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世界珍食紀行 (山田 七絵)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 たまたま、となりの自治体の図書館に寄った際、新着図書の棚で目についた本です。

 この手の内容の本はいくつもありそうですが、編者の山田七絵さん開発途上国の専門家(アジア経済研究所新領域研究センター環境・資源研究グループ研究員)だということで、よくある奇を衒ったものとはちょっと違った感じではないかと興味をもって読んでみました。

 そういえば本書は、私がいつも聞いている大竹まことさんのpodcast番組に以前山田さんがゲスト出演したとき紹介していましたね。

 ともかく私にとっては初耳の情報が満載で、それらの中から特に印象に残ったものをいくつか書き留めておきます。

 まずは、ラオスの「カブトムシ」

(p66より引用) 首都ヴィエ チャン郊外には、野生動物や昆虫を豊富に取り揃えるドンマカーイ市場がある。そこで友人がカブトムシの雄の成虫を購入し、職場に持ってきた。カブトムシの羽はむしられ油で素揚げされており、塩コショウをつけて胴体部分のみを食べるという。さすがにカブトムシの成虫が出されたときには躊躇した。子どものころに捕まえていたカブトムシを食べ物とは思っていなかったからだ。

 カブトムシのツノは、胴体を食べるときの「持ち手」としてちょうどいいのだそうです・・・。分かりますが、だからといって食欲が湧くものでもないですね。

 次は、タイの食事の説明。

(p75より引用) 村での食事は、基本的にもち米と野草のような野菜、タンパク源として魚(淡水魚)とカエル、オタマジャクシ、トカゲなどの両生類・爬虫類、そして虫である。

 とてもシンプルで分かりやすい表現ですが、「カエル」以下はちょっと勘弁ですね。

 こういう感じで紹介されている珍しい “食文化” はその土地ならではのものですが、その国の食文化が外圧の強制により歪められた例もありました。
 キューバがそうです。

(p198より引用) 17%程度しかないキューバの食料自給率の低さは、社会主義革命のせいだけではなく、植民地時代のモノカルチャー経済からくる。砂糖やタバコをスペインや米国に輸出し、国民のための食料はこれらの国々から安く輸入されていた。・・・暑いキューバでは生産が難しい小麦を使ったパンが、コメに次ぐ主食になっているのはこのためである。

 また、観点を変えた気づきとしてですが、いつもは研究に没頭している所員の方の思いがけない名文も面白いものですね。
 「イギリス レストランに関する進化論的考察」とタイトルされた項で、ロンドン在住時に経験した「2000年代初頭のイギリス料理」について語ったくだりです。

(p149より引用) このとき、イギリス料理について発見したひとつの法則がある。それは、料理名が「調理法+素材」のものは大丈夫、というものだ。「ベイクド+ビーンズ」や「フライド+フィッシュ」などがそれにあたる。これはつまり、調理がワンステップを超えると途端に素材が不味くなるということを意味しており、イギリスにおける調理が、新鮮で豊かなイギリスの食材の味や食感を破壊するプロセスであるという悲しい現実に、心を痛めずにはいられなかった。

 さて、本書を読んでの感想です。

 基本的には「アジア経済研究所」の研究員の方々による「食」を切り口にした “異文化レポート” といったテイストのエッセイで、各人の現地愛がこもった文章には大いに感じ入るところがありました。

 また、それぞれの料理の紹介にあたっては「カラー写真」も豊富に掲載されています。
 こちらは直接視覚から脳ミソに刺激が飛んできて、小さいながらもインパクト十分なのですが、「昆虫食系」と「〇〇の丸焼き」の類はちょっとキツイですね。




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