用意された防虫剤の匂いが、無数の微小な羽虫のように無音の音を立てていた。彼は自分が今ではそんな服を憎んでいることにふと気づいた。

 さて私は、本書をきっかけにして今後も村上作品を追いかけるでしょうか?

 物語全体が醸し出す雰囲気もそうですが、ところどころの微細な表現に、独特の「らしさ」は感じられました。
 私には文学的素養はまったくないので「評価」などできるレベルでは全然ないのですが、確かに上手な書き手だとは思います。ただ、重厚さや骨太さは伝わってこないですね、軽くてふわふわした印象です。それでいて、つまらないかと言えば、満更そうでもないのが確かに不思議です。

 今回、「もうこれでいいや」と見切る気持ちにまではならなかったので、これからも、村上作品だとあまり意識しないで何冊か読んでみるかもしれませんね。



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